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検査結果は能力なし 〜能力なしで死んだ俺は、なぜか今日も死なせてもらえない〜  作者: 鬼喜怪快
本編

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32/48

32話 侵略者の遺したもの



  

 直径10mの、過去に類を見ない巨大なワープゾーンは、

 民間会社・タイガードロップ株式会社の手によって消滅させられた。


 その散っていく様は美しく。

 その場にいた者たち全員が、思わず目を奪われた。


 

「……あんなに恐ろしい連中を運んできた物なのに、

 散り様がこんなにも綺麗だなんてね……皮肉なもんだよ」


「……急に綺麗とか言わないでよー。照れちゃうじゃん……」


 

 都合のいいところだけを切り抜いて聞こえる耳。

 これも帝呼の能力なのかもしれない……。

 

 そんなことを考えながら、

 帝呼を抱えた風は着地した。


 第5支部の華火隊長――


 彼は何かしら仕掛けてくるだろう。

 そう考えた風は、帝呼に離れるよう伝えて身構えた。


 

「華坊! お前のすることは風を拘束することじゃねぇ。

 ここに倒れてる連中の回復、救助だろう馬鹿野郎!」


「押忍! 全員、被害の確認と被害者の救助を最優先に動け!

 残党が攻めてきた場合は、全力で戦闘に集中だ!」


 

 風は、さっきまでと別人になった華火に驚いた。


 

「親方……これは一体?」


「人間50年以上もやってたらよ、

 ああいう馬鹿野郎と知り合ったりもするわけよ」


 

 華火が走って狩の前までやってきた。


 

「親方、ご無沙汰してます。

 まさか、こんなところで親方に会うなんて!」


「立派になりやがって、このやろう!

 一瞬わからなかったぜ、馬鹿野郎!」


 

 どうやら親方とは大工時代に出会ったようだ。


 

「女将さんはお元気ですか?

 たまに女将さんの飯が無性に食いたくなるんです」


「おうおう!

 うちのセクシーちゃんは海外になんかしに行ってるぜ。

 帰ってきやしねぇ!」


「昔からフットワーク軽いっすもんねぇ……女将さんは」


 

 狩と華火が会話をしていると――


 

「爆……お兄ちゃん?」


「!」


 

 座り込んでいる笛がぽつりと呟いた。


 

「……まさか、笛お嬢か?」


「うん……久しぶり、お兄ちゃん」


「お嬢! なんてこった!

 あの小さなお嬢がこんなに大きくなって」


 

 華火は涙ぐみながら笛に近づこうとした。


 

「……あぁ、来ちゃだめ!」


「!」


「今……服汚れてるから……」


「……そうか。なら毛布を持って来させる。

 待ってな!」


 

 華火は狩に一礼し、第6支部の救助に向かった。

 立ち去る瞬間、風にだけ舌打ちをして去って行った。


  

「なに? あいつ? 嫌い……」


「昔うちで働いてた華坊よ。

 笛ちゃんが6歳か7歳くらいの頃だから、タイコリンは

 2歳くらいの時か……そりゃ覚えてねーわな」


「ふーん。めっちゃ嫌い――」


 

 完全に帝呼に嫌われていることを、

 この時の華火は知らない。


 第5支部の救助活動を中心に、

 民間ブレイカーや病院からの救助も加わり、

 第6支部の隊員たちは、その場で回復される者や、

 病院に搬送される者に分かれた。


 タンカーで運ばれる雷鳥の姿が見えた。

 風たちのもとへ向かって来ている。

 

 意識が微かにあり、

 付き添っている華火と何か話をしているようだった。


 

「おい、雷鳥がどうしてもお前と話したいってよ……」


「?」


 

 頭と顔に酷い傷を負っている。

 一刻も早く治療を受けるべき状態なのは一目瞭然だった。


 

「紡時……くん」


「はい」


「生き残れた……者を代表して……言うよ。

 ……君に……心からの感謝を――」


 

 そう言うと雷鳥は救急車に運ばれて行った。


 

「なんか知らんが……雷鳥に免じて……

 今日の拘束は無しにしてやんぜ」


 

 こうして、

 第2次WZ同時多発事件からのベーダー星人侵略防衛戦が幕を閉じていく。


 ベーダー星人の残党は、

 第5支部、7支部の隊員たちの活躍により殲滅に成功。


 一度は日本全滅を覚悟した被害状況だったが、

 風の活躍により最悪の結末を回避した。


 

 ――――――


 

 今回の件で、世界情勢が大きく動いたのは言うまでもない。


 ベーダー星人の話は、真偽を問うよりも、

 間違いないものとして日本は受け取った。


 他国は、他星と密接な繋がりを持っている。


 さらにベーダー星人の話を信じるならば、

 他国は今回の件を事前に知っていた可能性がある。

 

 そのうえ、その情報を日本には流さず、

 自国の防衛に専念した。

 

 そして、他国は救援に動かず、

 兵器の売買交渉に動いた。


 防星省・玉造大臣と百万遍総隊長は、

 日本の大きな反省点と銘打って、

 今後の侵略者に対する対応方法を改める方針であることを、

 内部にて発表した。


 

 今後はまず、侵略者を基本的に生け取りに動く。

 

 その後は侵略者とコミュニケーションをとり、

 処分ではなく、さまざまな交渉の道具として生き残すことにする。


 今回も3体のベーダー星人の生け取りに成功し、

 防星省の地下監視室で、交渉用と実験材料の

 ストックになるように生かすことにした。


 そして、ブラッド、ラバーニ、巨体のベーダー星人――

 回収された3体の遺体は、

 ベーダー星人に関しての今後の研究のため、

 厳重に保管し、役立てることになった。


 

 ――――――


 

 数日が経った頃――


 笛が、防星省の研究班から呼び出された。

 

 同期の木庭きにわからの依頼だから、断るわけにもいかなかった。


 回収したブラッドの遺体について質問があるらしい。

 

 解剖検査をしていると、

 体内に2つの心臓があり、片方が動いていたという。

 そして、その心臓の中から大量の輝く水が検出された。


 水をすべて取り出すと、

 動いていた心臓の鼓動は止まったのだとか。


 

 ――エターナル。


 

 その話を、先日提出した報告書に笛は記入していた。


 各所から随分と興味を持たれたようだが、

 笛にも詳しいことはわからない。


 ただ、木庭によると、

 この輝く水こそがエターナルなのではないか――

 という結論にたどり着いたようだ。


 ノックをして研究室に入る。


 その時――


 

「笛ちん!

 ごめん、上から呼び出しくらった!

 ちょっと行ってくるから、コーヒーでも飲んで待ってて!」


 

 挨拶もそぞろに木庭が走って行った。


 

「久しぶりなのに……

 変わってないな……あの子」


 

 研究室に入った笛は、部屋の荒れように驚く。


 

「あの子……絶対に変な研究して怒られてるんだわ……」


 

 2人分のカップがデスクに置いてある。

 湯気の出ているポットと、

 コーヒーミルには挽いた豆があった。


 

「あの子にしては気が利いてる……」


 

 笛は言われた通り、

 沸かしてあったお湯を使ってコーヒーを淹れ、

 同期の帰りを待つことにした。


 30分後――


 思ったより帰りが遅いため、

 デスクのお菓子にも手をつけ、

 木庭の分のコーヒーも飲んでいた。


 

「ごめーん!

 待ったよね! 説教が長くってさ!」


 

 木庭は、髪の毛がボサボサで、

 身だしなみにはあまり気を使わないオタク系の女子だ。


 性格的に控えめな笛とは、

 同じメガネ仲間ということもあって気が合うようだ。


 

「遅いよぉー。

 そのせいで、お菓子とコーヒーは全部もらったけどね……」


「それくらいどうってことないよ!

 本当にごめん!」


「で、わたしに見せたい輝く水ってどれ?

 探したけど見つからなくてさ……

 部屋、掃除した方がいいよ……」


「やや……実験でこのポットで沸かしてたんだけど……

 空になってる……?」


「……へっ?」


「どうしよう!

 あの水、上にも報告あげてないのよ!

 回収される前に、いろいろ実験したかったのに!」


「……」


「蒸発したのかしら……

 凍らない、電気も通さないくせに、蒸発はする……

 強い性質だと思ったのに……よっわぁ……」


「……ねぇ、木庭……」


「この部屋にまだ水蒸気として残っているかもしれない!

 なんとか集める方法を――」


「そんなことしなくても……

 わたし、ある場所知ってる……」


「なんと!

 それならそうと早く言ってくれないと!

 それで、水はいずこに?」


「……ここ」



 笛は自分の身体を指差した。


 

「?」


「……全部コーヒーと一緒に飲んじゃった」


 



次話、いよいよ最終話です。


後日おまけ話の投稿も考えていますので、

よろしければブックマークしてお待ちいただけると嬉しいです!


最後までよろしくお願いいたします!

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