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検査結果は能力なし 〜能力なしで死んだ俺は、なぜか今日も死なせてもらえない〜  作者: 鬼喜怪快
本編

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31/48

31話 異端の英雄


 

 ――残り1秒


 つむじ風のように身体を回転させた蹴りが、

 ブラッドの首へと叩き込まれた。


 ――バチュンッ!


 頭部は蹴り飛ばされたボールのように宙を舞い、

 ビルの壁深くへめり込んだ。


 頭部を失った身体は、

 痙攣したように地面の上でしばらく跳ねた後、

 力尽きて静かになった。


 日本を……世界を震撼させた侵略者から、

 たった今、風が勝利を勝ち取った。


  

「これはキツイ技だな。

 とてもじゃないけど、10秒以上使えるような能力じゃない……。

 身体が燃えるように熱い」


 

 風は勝ち名乗りを上げることもなく呟いた。


 

「……紡時さん!」


「虎落さん!」


 

 笛は今すぐ風のもとへ駆けつけたかったが、

 腰が抜けて立てなかった。


 

「もう大丈夫だから」


「……はい」


 

 遠くから声が聞こえた。


 

「風ーくーん!」


「笛ちゃーんっ!」


 

 狩と帝呼が駆けつけてきたようだ。


 

「親方! 帝呼ちゃん!」


 

 帝呼は風に飛び付いた。


 

「敵はどこ?

 わたしが守ってあげる!」


「……もう倒したよ……ははっ」


「うそーん!

 風くんヤバい!」


 

 狩は笛に寄り添った。


 

「大丈夫か……?」


「うん……紡時さんが

 みんなを……日本を守ってくれた」


「……あぁ……さすが俺の弟子だぜ」


 

 ベーダー星人の元凶の根絶には成功したが、

 まだ50体近くの兵隊たちが街を荒らしていた。


 

「まだ……安心できないけどね」


 

 笛の不安をかき消すように、

 狩は返事をした。


 

「いや、兵隊どもももう終わりだぜ……」


「?」


「頭を獲られて司令塔をなくした兵隊ってのは、

 どうしようもなく弱くなるもんだ……

 5支部、7支部の連中が援軍に来てくれてる……

 奴らの全滅も時間の問題だ」


 

 そう言って狩は笛に笑顔を向けた。


 

「俺らの問題はよ。

 あのでかいワープゾーンを早く潰すことだぜ」


「……うん、そうだね」


 

 帝呼に抱きつかれたまま、

 風がやってきた。


 

「虎落さん、ブレイキット持ってない?」


「ありますよ」


「ワープゾーン潰してくるよ。

 貸してくれないか」


「……わかりました」


 笛はバッグからブレイキットを取り出す。


「ったくよぉ。

 帝呼が事務所に置き忘れて来るもんだからよぉ」


「だって、いきなり町が荒らされてたんだもん。

 それどころじゃないでしょ!」


 

 親子喧嘩が始まった。


 それを苦笑いしながら見る風と笛。


 

「お願いします」


「うん」


 

 風は受け取ったブレイキットの電源を入れる。


 

「あーっ残念!

 うちの物で破壊してたら、

 もらえる報奨金は絶対すごかったよね?」


「そりゃ、あんだけでかけりゃいい値になったぜ!」


「ブレイクデータだけでもウチのに移せないかな?」


「今回は俺らの手柄じゃねぇ。

 欲を出しちゃいけねーよ」


「風くんってうちの社員だし、うちの手柄じゃん」


「おおう!

 なんたることだ……その通りじゃねーかタイコリン!」


 

 そんな会話をしていたせいで、

 彼らの接近に気が付かなかった。


 

 ――第5支部の精鋭たち。


 

 彼らは一帯を埋め尽くすように、

 風たちを取り囲んでいた。


 彼らから感じるものは、

 賞賛でも安堵でもない。


 ――殺気だった。


 重い沈黙が落ちる。


 

 その中で、1人の隊員が声を上げた。


 

「ベーダー星人のリーダーを打ち倒したのは……

 お前か!」


 

 視線は風だけを見ていた。


 

「そうだけど……」

 


 ほかの隊員たちのどよめきが広がる。


 

「俺は第5支部の隊長・華火はなび……

 そこに倒れている雷鳥、剛海……

 その2人を倒したのもお前か?」


「違うよ……ベーダー星人だよ」

 

「……その2人を倒した侵略者を、

 お前が倒しただと?」


「……」


 

 能力がない人間は、ゴミとして扱われる世界――

 そんな悲しき世界は、

 能力がないのに強い人間を、異端として扱う世界なのだ。


 

「動くな……お前を拘束する!」


「先にワープゾーンを壊さないと、

 まだ被害が出る!」


「黙れ!

 あれは我々で処理する!」


 

 そんなやりとりに痺れを切らしたのが帝呼だった。


 

「ちょっと!

 勝手に手柄横取りしないでくれる!」


「なんだお前は!?」


「風くんの彼女よ!」


 

 この無茶苦茶な状況下に、

 風はかなり困り始めていた。


 

「風くん、

 ブレイキットの設定とか苦手でしょ。

 わたしを抱えて飛んでくれたら、わたしが消してあげる!」


「それは助かるよ」


 

 風が帝呼を抱えて動こうとしたその時――


 

「動くなと言ったはずだ!」


 

 第5支部・隊長の華火が反応した。


 同時に周りの部下たちが構える。


 その場に緊張が走り、

 風が動けない。


 代わりに第5支部の隊員が、

 ブレイキットの準備を始めた。


 

「おいコラ! クソガキ!」


 

 突然、狩が防星省の隊長に噛み付いた。


 全員の注目が風から狩へ変わった瞬間だった。


 

「親方!」


「あのアホンダラの相手はしておいてやるぜ。

 風とタイコリンは、

 とっととあれをぶっ壊してきな!」


「……でも」


「いいからいけって!

 ちんたらしてる場合じゃねーっての!」


 

 帝呼が風をさらに強く抱きしめて言った。


 

「パパがいいって言ってんだし、行こっ!」


 

 風は2人に押され、

 ワープゾーンに向かって飛んだ。


 

「貴様っ! 行かさんぞ!」


「華坊!」


「!」


 

 華坊――


 ワープゾーンに向かう風と帝呼。

 座り込んでいる笛。

 そして隊員たち――


 その一言に全体が凍りついた。


  

 華火は、

 己をあだ名で呼んだ男に、

 怒りの眼差しを向けた。


 

「貴様! 誰に向かっ――!」


「なんだぁ……その目はよ?」


「……親方ぁ!?」


 

 狩と華坊に全員が注目する中、

 風と帝呼はワープゾーンまで到着していた。


 

「帝呼ちゃん、出来る?」


「うん。

 ゾーン直径に対しての出力設定もできたし、

 いつでもOKよ!」


「それじゃ……お願いするよ」


「風くん……

 わたしたちの初めての共同作業だね」


「……」


 

 ただ1人、

 宙を舞う2人を見ていた笛が声を上げた。


 

「バカなこと言ってないで早くなさい!」


 

 その声に反応した全員が、

 ようやく2人を見上げた。


 

「笛ちゃん、

 嫉妬なんて見苦しいわ――よっ!」



 苦笑いする風。



「それじゃ……」


「風くんも握ってよ」


「俺も?」


「そうそう。

 それではブレイキットの入刀でーす!」


 

 風と帝呼が握りしめるブレイキットで、

 ワープゾーンに触れた。


 

 ――ジュワッ!


 

 焼石に水をかけた時の音と、

 爆発音を混ぜたような音を響かせながら、

 10mのワープゾーンは消滅した。


 こうして、

 最強最悪の侵略者を運び込んだ入口は、

 タイガードロップ株式会社の手により破壊された。






 

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