30話 時を紡ぐ者
エナジー値反応あり――
能力――発動中――
能力名――時を紡ぐ者――
紡時風の能力が発動し、ここに復活を果たした。
風にとって、すでに4度目の体験になる。
死ぬほど痛くて、怖くて、寂しい瞬間。
それを超えた先にあるもの。
身体の奥で、何かが脈打っているのがわかる。
身体が恐怖を覚えているはずなのに、
奥から湧き上がる高揚感。
そして、あの囁くような感覚が襲ってくる――
――目の前の敵を壊せ。全てはお前の意のままに。
風は胸に手を置き、呟いた。
「……生き返れて良かった。
能力の発動回数がカンストしていたらどうしようって、
ビビってたから」
ブラッドが、呆然と風を眺めている。
理解が追いついていないようだ。
確かに殺したはずの地球人が、
ダメージも傷も回復した状態で、
そこに立っているのだから当然だろう。
「紡時さん!」
風が笛の方へ振り向いた。
「ごめん……心配かけたよね」
「良かった……本当に良かった」
風は安堵する笛へ向かって話しかけた。
「これで4度目だけど、
やっぱり自分のことがわからないや……」
「?」
「でも、確信できたことがあるんだ」
「なにをです?」
「死んで生き返るたび、
次は同じことで死なない身体になってるのは間違いないみたい」
「……」
「それと、いつも死んでから生き返った時に、
心に囁いてくる奴がいるんだけど……」
「?」
「たぶん、そいつは俺の能力自身なんだと思う……。
いや、本能って言った方が正しいのかな」
「……本能が囁いて来るんですか?」
風はブラッドへ向かって歩き始めた。
「死んだらまず、生き返るか――
このまま死ぬかの選択が迫られるんだ……
一応、命の選択権は俺にあるみたい」
ブラッドが身構えた。
「生き返るを選ぶと、
同じことで死ねないように身体がバージョンアップしてるんだけど、
同時にその対象についての知識もついてくるみたいだ」
「?」
「例えば、この敵は10秒間・10倍の力を発揮できる
最強の能力だけど、一度使えば10分間のインターバルが必要になる」
「!」
「でもって、1日3回が限界かな……。
血液が沸騰するから、心臓と身体に悪すぎる」
ブラッドの表情が変わった。
笛は風のデータを再度確認する。
エナジー値反応なし――
能力――発動なし――
能力名――
先ほど見えていた文字が、すべて消えていた。
ただ――
インパクト値とプロテクト値が、両方とも30tを表していた。
「30……tって……?」
「うん……。
もう、アイツの通常攻撃くらいじゃ死なないよ」
ブラッドは強かった。
宇宙広しといえど、
これほどまでに強い侵略者はそうはいないだろう。
そんなブラッドが――初めて恐怖した。
理屈のわからない恐怖。
ブラッドの攻撃を受けて死んだはずなのに、
全回復して生き返っている――
ブラッドの能力に関して、
知るはずのない知識を得ている――
何より……
ダクネスの能力を使っていることに、
1番の違和感を抱いていた。
ブラッドは少し前の風との会話を思い出す。
「……なぜ地球人が使える?」
「知らないよ……そいつに殺されて生き返ったら、
使えるようになってたんだ」
――殺されて生き返ったら、
使えるようになってたんだ。
危険だ。
もし、それが事実なら――。
すると風は、左足を前に出し、
右足を後ろへ引き、
腰を少し落とすような構えを取った。
ブラッドは凍りついた。
それは、自分がよく使う戦闘時の体勢。
この後に繰り出されるものとは――?
「おい、そこの侵略者の馬鹿野郎……」
「!」
「俺は今から10秒間……
全能力を10倍に引き上げて、お前と戦う――」
ブラッドは慌ててエターナルを発動し、
大剣と盾を身につけた。
「たくさんの地球人が、
お前たちから痛みを味わった……。
この星でこれ以上好き勝手やりたいのなら――」
「!」
笛の目が疼き、風のデータを捉えた。
エナジー値反応なし――
能力――発動なし――
能力名――
そこの変化はないままなのに……
「インパクト値とプロテクト値が300t!?
そんな数字、人間が出せる数字では――」
風が、締めのセリフを呟いた。
「俺を殺してからにしろ」
インパクト値300tの猛攻――
真紅の兜と鎧がガラス細工のように砕けていく。
剥き出しになったブラッドの全身へ、
容赦なく風の攻撃が打ち込まれた。
骨の砕ける音が一帯に響く。
「……ブハァ!」
倒れる間も与えられず、
激しい吐血だけを許された。
――残り2秒
風は初めてブラッドの素顔を目にした。
その素顔は、地球人と大きく変わらなかった。
「その顔で、侵略もせず笑顔で来てたら……
地球人と友達になれてたかも――」
風からの送る言葉――
つむじ風のように身体を回転させ――
その蹴りが、ブラッドの首へ叩き込まれた。




