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検査結果は能力なし 〜能力なしで死んだ俺は、なぜか今日も死なせてもらえない〜  作者: 鬼喜怪快
本編

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24/48

24話 人が消えた町



 

 タイガードロップ株式会社――

 その事務所前の崩れた瓦礫の上に、

 虎落狩と帝呼が重なるように倒れていた。


 それを見た風の思考は止まった。


 

「……親方……帝呼ちゃん」


 

 声にならないほど小さな声で、

 2人の名を呼んだ。


 反応がない。

 

 人の気配がひとつも感じないこの場所で、

 視線を感じた――


 

「お前たちがやったのか?」


 

 風は怒りの形相でうしろを振り返る。

 その先には3体のベーダー星人が立っていた。


 歪な兜のせいで顔は分からない。

 だが、笑っている気がした。


  

「……嘘だろ。

 ねぇ……起き上がってくれよ……」


「……」

 

「親方……帝呼ちゃん……そんな……」


 

 ベーダーの1体が口を開いた。


 

「人間の生き残りを見つけた……

 速やかに処分する……」


「!」


 

 何かが風の中で切れた――

 視界の色が消え、小刻みに身体が震える。

 


「……人間の生き残りを見つけた、だと」


 

 風はベーダー星人3体を睨みつけた。


 

「速やかに処分する……?

 ふざけるな……やれるもんならやってみろ」


 

 風はこの時初めて、

 誰かを守るためではなく、

 怒りの感情のまま敵に向かっていった。


 最初の1体の頭を殴り砕く。


 背後から2体がハンマーを振りかざして襲いかかってきた。


 ――パーンッ!


 斥力で同時に弾き飛ばし、

 後方へ吹き飛んだ1体を追いかけて蹴り上げる。


 背骨の砕けた音が2体目から響いた。 

 

 そして振り向きざまに、

 斥力で3体目を内部から発動――


 侵略者はシャボン玉のように弾けて消えた。


 風は3体を瞬く間に撃破。


 騒動を聞きつけて、別のベーダー2体が姿を見せたが、

 それも一瞬で叩き潰した。


 

「はぁ……はぁ……はぁ……」


 

 頬に熱いものが流れる。

 風は重なるように倒れている2人のもとへ立った。


 

「俺の……大切な人たち……

 力を持っているくせに……肝心な時に助けられなかった……」


 

 風の涙は止まらない。

 膝をつき、己の無力さを恨んだ。


 重なり倒れる2人に語りかける。


  

「虎落さんに、なんて伝えればいいんだよ……」


「……ちゃんと助けたって言えばいいじゃん」


 

 聞き覚えのある声が聞こえた。


 次の瞬間――

 帝呼が風に飛びついてきた。


 

「そんなに帝呼のこと思ってくれてるだなんてうれしー!

 両想いじゃん!」


「えっ? えっ!? えっー!?」


 

 死んだと思っていた帝呼に抱きつかれ、

 風は気が動転する。


 

「ど、どういうこと!?」


「おうおう! これぞ虎落家秘奥義・死んだふり

 って奴よ!」


「親方!」

 


 帝呼に折り重なるように倒れていた狩も、

 普通に起き上がり、瓦礫の上であぐらをかいていた。


 

「死んだふりって……ややこしいことしないでくださいよ。

 でも2人とも……よかった。

 本当によかった!」


「馬鹿野郎! 泣くんじゃねぇ!

 あんな連中とまともに戦って、

 俺らが勝てるわけねーだろ!

 死んだふりするしかなかった、ってわけよ」


 

 2人の無事を確認できると、

 さらに涙が溢れかえった。


 すると、

 事務所が入っている雑居ビルの地下から、

 ゾロゾロとたくさんの人が出てきた。


 

「……これは……街の人たちですか?

 みんな避難できていたんですか?」


 

 この場所に到着した時、

 不思議と人の気配がひとつもなかった。


 その理由がこの地下にありそうだ。


 

「俺はもと大工だ。

 何年も前からこのビルの地下に、

 超大型のシェルターを作っていたってわけよ」


「そんなもの作ってたんですか!?」


「そりゃ作るだろうがよ……

 もと大工なんだしよ……」


 

 大工だったら地下にシェルターを作るのか?


 ――やはり親方はただものじゃない。


 風はそう思った。


 

 しかし、

 シェルターに入っていただけでは、

 ベーダー星人の襲来から逃げ切るのは不可能に近い。


 何か他にも手を打っていたように思えた。


 一体何を……?


「風くん、不思議だなぁーって顔してんじゃん。

 なんでみんな無事なんだって?」


「うん……こんなに街が荒らされているのに、

 被害者がいない。

 ここに来るまでにたくさんの被害者を目にした。

 でも、この辺りには見られなかった……。

 不思議だよ」


「わたしの能力教えたよね?

 注目を浴びる香りを出せるって……」


「うん、知ってるよ」


「その逆もあるって知ってるよね。

 意識を逸らせる香り」


「!」


「みんなを地下シェルターに避難させた後、

 意識を逸らせる香りを全力で発散して、

 このビルに意識が向かないよう頑張ったの」


 

 風は驚いた。


 帝呼の能力がすごいことは分かっていたが、

 こんな使い方もできるのかと感心した。


 それよりも、

 街の人を守るため地下シェルターに避難させた後、

 能力を発動させるのに、自分たちは外に出て守り続けた。


 さすが、虎落家だと思った。

 


「わたしもやる時はやるでしょ?」


「うん……でも俺が助けに来なかったら、

 いつまであの状態でいるつもりだったの?」


「えっ? すぐに来てもらわないと困る。

 風くんならいいけど、

 パパに抱きつかれたままでいるなんて地獄だもん」

 

「……今日は偶然助けに来られたけど、

 もうこんな危ないことはしないでね……」


「やだ……風くんたら。

 わたしを心配してくれて……キュンキュンしちゃう」


 

 そのやり取りを見ていた狩は、

 不機嫌そうに割って入った。


 

「親父の前でイチャついてんじゃねぇ!

 馬鹿野郎!」

 

「何よ! わたし頑張ったんだし、

 風くんに褒められる時間あってもいいじゃない!」


「馬鹿野郎!

 そんなのは後にしやがれ!

 今から風はベーダーのいる中心地に行くつもりなんだぜ!」


 

 狩が風の前に立つ。

 


「行くんだろ?」


「はい……雷鳥さんにお願いされましたし。

 ……虎落さんも戦っています」


「そうかよ……」


 

 あたりから戦闘音が聞こえる。


 防星官とブレイカーが、

 ベーダー星人と戦っている音だ……。


 被害状況は分からない。


 だが、

 ここへ飛んでくる間、

 たくさんの防星官とブレイカーの無惨な姿を目にした。

 

 もちろん、

 市民にも甚大な被害が出ている。

 


「みんなを……笛ちゃんを頼むぜ」


「はい。笛さんは絶対に守ります」


「へへっ、お前がそう言ってくれりゃ安心だぜ……。

 でもな……」


「?」


「お前も死んじゃいけねぇ……。

 能力が未知数だ。

 回数制限が3回って可能性もある。

 次死んだら……戻れねぇかもだ」


「ありがとうございます。

 俺も死ぬ時、本当に怖いので、

 絶対に死にたくないんです」


「……ふん。もし親方命令を無視して死んだらクビだぜ!」


「絶対に――死にません」


「……おう! 信じてやるぜ!」


 

 2人は拳と拳をぶつけ合って微笑んだ。


 

「いいなぁ。わたしも混ぜてよぉ!」


「いいとこなんだ! 空気壊すんじゃねぇ!」


「わたしだけ仲間はずれにするからでしょ!」


 

 そのやり取りを見て、

 風は笑顔を見せた。


 

「それじゃ、いってきます」


「おうよ! 気つけんだぜ!」


「風くん! わたしがついてるからね!」


 

 そして風は、

 ワープゾーンのある方へ向かって飛び立った。


 

 ――――――


 

 風と会話を交わした後、

 ワープゾーン下へ向かった雷鳥。


 隊員、ブレイカー、民間人の被害状況を目の当たりにし、

 絶望感に襲われていた。


 そして雷鳥が到着した時――


 そこには、

 5メートルはある巨体のベーダー星人の姿があった。


 そして、侵略者10体に包囲された、

 剛海副隊長率いる11名の隊員と

 その傍で、地面に倒れている7名の隊員たち――

 

 

 絶望的な光景が広がっていた。






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