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検査結果は能力なし 〜能力なしで死んだ俺は、なぜか今日も死なせてもらえない〜  作者: 鬼喜怪快
本編

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21話 もう死んではいけない


 

 防星省・全12支部のWEB会議。

 

 玉造たまつくり大臣は隣に座る人物へ意見を求める。


 

百万遍ひゃくまんべん総隊長から何か?」


「ふむ……第6支部を中心に、第5支部、7支部にかけて、

 一晩だけで多数のWZの出現が見られた。

 これは油断できませんね……」


「150年前は隣国でWZが多発し、

 救援に日本から能力者を向かわせた。

 その時は隣国の問題だと思っていたが……」


「……蓋を開ければ、ベーダー星人はこの日本に現れた」


 

 防星省の見解では、

 この小さな島国・日本は、

 侵略者からすれば、彼らの拠点にもってこいの土地なのだとか……。


 現に日本は、土地面積あたりのWZ発生率が、

 世界でもトップクラスだ。


 

「隣国、友好国に連絡を取り、

 有事に向けて体制を整えておくべきだろう」


「……動いてくれますかね?

 他国は……」


「無視はできないさ。

 この国が落ちれば、次は彼らなのだから」


 

 ――――――


 

 タイガードロップ株式会社・事務所。


 今日は狩の退院日だ。


 笛も休暇を取り、

 父親の退院を祝った。


 実務的なことは、明日からの予定だ。


 ケーキとコーヒーでのお祝い――


 狩は見た目とは裏腹に、

 甘いものがこの世で1番好きだったりする。


 

「……うっ……うめぇ。

 ここの季節のフルーツタルトが1番うめぇ!

 一生食い続けられるぜ!」


「入院中は好きなもの食べられなかったもんねぇ。

 ケーキ食べてるパパを見るの、久しぶり」


 

 笛が人数分のコーヒーを並べる。


 

「一応、仕事は明日からってことで、

 営業再開のアナウンスはしてなかったけど、

 予約が1件入ってるから忘れないでよ」


「おうよ!

 点検だろ? なんてこたねぇーよ。風もいるしな!」


 

 全員が風を見る。


 

「今日は風くんの就職祝いの日でもあるんだよ。

 わかってるの?」


「うん……ありがとう」


 

 狩にはずっと、

 風の能力に関して気になることがあった。


 病院では聞くまいと思っていたことだ。


 

「風、お前の能力だけどよ。

 笛ちゃんから聞いた……たまげたぜ」


「ははっ……でも能力ありの認定がされないので困ってるんですよ」


「大丈夫だ……。

 いつか世間がお前に気付いて、ほっとかねぇよ。

 それまで、ウチで経験積んどけや」


「ありがとうございます!」


 

 狩はフォークを握りしめたまま、

 真面目な顔で質問を始めた。


  

「興味本位で聞くんだけどよ……。

 何回死んだ?」


「……3回です」


「その度に生き返って、強くなってんだな?」


「はい」


 

 狩はタルトを口に頬張りながら、

 険しい顔を見せた。


 

「パパ? 何か気づいたことでもあるの?」


 

 笛が尋ねた。


 

「回数に制限がないか気になってよ」


「!」


「たとえば……

 能力発動回数が3回まで……とかだったら、

 次死ねばお終いだろうがよ」


 

 風と笛は息が詰まった。


 そんなことを、

 考えもしなかったからだ。


 

「水難事故に遭って溺れて死んだ場合……

 生き返ったら、水死しなくなるのか?

 事故死による復活は鉄筋で確認できているが、

 自死の場合はどうなる?」


 

 ――沈黙が落ちる。


 

「風の能力は謎が多い……。

 笛ちゃんの目でも、

 その時が来ないと分析できないんだろ」


「……うん」


 

 狩は腕を組み、

 目を閉じながら考えを巡らせている。


 

「風はよぉ……」


「はい」


「もう絶対に死んじゃいけねぇ!」

 

「とんでもない能力には回数制限があったりする……

 ここって時に能力発動せず、

 過去に死んじまった奴もいるわけだ。 

 風の能力がそれに該当してない保証がねぇ……」


 

 狩の言葉に、

 3人は凍りついた。 


 そして帝呼が、

 風の腕にしがみつく――


 

「風くんが絶対に死なないように、

 帝呼がずっとそばにいるねぇ」


「!」


「今度は、わたしが守ってあげる!」

 

「タイちゃん……胸が……」


 

 そんな帝呼の行動に、

 笛が激昂する。


 

「帝呼! あなたはなんてことを! 離れなさい!

 紡時さんが嫌がってるでしょ!」


「どこが! 鼻の下伸ばして喜んでんじゃん!」


 

 真剣なムードから、

 いつもの虎落家の雰囲気に戻った。


 今日から心機一転――


 狩に言われた言葉は、

 風にとって身を引き締めるものとなった。 


 

「回数制限の能力――」


「もう死んではいけない――」


 

 同時に、

 それは大きな不安を呼ぶものにもなった。


 

 ――――――


 

 国立病院――


 防星省・第6支部隊長、

 雷鳥鳴蔵の病室に、

 息子である響が来ていた。


「WZ同時多発事件……

 150年前に起こった、

 他星との付き合い方を改めるきっかけとなった事件だ……」


「今じゃ、誰も詳しく知らない事件だからね。

 あのベーダー星人を知ることになった事件――

 ってことくらいは、みんな知っているだろうけど……」


「隣国との付き合い方まで考えさせられるものだったからな。

 日本は隣国のWZ破壊を手伝ったのに、

 ベーダー襲撃時には、どの国も日本を助けようとせず、

 その重い腰を上げなかった……」


「ベーダー星人が強すぎたんだよ。

 どの国も、自国の能力者を他国のために死なせたくなかったんだろう……。

 この立場になれば、わからなくもないよ」


「……お前でも歯が立たなかったような連中だからな」


「……有事に向けて、

 この国もいろいろ手を打ってきた。

 この島国の力を見せつけてやりたいところだけど……」


「……他国との連携は必要だぞ。響」


「……わかってる」


 

 その日のうちに防星省は、

 近隣国と友好国へ150年前の事例と照らし合わせて、

 WZ同時多発事件の報告を行った。


 各国へ有事の際に必要と思われる、

 救援・救助要請に関する書簡も送った。




 数日後――

 玉造大臣は、

 返信された書簡に目を通す。


  

「どの国の返答も期待以上の内容だ……。なぁ総隊長」


「この国が落ちることがあれば、

 侵略者の拠点にされて世界はお終いです。

 他国からすれば、

 いつ手を打つかの問題ですからね」


「ベーダー星人からの痛みを知っているのは、

 この日本だけだ……

 当時、救援によこされた能力者は、

 服役していた連中や、死んでもいいような連中だった

 ……という話も聞く。

 本当に助ける気など、あったかどうか……」


「救援を求める立場ではありますが、

 他国の動きも見ておかなくてはなりませんね……」


 玉造大臣と百万遍総隊長……。


 

 2人の不安は、

 じわじわと現実味を帯びていく。





 

最後まで読んでいただきありがとうございます!


ここから最終章に突入です。


本作は全33話完結予定。

状況次第では、おまけ話も投稿できればと思っています。


そして7月からは、

『処刑された最強呪術師、魔法世界で唯一の禁忌となる』

第二部(完結済み)を、完結まで投稿予定です。


まずは風たちの物語を、

最後まで見届けていただけると嬉しいです!


引き続きよろしくお願いいたします!

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