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検査結果は能力なし 〜能力なしで死んだ俺は、なぜか今日も死なせてもらえない〜  作者: 鬼喜怪快
本編

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20/48

20話 大切なもの


 


 そして現在――


 

 白梅市にある平野病院A棟の中で、

 腹部を吹き飛ばされても、娘を救うため――

 何がなんでも侵略者の思い通りにさせないために――

 

 立ち上がる、父・狩の姿があった。


  

「タイコリンは……助ける……。

 絶対に……連れて行かせない――」


「よく喋るゴミだ……」


「帝呼……お前は助かる。

 こんないい娘が、こんなところで死ぬわけがねぇ。

 神さんが……そんなこと許すわけねーんだ!」



 侵略者に飛びかかろうとする狩。


 

「邪魔だな……死ね」


「うおあらぁーっ!」


 

 ――ズドオォーンッ!

 


  

 轟音と共に、

 タルポルン星人の身体が吹き飛び、

 A棟の壁に叩きつけられた。


 大きな砂埃が舞い、一帯の視界が遮られる。


 崩れた壁に上半身が埋まり、

 侵略者の足だけが見えていた。


 

 狩には、何が起こったのかわからなかった。


  

 しかし、砂埃が晴れていくと、

 タルポルン星人のいた場所に――誰かが立っていた。


 

「……なんでいるんだよ?

 兄ちゃん……?」


「助けに来ました」


「……ありがたい。

 帝呼連れて、逃げてくれ……

 俺が……時間作るから」


「親方は出血部分を硬質化して、

 血止めに集中してください」


「……頼む……まず娘を……」


「!」

 


 瓦礫から抜け出した侵略者が、背後から飛びかかってきた。

 風は咄嗟に躱し、カウンターパンチを繰り出す。


 

 ――ドゴッ!

 


 タルポルン星人は床に叩きつけられながら転がっていく。


 

 

「……兄ちゃん、こりゃ夢か?」


「親方は休んでてください」


「はははっ……なにがなにやらだ……」


 

 タルポルン星人は起き上がると、

 今度は風ではなく、

 帝呼に向かって飛びかかった。


 攫って逃げるつもりなのか、

 それとも、人質にでもするつもりなのか。


 

 ――パーンッ!


 

 帝呼に触れようとした瞬間、

 タルポルン星人は見えない力に弾かれ、

 大きく吹き飛ばされた。


 

「?」


「触れさせない」


「……何をやった?」


「斥力の能力です」


「……斥力……だって?」


「帝呼ちゃんには、絶対触れさせない……」


 

 意識が朦朧とする狩にとって、

 現実なのか、夢なのか、もうわからなかった。


 ただ、狩の目には涙が浮かんでいた。


 

「……もう、どこからが夢なのかわかりゃしない。

 ……だけどよ、

 今はよ――ここだけは夢じゃ困るんだ……」


 

 風は狩に向けていた目を、

 タルポルン星人へと向けた。


 

「夢じゃないです……」


 

 そう言うと風は、

 今度はタルポルン星人へ指を向けた。


 

 狩はその時の風の言葉を、

 忘れることはないだろう。


 

「おい、そこの侵略者の馬鹿野郎……」


「!」

 

「俺の大切な人たちを傷つけたこと、

 絶対に許さない……

 この星でこれ以上好き勝手やりたいのなら――」


 

 タルポルン星人が、

 全身の筋肉を震わせながら風に襲いかかった。


 

 ――パンッ!


 

 タルポルン星人の突進を斥力で弾いた。

 弾き飛ばされた侵略者を、風は追いかけ――

 締めの一言。

 


「俺を殺してからにしろ――」


 

 ジュパッ!――


 風の拳が、タルポルン星人の頭部を砕いた。


 狩はこの戦いを最後まで見ていたのだろうか――


 勝負がついた瞬間、

 狩は意識を失っていた。


 膝をついたまま涙を流したその顔は、

 どこか安堵しているようだった。



 タルポルン星人が死んだことを確認した風は、

 2人のもとへ駆け寄った。



「……早く治療をしてもらわないと、まずい」


 

 風はすぐに助けを求めた。


 

「誰かぁ! 重症者が2名いるんです!

 助けてください!

 誰かぁ!」


 

 風は病院内を走り回り、

 声を張り上げる。


 

「ここは病院でしょ!

 回復能力のある人くらいいるでしょ!

 緊急なんだ、急いでください!

 助けてください!」



 風の声が響き続ける中、

 夜が更けていく――


 

 ――――――


 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ――」


 

 息を切らして笛が平野病院に到着したのは、

 ちょうど日付が変わった頃だった。


 笛は集中治療室前へ案内される。

 そこには、すでに風の姿があった。


 

「紡時さん!」


「虎落さん!」


「ふたりは? ……ふたりはどうなりましたか?」


「今、治療中なんだ。

 親方の怪我がかなりひどくて……」


「帝呼は!?」


「帝呼さんは無事だよ。

 全身打撲と、頭を強く打ったせいで意識がまだ戻らないけど、

 じきに戻るってお医者さんが言ってた」


 

 笛は動揺を抑えられずにいる。

 大切な父親と妹の命に関わることなのだから、

 当然だ。


 

「2人にもしものことがあったら……

 わたし……わたしは……」


「落ち着いて。大丈夫だよ。

 きっと大丈夫だから――」


「……あぁ」


 

 頭を抱え込む笛の肩を支えながら、

 風は集中治療室の灯りを見つめ続けた。


 

 ――――――


 

 狩が目を覚ますと、

 そこは一面真っ白な世界だった。


 

「死んだか……?」


 

 ぽつりと呟いた瞬間――


 

「パパ起きたよ!」


 

 元気な帝呼の声が響いた。


 

「こら、病室でそんなに大きな声出さないの!」


「だって、嬉しいじゃん!

 風くんに連絡しよーっと」


「……」


 

 狩の身体には呼吸器、点滴、

 それとよくわからない管が何本も繋がっていた。


 

「生きてるぜ……」


「うんうん、パパが1番重症で、

 2日間意識なかったんだよ」


「違う……タイコリンが……

 生きてるんだぜ……」


 

 狩が涙を流している。


 笛も帝呼も、

 父の涙を見たことがなかった。


 それだけで、

 あの日の惨状がどれほどのものだったのか、

 うかがい知れた。


 

「そうだよ……風くんが助けてくれたの。

 わたし記憶ないけど、

 病院の人たちが教えてくれたのよ。

 突然、空から現れて――

 わたしたちを守りながら戦ってくれたって」


「あぁ……全部見てたぜ」


「うそぉ!?」


「……夢じゃなかったか」


「?」


 

 起き上がろうとする狩。

 しかし、身体に力が入らない。


「パパはまだ動けないよ。

 お腹と背骨の神経の回復に時間かかるから、

 しばらくは絶対安静だって!

 下手に動いて、神経を傷つけたらやばいんだって!」


「……兄ちゃんに、

 会いてぇんだ」


 

 その言葉を聞いて、

 笛と帝呼は顔を見合わせて肩を落とした。


 

「どうした?

 兄ちゃんに何かあったのか?」


  

 笛が首を振る。


 

「もう限定ドーナツ売り切れだってさ……」


「風くんの役立たず!」


 

 命の恩人に買い物へ行かせていたようだ。


 そんな2人の娘を見て、

 本当に生きてくれていて、

 そして――

 自分自身、生きていて良かったと心から思った。



 しばらくして――


 コンコンッ――


 ノックをして、風が入ってきた。


 

「帝呼ちゃん、

 役立たずっ、てメール酷いじゃないか!」


「だって、風くんがとろいからだよ」


 

 笛が立ち上がり、風に近づいた。


 

「紡時さん、パパが……」


「!」


 

 風と狩の目が合った。


 

「親方! よかった、目覚めたんですね!」


「……おうよ」


「しばらくは活動できませんが、

 しっかり回復されてから、またご指導お願いします」


 

 こんなに強い奴に、

 何を教えろというのか――


 正直、狩はそう思った。


 しかし虎落家は、

 おせっかいという特殊能力を、

 全員が持っているらしい。


 

「……あったりまえだろ……風。

 俺が1人前にしてやんぜ……」


「ありがとうございます!」


 

 病院専属の回復能力者のおかげで、

 全治2週間の絶対安静――


 彼らの再活動は、それからになる。


 

 そして――その2週間後。

 風は正式に、

 タイガードロップ株式会社の正社員として雇用される。


 

 ――――――


 

 防星省・全12支部のWEB会議。


 

「雷鳥副隊長、先日のワープゾーン多発に関しての報告は以上か?」


「はい!」


 

 防星省の玉造たまつくり大臣の質問に、

 雷鳥が答えた。


 150年前にも発生した、この異常現象――

 国はそれを、

 《WZ同時多発事件》として記録している。


 だが、本当に恐れられているのは、

 ワープゾーンの大量発生そのものではない。


 問題は――その“後”のことだった。


 150年前。

 WZ同時多発事件から約1ヶ月後に――


 地球は、

 ベーダー星人による侵略を受けたのだ。





 

最後まで読んでいただきありがとうございます!


タイガードロップ入社編はこれにて一区切りです。


風は新たな居場所を手に入れ、

狩との師弟関係が始まりました。


ですが、その裏では新たな脅威も動き始めています。


「続きが気になる」

「面白いかも」


そう思っていただけましたら、

評価やブックマークをいただけると作者の励みになります。


引き続きよろしくお願いいたします!

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