14話 資格のない能力者
真夜中の集落に、
警察と依頼を受けたブレイカーたちが集まった。
ペルン星人の処理と、母娘の保護に当たっている。
紡時風と虎落笛も事情聴取を受けたが、
虎落が防星省の人間ということもあり、簡易的なもので済んだ。
それと――
隣にはベーダー星人を駆除し、全国ニュースに流された男もいる。
2人は、集落を救った英雄として扱われた。
警察には大ごとにしてほしくない旨を伝えた。
人が1人死んでいるため帰宅は許されなかったが、
報道陣からは守ってくれるようだ。
2人はパトカーに乗せられ、警察署へ向かう。
「虎落さん……ごめんなさい。
こんな状況になるなんて思っていなかった」
「……わたしもです。
侵略者に遭遇することすらないと思っていましたから」
「力試し程度に思っていたけど、
考えが甘かったと反省してるよ」
「侵略者の発見、侵略者の処分、
ワープゾーンの封鎖、警察や組合との連携……
ブレイカーも大変なお仕事なんです」
風は、パトカーの窓から見える景色を眺めている。
「自分はみんなに受け入れられない存在なんだと思う……
そう言ってましたよね?」
「えっ? ……あぁ、まぁね」
「防星省はそんなところではありません。
みんながあなたを1人にしない――
いつも誰かがそばにいてくれる場所です」
「……うん」
「一緒に……働きませんか?」
「……」
虎落の誘いに……風は返事をしなかった。
母の拒絶、防星省内部からの批判――
やはり、防星省に入る未来は想像できなかった。
警察署での事情聴取が終わると、
2人は解放された。
終電もないことから、パトカーでの帰宅となった。
――――――
国立病院――
そこの廊下を歩く男の姿があった。
――雷鳥 響。
防星省・第6支部、副隊長の1人である。
ベーダー戦で首を折られたため、完治には時間を要した。
そんな彼が病院にいる理由。
――自分の治療ではない。
ある個室の前で、雷鳥は立ち止まった。
ネームプレートには、
雷鳥 鳴蔵――とある。
雷鳥は扉をノックし、
挨拶をした。
「雷鳥です! 入ります――」
扉の向こうにいる人物は、
雷鳥 鳴蔵。
彼こそ、第6支部の隊長である。
「今週の報告書をお持ちしました」
「ご苦労」
挨拶もそこそこに、鳴蔵は資料へ目を通す。
やはり、紡時風の部分で目が止まった。
「紡時風……ベーダー星人10体を1人で処分した男か……」
「……はい」
「お前も、死地を彷徨ったと聞いている……」
「お恥ずかしい限りです……」
――2人の間に沈黙が落ちる。
「今は2人だ……堅苦しい話し方はやめようか、響」
「……わかったよ」
「あの剛海が、弄ばれたと聞いているが?」
「あぁ……どうも本当らしい。
俺も治療を受けていた時期で直接は見ていないが、
本人がそう言っていた」
「あの負けず嫌いが、弄ばれたと言うのだから
余程のことだぞ」
響は、ベッド横の椅子に腰掛けた。
「監視官も立ち会って見ていたようだが、
剛海をもってして、触れることすらできなかったらしい」
「それは楽しみな男が現れたな……
何としてでも第6支部で採用するんだぞ」
「そのつもりだよ」
鳴蔵は微笑みながら報告書を読む。
その横顔を見ながら、響が尋ねた。
「退院はいつ頃になりそう?」
「ふふ……さぁな」
「みんな、親父を待っている」
「待たんでいい……俺はお前に全権を託すつもりでいる。
お前が隊長を引き受けてくれればいいだけの話だ」
「俺じゃ、第6支部は務まらないよ」
雷鳥 鳴蔵――生ける雷鳴。
そんな二つ名を持つ最強の防星官だった。
しかし、どんなに強くとも病の前ではそうはいかなかった。
余命3ヶ月――
それが彼に残された時間だ。
「早く安心させてもらいたいね……」
「安心したらポックリ逝っちまうだろ」
響なりの優しさ。
帰る場所を空けておいて、
生きる意味を持たせたい。
それだけだった。
だから、まだ隊長にはならない――
「一般的なベーダー星人なら、防星官数人がかりで何とかなるだろう。
しかし、ボス個体となると別だ――
この男は、ボス個体と護衛2体を1人で処分した。
普通ではないぞ……」
「不思議な男だよ、彼は」
「ぜひ、死ぬまでに一度お目に掛かりたいものだ……」
――――――
家の電話やスマホには、
連日のように、防星省から勧誘の連絡が入った。
母親も反対している。
防星省入りは、見送るつもりだ。
能力がないのに、この強さ――
きっと世間には受け入れられない。
防星省内ですら賛否があるくらいだ。
世間がこの事実を知れば、その反応は想像を絶する。
そうなると、
民間ブレイカーでの採用が難しくなる。
個人でブレイカー会社を立ち上げるしか道はない。
風は連日連夜、そのことで頭がいっぱいだった。
急がないとダメなわけではない。
ただ、今までの自分から変わりたかった。
選択肢があるようでない世界。
ゴミとして扱われる世界との決別。
想像の中にしかいなかった自分が、
今は目の前にいる。
早く家族を――安心させたい。
それが、彼の背中を押していた。
第一希望である個人での起業は――
1年以上の民間ブレイカー勤務。
侵略者処理案件50回以上。
それが最低条件だった。
この内容を見る限り、今の風では起業ができない。
それならと、ブレイカーの採用案内を確認した。
いろいろな会社や個人が募集をかけている。
今まで、能力者向けの求人など見たことがなかったので、
それだけで楽しかった。
「この会社と……この個人ブレイカーは家から近くていいな」
いくつか目星をつけ、採用条件を確認する。
必須項目。
――20歳以上であること。
――自動車免許必須。
――生命保険に加入していること。(採用時加入も可)
さほど問題のない条件だった。
これなら面接をいくつか受ければ、
1つくらいは採用してもらえるのでは……
そんな希望が見えてきた。
――次の瞬間だった。
それは、最後の一行まで姿を見せなかった。
――能力者認定カードのコピー提出。
これは5歳の時に覚醒が認められた者へ、
市役所が発行するカード。
風には発行されなかったカード。
今でも能力発動とエナジー確認がされていない風は、
――能力者として認定されない。
つまり、どこにも採用されず――
個人ブレイカーにもなれない――
彼の夢は、簡単に潰えた。




