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検査結果は能力なし 〜能力なしで死んだ俺は、なぜか今日も死なせてもらえない〜  作者: 鬼喜怪快


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12話 選ぶ側へ


 

 

 防星省・第6支部からマンションに戻った風たち――



 帰り道も母親は機嫌が悪く、口を開かなかった。


 母親は能力持ちではない。

 だからこそ、風の今までの苦労をわかっている。


 彼女が能力持ちの男と結婚できたのは、

 宝くじに当たるくらい、幸運なことだった。


 能力なし――

 それはこの世界で、人間そのものの価値を大きく下げる。

  


 風には能力がある―― 

 そんな淡い期待を持たせておいて、

 都合が悪くなれば、

 やっぱり間違いでした――

 と、簡単に切り捨てられる。


 能力がない人間は、ゴミとして扱われる世界。

  

 だからこそ、母親は怒りが抑えられなかった。


 

 ――――――


 

「お母さん!

 ラップに包んでおくから、ご飯食べたいときに食べてよ!」


「……」


 

 寝室にいる母親に、ナギが声をかけた。

  

 母親は帰宅するなり夕食も食べず、

 寝室にこもったきりだ。


 

「もう機嫌直してもいいんじゃない!」


 

 珍しく怒ったので、

 頭痛でも起こしたのか、寝込んでいるようだった。


 

「お母さん……なんであんなに怒ったのかな?」


「俺がいいように使われているって、思ったんだろ」


「でもさ――

 お兄ちゃんが今更だけど能力者に覚醒してさ、

 防星官になれるなら、最高だと思うけどな」


「なんで?」


「だって、防星官って特殊な職業でさ。

 国家公務員の中でも年収ずば抜けていいじゃん!」


「えっ? そうなん?」


 

 能力なしの風にとって、

 能力持ちの仕事や給料面は興味はあるけれど、

 詳しく知るはずがなかった。


 基本的に能力なしの3倍の給料――

 それだけは知っている。


 能力持ちの公務員の給料なんて知るわけがない。


 

「前線部隊に配属なら初年度から3,000万円。

 内勤でも1,500万円からだもん」


「!」


 

 息が詰まった。


 ――ガタンッ!


 寝室から物音がする。

 母親も驚いているようだ。


 

「……そんなに?」


「それに国家公務員だから、福利厚生がすごいんだって」


「……」


 

 母親が、寝室から聞き耳を立てている気がした。


 大きな啖呵を切ったことを、

 後悔しているのかもしれない。


 それくらい防星官とは、すごい仕事なのだ。


 

「でも個人で活動って手もあるけどね」


「ブレイカーって奴か……」


「仕事選べるし、取り分もよくて、

 いいことも多いけど――

 組合に入ったり、国からの制約があったりで、

 色々大変みたいよ」


「……個人……か」


「えっ、なになに?

 その気になってんの!」


「違う!」


「もしやるならさ、雇ってよ。事務で」


 

 この日を境に――

 風はこの避けられない現実を、

 真剣に考え始めるようになった。


 

 ―――――― 


 

 数日後――


 駅前のカフェに虎落の姿が見えた。


 どこか落ち着きがない。


 鏡を何度も見て、髪型を整える。


 メガネは――

 少し高めのブランドもの。

 

 スマホを見ては周りを見渡し、

 誰かを待っているようだった。


 

「急にお呼びしてすみません」


「!」


 

 虎落は慌てて声のする方へ顔を向けた。


 待ち合わせの相手は――風だった。


 

「いえっ、わたしも今日は非番ですので問題ありません。

 紡時さんからご連絡をもらえるとは思っていなかったので、

 少し……驚きました」


「母が怒っちゃったでしょ。

 剛海さんにも悪かったなって……」


「お怒りはごもっともだと副隊長もおっしゃっていました。

 折を見て、正式に謝罪に伺いたいと言っていました」


 

 母親が激怒した日、

 風は虎落と連絡をとった。


 能力の分析結果を聞かせてもらいたい――と。


 その上で、

 もう1つお願いがあると伝えた。

 だから、虎落と待ち合わせをしていたのだ。


 

「俺のあるようでない能力のことなんだけど……

 あれから何かわかったことないですか?」


 

 風の質問に虎落は答えた。


 

「いえ、特にあれからわかったことはありません。

 あなたの能力に関しては、すべてわたしの推測に過ぎませんから」

 

「でも、その推測が当たってる気がするんだ……」 


「……少なくともあなたは、死んで生き返ると、

 身体がバージョンアップしている」


「だからあの侵略者の攻撃が2回目は効かなかった?」


 

 虎落は小さく頷いた。

 風はさらに質問を続ける――


 

「俺が斥力の能力を、どうして使えるって思ったんです?」


「一瞬だけ能力名が見えました。

 時を紡ぐ者……もちろん確信はありませんが、

 経験を繋げる能力――ではないかと判断しました。

 あとは……すべて勘です」


「……すごい勘ですね」


「あなたの事故やベアルガの話を

 聞いていたのも大きいですね」


「こんな力があるのに、

 能力ありとして認識されないのはどうしてだろう?」


 

 その質問に対して、虎落は申し訳なさそうに答えた。


 

「能力者が能力発動している時の、

 エナジー値がないからです。

 あなたは普通の状態で、

 その力を発揮しているということになります。

 ……だから、能力者として認識されない」


 

 風は肩を落とした。


 このままでは能力覚醒者として、

 正式に登録されることはない。


 能力のない――

 メチャクチャ強い奴ってことになる。


 今のままでは、一生侵略者扱いされるかもしれない。

  

 ――とてもじゃないが、それは納得いかない。


 

「わたしからも質問いいですか?」


「?」


「手のひらをベーダーに向けて破裂させる力は……

 なんという能力なのですか?」


「……あれは……斥力の応用ですよ」


「!?」


「斥力を発動させる中心点を、自分の身体の周りから

 相手の身体の内部に変えるんです。

 結果――

 相手を、内部から弾け飛ばせる」


「……素晴らしい。

 よく思いつきましたね」


「一度それを喰らって死んでますから……

 あとは――勘です」


「……あなたこそ

 ……ものすごい勘ですね」


 

 2人は顔を合わせ――

 笑い合った。


 

「防星官のエリートが、

 俺なんかとこんなにゆっくり話してくれるだなんて

 思いもしなかった」


「別に能力ありが偉いだなんて思ったことありません。

 それに、あなたは命の恩人ですから」


「……大袈裟だよ」


「他にお力になれることがあれば何なりと言ってください。

 もう1つ、お話があるのですよね?」


 

 そう――

 風にはもう1つ頼みごとがある。


 それは――


 

「……こんなこと頼めるの虎落さんしかいなくて」


「なんでしょう?

 わたしにできることでしたら何なりと」


「今晩……空いてますか?」


「こっ、今晩ですか!」


「……俺と付き合ってもらえませんか?」


「そそそ、それは……

 もしやデデッ、デートのお誘いで――」


「力試しがしたいんだ」


「はっ!」


「だから、侵略者探しについてきてもらえませんか?」


 

 虎落の乙女心とは裏腹に――

 風の頼みごとは、覚悟あってのものだった。


  

 今夜――

 風は自分自身を知るため、侵略者の駆除に出る。

 それが、自分が何者なのかを知る――


 唯一の方法だったからだ。




 

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