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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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幕間:疑いを忘れない

「――なんにもありませんでしたよ。あの人たちの住んでる場所」

「ふむ、そうか。分かった」

「もういいでしょうよ。ここまでやって何も出なかったんですから。人魚姫を助ける為に骨折る人間なんて居ませんよ。人魚姫の追跡の任務に戻りましょうよ。なんでそこまであの人たちに拘ってるんですか」


 部下からの意見も、彼には分からないでもない。決して、彼ら二人に明確な疑いの芽が見えている、と言う訳でも無く、そんな微妙な疑いでここまで拘るのは、騎士としての素質すら疑われる愚行なのは、分かっている。分かっているのだ。


「あの女の行方だって掴めていないっていうのに、無辜の民相手に、何やってんすか俺らは」

「確かに、彼女たちに対する疑いの目を向けるのは……余りにも無理が過ぎるのかもしれない。それくらいは分かっているとも」

「それじゃあ……」

「――だが、不自然だとは思わないか?」


 だが、それを踏まえて尚、引っ掛かる部分があるのは間違いない。不自然な行動や点が多すぎるのである。あの二人には。今までの彼らの行動を踏まえてみると、それは余りにもハッキリと彼の脳内に浮かび上がって来ているのだ。


「不自然って、俺達に色々と言った事ですか? そりゃあずっと俺達がアレだけつけて来てんですから、数で囲んで威嚇するのは当たり前じゃないんですか?」

「そこじゃない。あの弟、と呼んでいる男を何故一人で残していたのかという事だ」

「えぇ?」

「それだけの対策を打つほどに不安な相手ならば、先ず家族を傍に置く事を考えないか?」

「不安を少しでも和らげるために、ですか?」

「寧ろ弟が一人にするかと言う話だ。話によれば、情けないほどに姉離れ出来ないという事ではなかったか? 姉がずっと不審な男三人につけられて、何も行動しないと?」


 もしその言葉が本当ならば、弟が何もしなかったのは不思議だ。姉の後をついて回る位はしそうなものだが、一切の反応も無く大人しくしていたというのは……


「住処に関してもそうだ。なんであんな朽ちた遺跡の様な所に住んでいる」

「……まぁ、それに関しては不思議だと思いましたけど。両親と一緒に住んでるとは一言も言ってませんでしたし」

「独り立ちする年頃だからか?」

「そうですよ。旅にでも出て、古い遺跡を宿として使ってるのでは? 金の節約の為に」


 それにしたとしても、報告によれば相当にボロイ遺跡に態々、毛布やらなにやら持ち込んで野営状態である。年頃の娘とその弟の二人旅にしてはとんでもないレベルの暴挙。どれだけお金を節約したいのかと言う話だ。


「考えすぎじゃないですかぁ?」

「確かに一つ一つはそう気になる事でもない。だが、それら全てが彼らには()()()()()()。それを考えて尚、君は不思議と言わないのかね?」

「……んー、いや、そう考えると……?」


 そうだ。細かい点ではあるが、その細かい点がガンガンあるのである。全くもって馬鹿じゃないのか、と言う位には多いのである。気になる点が。多くな点が無くても、小さな点が塊になれば立派な黒点になるというものである。


「まぁ、ちょっとアレ? とは思いますけど」

「我々の過剰な疑い、で済めば御の字だろう。間違いなく二人の人間の身の潔白も証明できる。問題はそうでなかった場合だ。協力者等が居てみすみす人魚姫を逃がした、等となれば、事は我々の失態どうこうでは済まなくなる。地固めは必要なのだよ」

「……最悪どうなるんですかね」

「国の存亡にかかわる話だ。と言えば分かるか」


 そう言われた兵士があっと言う間に表情を真っ青にしたのも、当然の話だろう。賊の一人を追いかけるだけの任務の筈が、国を揺るがす大問題になりかねないという話である。ただの兵隊としては、正直想像もしたくないレベルだろう。


「はー……なんでこんな任務に連れてこられたんだろ」

「君が有能だからだ。王国の為に頑張って働いてくれたまえ」

「頑張って来たのにこの仕打ちとはねぇ」

「その代わり栄転は約束するとも」

「頼みますよ、騎士長……」


 ――正直な所、栄達も本当に約束できるか微妙な所ではあるのだが。


「(……王の意図が、正直な所、不気味だ)」


 自分を昔から疎ましく思って居るのは、正直分かり切っている。寧ろ、あの態度で分からないのは間抜けと言うしかないだろう。そんな自分に対し、こんな重要な任務を受けさせる、というのが分からない。


「(……私を除け者にしたいのであれば、閑職にでも送ってしまえば良いだけだというのに。何が目的なのか……いや、今はコレを考えるべきではないか)」


 ――今は、目の前の疑問に全てを注ぎこむべきだ。今の自分は、あくまで王に、王国に仕える騎士なのである故に……と、そこまで考えて。彼には思い出した事が一つ。そういえば、王国にてとある容疑で疑われていたのも、姉弟の語り部ではなかったか?


「……偶然か……?」

「はー、故郷の母ちゃんに土下座するような事にならないと良いんだけどなぁ……って、どうしたんすか騎士長。なんかまた考えこんじゃって」

「――王国に伝令を走らせろ。私が言った者を何人か連れてくるように」

「は、はぁ」


 コレが偶然かどうか。偶然出なかったとしたら、彼女達へ対する疑念は大きく深まる事になるだろう。寧ろ、そこまで来ると彼女達二人を主体として、調べたくなってきても不思議ではないという話である。


「それと、人魚姫の行方は、分かっているのか」

「いえ。其方に関しては全くもって引っかかるものも無く。アレだけ目立つ人間の情報に関して全く見つからないっていうのは、作為的な物すら感じる気がしますよ」

「アレだけの身体能力だ。既に人間の生活圏内からは逃げおおせているのかもしれん」

「ひえぇ、おっそろしい……勘弁してくれよ……」


 ……更に問題が増えそうなことは言わない方が良いのだろうな、と思ってしまう。人付き合いが苦手な自分であっても、流石にこの程度の感情の機微くらいは分かるものだ。


「全く、悩み事は増えていくばかりですねぇ。しかも、この国に黙っての任務でしょう? バレたら天から稲妻、どころか、嵐が吹き荒れたりするんじゃないですかねぇ……」

「そう言う任務だ。我慢して頑張ってくれ」

「あぁ、故郷の妹に会いてぇ」

「終わればいくらでも会える。頑張ってくれたまえ」


 ……自分も、故郷に手紙位は出すべきだろうか。と考えてしまう。しかし、紙は贅沢品だ。そう気軽に買えるものではない。そんな物をポンポン買う奴がいたとすれば、一体何に使うのだろう。と、思考に没頭しての疲れを、そんなどうでもいい事を考えて紛らわそうとした。


アンデルセン先生ごめんなさい。


そろそろこの物語をどうやって畳むか、考えないと。

とか考えてたら全く筆が進まない罠。

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