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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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ようこそ、ゴロツキの家に

「……コレで三日目か……」

「何がだい? ホラ、コレリンゴの汁」

「汁て。汁て……まぁ良いけどもさ。あ、すげぇ甘酸っぱい。美味い」

「そりゃあ良い所のリンゴ使ってるからねぇ。で、何が三日目なんだい?」

「こうやって待ちに徹するのが、だよ。ずーっと待ってるんだけどね」


 ――俺が町に出なかったのは、編集さんの目の届かない所で、俺が誰かに掴まったりするとマズいんじゃないかと言う理由。今は、俺を追いかけて直接事情を聞くような変態も居ないと思われるのでこうして外に出て来れる訳だ。まぁ、変態じゃなくて兵隊だけど。


「しかし、アンタの姉ちゃん、相変わらずの人気だねぇ。そのお陰でウチも盛況だよ」

「そりゃあ良かった。ウチの姉はいつでもどこでも優秀でございますから?」

「ただこの前はびっくりしたけどね。雰囲気をガラっと変えて、男三人を囲んで。まるで女王様かと思ったね」

「演技は上手いですから。はい」


 で、その兵隊はそんな風に編集さんに追い詰められていたと。想像してみる。あの無表情が上から圧力をかけるように見下しつつ、周辺には多くの客。あの少し低めの、クールな声色で『私達は、無実、なんです』……これは首切りされる一分前ですわ。


「しかし、演技も凄いもんだが」

『白兎を追いかけて、亀は仲間の元すら抜ける覚悟を決めたのに。白兎はそれを良しとしません。彼女が追い求めていたのは、そんな追い詰められて、自暴自棄な彼の姿では無く……』

「あんな物語、どっから仕入れてくるのかね。アンタのお姉さんは」

「……やっぱり面白い?」

「うん。そこらの吟遊詩人が唄う物語とは、なんか根本的に違うって感じがするわね」


 根本的に違う。か。そこまで言って貰うと、物語を書いた作者として冥利に尽きるというか。皆かたずを飲んで見守ってるなぁ。ああくそ、フードを被ってるからってあんまりにやにやしてたら怪しまれるけど……しちゃう。ビクンビクン。


「……あ、また来てるね」

「んん?」

「ほら。さっき言った、あの語り部が囲んでた奴ら。一体何をやらかしたかはしらないけど、あんないい子にあんな振舞いされたんだから、さぞろくでもない奴らなんだろうね」


 すいません。ロクでもない事したの俺らだったんです。そっちは正義の人達だったんです。その正義を積極的に叩き潰しに行ったクズなんです俺ら。いやホント。ただそれをしないと俺達が危ないのでやるしかないんですけども。


「しかし、その割にはあの子の語りも大人しく聞いてるんだけどねぇ」

「まぁそれだけ姉貴の腕が良いもんだと考えましょうや、へへへ」

「ふーん。そんなロクデナシ共でもあっさりと大人しくなるって事かい。そう考えると、本当にとんでもない腕なんだねぇ、アンタの姉さんは」

「そうだねぇー。なーんて。まぁ適当なんだけどな」

「適当かい。アンタ、そう言う所だと思うよ? 姉貴に言われてるのは」


 別に編集さんが俺をダメ男扱いしてるのはキャラ付だから違うし……実際にダメ男って訳ではないし……実際そんな感じ、とか言われたら寧ろこっちがおこだし。ムカチャッカだし。大炎上確定だし。許さんぞマジで……


「……大丈夫? ダメ男じゃないよな俺……」

「いやだからアンタはダメ男って言われてるんじゃないか」

「えっ、マジでダメ男なの俺?」


 ちょっとばかり自信が無くなってきたんだけども……ちょっと今までの行動を思い返してみようかなぁ……? って、あ。接触してくるぞあの三人。でこっちを見た、という事は……漸くお時間って訳か。割と時間かけやがって。


「――んじゃ、行きますか」

「おや、もう今日は帰るのかい?」

「どうやら姉は待ち人と会えた模様なんでね。ついて行かないとおいて行かれる」

「……アンタ、自分一人で家にくらい帰れるようになりな。ガキじゃないんだから」

「着いていかないと俺が後でシバキ回されるんだよ……マジで……酷いと思わない?」

「それも躾ってもんだろうよ」


 そんなもんかなぁ。現代じゃ体罰なんか物凄い過敏に反応するけど? いや、女将の言わんとする事も分かるよ? ボディランゲージだって正しく使えば言葉で言うよりも圧倒的に心に響かせる事が出来るからな。体罰だって使い方次第だとは思わないでもないけど……


「……いかんいかん。蛇足蛇足。行かないと。それじゃね。コレ御代」

「まいどー」

「まぁ無事帰って来たらまた美味しい汁を振舞ってくれや。お題はキッチリ払うから」

「……無事帰ってきたら?」


 ……スゥウウウウウウ……行くか。修練の成果が出てくれることを祈って。あぁ、表に居る。でもって例の三人を伴ってるか。間違いないな。


「――お待ちしてました」

「それでは、参りましょうか。さ、貴方も早く。此方に」

「あっ、へん……んんんっ! 姉貴、あんまり強く引っ張らないでくれ。痛い」

「いやぁ姉弟仲が宜しいのですね。良い事です」

「えぇ。それに、どうにも心配な所が多い物ですから、どうしても甘やかしてしまう部分もありまして……この前、偶にはしっかり叱らねば、と叱っては見たんですけど、どうにもなれない事はするものではないですね」


 いや叱るのは慣れてると思うんだけどなぁ……? 叱る、っていうか、ミスをしっかり見つけてビシッと言う、って言うのが正しいか。




 一体何処まで連れていかれるんだろうか……ってなる事を想像してたんだ。流石に国内に潜入するにせよ、距離を置くと思ったのよ。もうちょっと……メッチャ国内。なんだったら町内。無防備って思う訳でもないけどさ。


「なぁ、それ暑くないのか?」

「いや、別に……気に入ってるんで……大丈夫です……はい。それに、この格好は、なれてますんで。ぜんぜん。お気になさらず」

「そうか。あ、この建物です」


 物凄い町中。しかも、そんな特別な風でも無く凄い普通な家。まぁそれは現代的な俺の感性であって、この時代はサイズの一軒家って言うだけでも相当な高級物件である事は間違いないと思うんだけど。どうやってこんな所に住んだんだろうか。


「じゃあ、行きましょうか」

「あぁ」

「俺らのボスは奥でお待ちです。すいませんねぇ。こんなゴロツキの家に」


 アンタ等ゴロツキじゃないだろうが……まぁ、そっちがゴロツキで通したいならそれでもいいけどね。とか言いながら、本当にゴロツキみたいな人が大量に居たら洒落にもならないかなぁ。うーん……


アンデルセン先生ごめんなさい。


よーし、これから頑張って話をしちゃうゾ!

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