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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
134/285

切っ先が分身レベル

 ……矢折れ弾尽き、鉾も盾も全てが砕け散ってもはや何も出来る事が無くなろうとも俺は……絶対に……! 諦めない……! と思って頑張っては見ましたけど……ダメだったんです……私の負けは確定していたんですよ……!


「では行く事は確定で構いませんね? 先生」

「あぁ……俺の負けだ……何処にでも連れて行けってんだ……せめて最後の火花……派手に、散らして、やろうじゃぁ……ねぇかよ……」

「別に戦争に行くわけでもないのに大袈裟な」

「大袈裟にもなるってんだ! 敵地に踏み込むんだぞ堂々となぁ!」

「向こうから招待して頂けるのだから堂々と行って何が悪いんですか」


 それを言えるだけものっそい根性ですよ? 太いとかもうそう言うレベル通り越し太いッッッッツ!!!!! って言うレベルですよ? もうね、丸太そのものを担いでどえらい勢いで振り回して居るレベルの暴挙。


「それに、直ぐ行くって訳じゃないんですから」

「そりゃあ今すぐ行けって言われたら俺はもう土下座して『別の日にして下さい』と頼むしかないからね。うん」


 土下座した所でダメな気がするけど……良し、現実逃避はもうやめにしよう。やる事をやらないといけない。どうせ敵地に潜り込むんだ。やれることは全力でやらないといけないね。よーし腕がなるぞー! さーて……


「商人さんは武器を売ってくれるか……幾らだ? 結構良いお値段するだろうし……次に向かう迄にちゃんと資金を調えて……買い占めないよ……」

「何をする積りなんですかおバカ。やめなさい」

「何故やめるというのだね……カチコミの準備をするんだよ! 武力には武力で対抗!」

「競うんじゃありません」(バシィィィィン!!)

「ほべばっ!?」


 い、痛い……頬を張られた……今までも何度も色んな人に張られてるけどこの人の一発が一番重い気がするんだけども……?


「自分達の武器を全力で活かすんですよ、おバカ」

「ひ、ひどい……」

「ペンは剣よりも強しを地で行くのが我々作家界隈でしょう」

「でもどうやってそんな人たちにペンやら何やらで対抗するって言うんですかぁ……無理でしょうよう……」

「対抗するなんて言ってないでしょうが初めから。話し合いの一つもせずに戦う戦うと。野蛮な」

「野蛮にもなるわ! 向こうも野蛮なパワーをもってるんだから!」

「そもそも私達がやるべきは、自分達の無実を証明する事なのになんで殴り合う事前提?」


 ……んんんんんん、いやまぁ、それは言われてしまうと凄い何も言えなくなるんだけども。そうだな。ペンと言うか、言葉で俺達は訴えるべきなんだな。自分達の無実を。全力で。しかし、じゃあ俺達がやるのって……


「原稿作成?」

「謝罪文等を書く必要がありますね。さぁ。行ってみよう」

「結局やる事躱らない訳か……」


 でも、それならなんかやる気、というか、落ち着いて立ち向かう気概が出て来たぞ。俺の得意分野なら、そりゃあやる気だって出てくるけども。


「しかし、どういう風に無罪を訴えるべきか」

「誠実に、言葉を積み重ねていくしかないでしょう。物語の様に相手を喜ばす勢いではなく淡々と付け入るスキのない様に。です」

「あー、論文みたいな感じが良いのかなぁ」

「こうこうだからこうなるので私は無実です。と言ったような感じですから、論文で間違いはないと思いますけど。ただあんな風に書くのは不自然ですので。あくまでどういう風な所が無実なのかを考えて、上げて行ってみましょう」


 無実な所か……無実な所、向こうさんにとって、俺はあくまで向こうの目的と……人魚姫を捕縛する目的と敵対するような感じの、人魚姫の味方と思われている可能性がある訳なんだけども。それが考え違いだと教える必要が……


「……そんな滾々と教えるまでも無く俺達バリッバリの無実じゃね?」

「一回邪魔しましたけど?」

「そうなんだよ。そこなんだよ。分かるか? そんなクソ弱い根拠で色々言われてるけど、ほぼ言い掛かりじゃないか。分かるか? 分からない訳ないよな?」

「気づいてしまいましたか……」


 気づくわ。そこ迄愚かじゃないわ。舐めるな。ちょっと考えてみればなんで分からなかったんだろうって言う位の凄い単純な事じゃねーか!


「でもって俺自身が間抜けだったのも分かってしまったけど……今まで『あっ、俺らが悪かったんだ』って騙されてたし。疑わなかったし。よく考えてみれば俺達悪い所なんにもないやん」

「まぁ。傍から見れば軽く乱入しただけですし。そんな敵対する所何もないですよ」

「目を付けられている=俺らが悪い……思い込んでしまったのが致命的だった」

「ようするに堂々としてればいいだけ、と」


 気づけたのは大きかった。自分を悪と考えて『申し訳ない……』って気持ちで向かうのと、自分達は全然悪くないと考えて『あぁん!? 無実を証明してやるってんだ!』って向かって行くのとじゃあ心意気が違う。


「俺達は……騙されていた……?」

「騙されていた、と言うのは間違いないですよ。自分達が勝手に勘違いしてただけで」

「じゃあなんで俺らが呼び出されていたというのか。前提として、俺達は自分達が悪いと思って居たからこその向こうに協力する事でその悪感情をどうにかして貰おうと思ったからこその協調方向だった訳だし……やめる?」

「いえ。協調した方が良いと思います。またぞろ言い掛かりをつけられても仕方ありませんし」

「そーだよ。俺達は邪魔するつもりはなかったんだから! だから堂々としていいんだよ」

「ただ人魚姫に協力するというのは紛れも無い事実ですけども」


 ……結局そこからは逃げられない。厳密に言えば味方ではない! 味方ではないんだけど、彼女に協力した形になるのは紛れも無い事実なんだよなぁ。どんだけ俺達は悪くない、何も攻められる部分は無い、アンタ等に敵対はしてない、そう言った事実を積み上げても……


「……あれ? そこ迄行けば偶然で押し通せる?」

「我々はあくまでお城を見に来ていた姉と弟。そこを我々に対して言い掛かりを突破するのが基本でしょうね。向こうは、あくまで『幾らなんでもタイミング良すぎない?』っていう事一点で疑っているので。おかしいのは向こうなんですよ」

「じゃあやっぱり……」

「ただ人魚姫に協力しようと思って居たのは」

「お前覚悟決めさせようとしてんのか迷わせようとしてるのかはっきりせい!」


 さっきから行くかどうかが針がぶれっぶれになるんだよ! おい! なんではっきりさせようとしないんだお前は!


「分かって欲しいだけですよ。我々には後ろ暗い部分が確かにあり、それは傍から見れば決して分からないレベルなのに、相手はこうして交渉の場に引きずり出してる……迂闊な発言をすればその部分を一発で見抜かれて、終わりだという事を」

「……」

「だからこそ、徹底的に詰める必要があるんです。決してミスをしないように、ね」


アンデルセン先生ごめんなさい。


どっから見てもは悪くない全然、と言われるような状況なのが分かっていても、何処かには『まぁ自分達の為に悪い事やったのは間違いない』というのがある場合、凄い気を付けなければならない、と何処かで聞いた事がある気がしないでもない。

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