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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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虎穴で生みの苦しみを味わう

「――じゃあ、すいません、今回もよろしく。あと、前回みたいな恐ろしいレベルの積極策だけは止してくださいね」

「分かりました。行ってまいります。それと、コレが終わった後のお話についても考えておいてください。お願いしますね? もう全力です。全力。です。押し付けている事も分かってますけどそれでも血反吐吐いて頑張ってくださいね?」

「うーんここまで他人事だと、イラつきもしねぇなぁ」


 やってやろうじゃねぇのオラァ。俺ってばね、どんな方法でも火が点いてしまえばやる気出しちゃうタイプの人間なんだよ。うん大分嘘吐いたそんな事無いんだけどね。本当はこの人への反抗心が焔を燃やしてるんです。ごうごうと。


「先生が頑張る分、私も頑張りますので」

「なに、比例すんの? 俺の頑張りの分貴方も頑張るって事? どういうシステム?」

「企業秘密という事で」

「企業とかそれ以前にアンタ、俺の編集さんなんですけども。秘密にする必要ある?」

「ありますよ、だって……バレてしまえばそれがない事に気づかれてしまいますから」

「おうなんかいい事風に言ってるけど要するにホラ拭いたって事ですよね」


 よーしよし。もう限界だぞ。適当な事言って俺を惑わそうとは。随分と太いマネをしてくれたもんだ。しかも、微妙に『あ、もし本当だったらやる気出て来ちゃうな。嬉しいな』って思う様な感じを見せてくださって! 許さんぞもうおこっちゃったぞー!


「きゃー(棒) やめてー(棒) 怖いですー(棒) 乱暴されちゃうー(棒)」

「待てぇおらぁ! 許さん! もう逃がさんぞ! 勝てないのは分かっているんだから全てを投げ捨てて戦えるってもんだもう俺だって! どうせ負けるんだ、派手にやってやる!」

「特攻じゃないんですから……」


 因みにこの後、無事に制圧されまして。布団の上に転がされる事と相成りました。ホント、錯乱して襲い掛かって申し訳ありませんでした。えぇ。




『――あのー、語り部さん。どうもー』

『あら、こんにちはお二人共。もう一方はどうなされたのでしょう』

『アイツは……あーいや、まぁ。ちょっと上司の所に』


――凄い、曖昧な返事でしたよね。ちょっと視線を逸らすというか。一応先日の事に関してはちゃんと謝ったんですけど。それじゃダメだったのでしょうか。大分大分な事をやった自覚はありましたけど。それでも誠心誠意、私の全てを込めて謝ったつもりなのですが。


『それで? 何か御用でしょうか?』

『御用って言うか……分かってますよね?』

『まぁ、そんなに無実を証明したいのであれば……此方に出向いて無実を証明しませんかって、ウチのね、偉いさんがこっちきて、話聞かせて、って』

『何の話を聞かせて欲しいと? 私、ただの語り部なんですけど』


 と、私が言っても『いやいや、冗談は良いから』と言った様な事しか言われず……本当に悲しかったですね。私達、本当にいい子なんですけどね。方法が宜しくなかった? 一体何の話なんでしょう……私、分かりかねます。


『正直、昨日はビックリしましたよ。接触してくるかもしれない、って言う忠告の後のアレで舌から。思考が死んだというか』

『というか、よくあんな事出来ましたね。ビックリしましたよ』

『お店が馴染みなので出来ただけですよ。皆さま優しいですし』

『いやそもそもですよ、普通思いつきませんよ……? あんなのどうやったら思いつくんですか』


 ここに関しては、まぁ現代人しか思いつかない発想ではあったと思います。同町圧力って案外新しい発想なんですよね。いやぁ、失念していました。はい。本当に。


『それは兎も角。私達は如何すれば良いんでしょうか。其方にお伺いしても何をすれば良いのか分かりませんで……』

『ああいえ、俺達も何をさせるかなんて……サッパリなもんで』

『呼び出しておいて何をって言う話かもしれませんけども。すみません……』


 まぁすみません、と言われましても。私には従う事しか出来ませんし。仕方ないですよ。取り敢えず美味しい物を出してくださいね、とか言ってみたら皆さん朗らかに笑ってくださいましたよ。ニッコニコでした。えっ? 厚かましいって? 否定は出来ませんね。


『では……そうですね……えっと、何時だったっけ?』

『俺に訊くなよ。覚えてる訳ないだろうが』

『いや全くもってそうなんだが。俺だって知らないのは分かってるだろうが』

『否定は出来ないなぁ……すみませんねぇ、どっちも馬鹿なもんで』


 コントですよねこの辺り。え? 私と先生のやり取りも割と? ……そうですか? んー、某新喜劇とか入ってみます? あ、入らない。そうですか。先生と夫婦漫才、良いと思ったんですけれども。そうですか。駄目ですか。


『えーっと……アレですね。大丈夫です。あの。時が来たらお迎えを寄こすので』

『迎えですか』

『えぇ。その時にこの酒場に弟さんも一緒に来ていただければ一緒にご案内させて頂きますので』

『承知いたしました。ではその時にはよろしくお願いいたしますね?』

『はい。丁重にお送りさせて頂きます』




 ……で、帰って来て早々その報告と。成程なぁあああああ!?


「丁寧な方ですねぇ」

「めっちゃ懐に引き込まれてる……! 罠じゃん……!」


 そんなんに好き好んで飛び込みに行くとか、どんなノンビリ屋さんなんだろう。若しくは『この俺にそこら辺の有象無象共が傷をつけられるなどあり得ん』とか考えてる凶キャラ臭溢れる魔王的なキャラクターならするかもしれないけど。


「何でも疑ってかかるのは宜しくないですよ先生。折角招待して下さるというのですから、人を信じて行ってみましょうよー」

「こ、心にもない事を申し上げよって……!」

「心にもないなんてそんな、私が冷血な人みたいに言って。私哀しいです」

「いや、丸々棒読みな人に言われたくないんだけども?」


 凄いよ。最初の棒読み感。顔は真剣だったけども、多分口半開きよだれ垂れ流し目はうつろでも全然似合うレベルの棒読みだぞ。具体的に言うと、多分ひのきのぼうと同レベルの棒読みだとおもう。貧相さ的な意味で。


「まぁそれは兎も角、向こうから接触してくれるというのですから、渡りに船でしょう」

「言った所でなぁ……無事に無実を証明できるかなぁ?」

「なんか初めてのお使い風味ですね」

「やかましい。冗談を言ってる場合か!! 証明できなかったら大分厳しくなるんだぞこっからの活動が! マジで、もうちょっと考えてから向かってみようじゃないか!」

「案ずるよりも生むが易し、虎穴に入らずんば虎子を得ず……ご存知ですか?」


 あぁ。リスクを恐れず突っ込めという事ですか。はいはいはいはい……虎穴どころかドラゴンの逆鱗にハンマー叩き付けるレベルの暴挙だと思うんだけどなぁ。それでも行けと? いやぁこの人だったら言うんだろうなぁ……!


「……」

「……」

「議論を、まずしましょうか」

「良いですよ。行く事は絶対に覆りませんけど」


 そ、そうですか……どうやって抵抗しようかなぁ。


アンデルセン先生ごめんなさい。


リスクを負わずして何が異世界転生か!

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