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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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よう兄ちゃん、調子は如何?

「……『白兎は、亀を崖際へと誘って言いました。『僕もヤキが回ったもんだ。無実の証明なんて似合いもしない事をして、こうして身を亡ばしかけているんだから』と。亀は、『今だったら逃げ切れる。力を貸そう。だから無実を証明するまでは』……んー、なんか違うな」


 そもそもそんな諦めいいか? コイツ。あっさりライバルに解釈頼む様なタマか? だったらそもそも怪盗なんて難儀な事やるか? キャラに合ってない気がするな、ここの下り……だからって書き直すとなると……


「――だーもう! 悩んでる暇はねぇ! 書き直しだ書き直し! どうせ編集さんがいない間が拘るチャンス! 書くだけ書け! そうすりゃあ勝ちってなもんよ!」


 何に勝つかって? 知らん! 昨日の自分とかそんなじゃないか!? 兎も角、特に理由も何もいらねぇ、やる気にさえ繋がりさえすりゃあおれの勝ち! 後は書こう書けば書く時に全力で書き切れば俺の勝ち。何に勝ったのかは知らん。


「兎も角このテンションを維持して書き続ける事! 頑張れ俺! ふふ、まだあるんだ! まだストックはある! ハイ紙をぽーい!」


 という事で必死こいて書き上げたこの紙はもう使い物にならないという事で……だから書き直し嫌なんだよ! パソコンみたくキーボードカタカタカターで文字とか諸々全消去―やったまたやりなしだー……とはいかねぇんだよぉ!


「こ、これだけ書いたのが……全部……無駄に……」


 編集さんにはあれだけテンションを上げて変なもん書いて紙を無駄にするなと言われておったのにあー……恥ずかしっ! マジで! テンション鰻登りだったのがコレだよ……ええい、仕方ないミスしたのは取り消せないんだ。頑張ろう。


「……どうしようかなぁ……編集さんになんて言い訳しようかなぁ……紙のストックが予定より減ってますよーとか言われたらどうしようかなぁ……」


 い、いや。まだ予定の数よりは少ない。頑張れ俺。頑張って丁寧仕上げればギリギリ間に合う範囲だ。最悪の事態はここで焦ってさらに紙を暴走したみたく消費する事。それで怒られるのが実にマズい。冷静に仕事をしろ。


「何が辛いって、また全部書き直すのがキツイ……」


料理の味付け致命的にミスった時、みそ汁とか。悲しみを背負いながら流しに流すでしょ? それと同レベルの哀しさ。俺もさ……味噌汁くらい作れないと駄目よね、とか思って頑張った結果どうなったかと言えば、まぁ。お察しください。


「しょっぱかったなぁ……あの味……なんか、哀しかった……い、いや違う違う。それを考えてる場合じゃない。今は全力を出して書き切るんだよ……!」


悲しんである場合じゃないんだよ。全部書き直しなんだから……そう言えば、編集さん、何を仕掛ける積りなんだろ。出てくる前に『ここからは積極的に無実を証明しにまいります』って言ってらっしゃいましたけども。


「積極的に、って言うのが不穏なんだよなぁ」


 編集さんの積極的に、って言うのは一体どれだけのもんなのかしら、って言う話よ。あの人の積極的に、っていうのは本当に『積極的』だからな。危ないよ……


「ヤバいよなぁ。何かしら大爆発してしてもおかしくないレベルよ」

「――何がですか?」

「ふむがぁぁぁあああああ!?」


 何!? 何奴!?


「おのれ曲者、貴様の首を切り落としてくれる! かかって参れえええええい!」

「では殿の首、へし折らせて頂きますが如何でしょうか?」

「あっいえなんでもありません……すみません……へ、編集さん、お帰りなさい……」


 気配を消して忍び寄ってこないでほしいのである。し、しかしこの人やはり無傷。積極的に行くという覚悟を見せつけて帰ってなお俺の首をへし折るレベルのやる気を出して来るとは。とんでもないバイタリティだけど……所で貴方が見てるのって首じゃなくて手首じゃない?


「なんで手首見てるの……?」

「何となくですけど、小説家にとって首より大切な『首』かなと」

「そうねー……ってそこまで分かっててやろうとしてたの?」


 怖すぎない?


「い、いやそれはいいや……それで、積極策って上手くいったの?」

「行きました。と、言いきれれば良かったんですけど。一応、手応えはあった気がします、程度ですね。残念ながら」

「そ、そうか。そりゃあ残念だったね。えっと……因みに何をしたの?」


 気になってしまうのは人間の性。聞かない方が良いかもしれないけど、でも突っ込まないといけないのよ。あんまりにもアレなやりかただったら、それは俺が諫めないといけない訳で。


「いえ別に。女将と皆さんに協力して貰って」

「も、貰った。となると、酒場にて仕掛けた訳ですか」

「えぇ。人数が必要なやり方だったので。普段から来てる方は勿論、そのお友達にも来ていた抱きました。皆さま、アレだけいたら相当、こう、圧力的なモノがあった気がします」


 ……ビビったって、何にビビったんだろう。その言葉の時点で嫌な予感しないのは。数で、ビビらせるってことは……イヤーな予感が増してきましたねぇ。特に圧力って所。背筋が冷えて参りましたねぇ。俺も、聞き覚えのあるあれじゃないかな? いやそうだろうなぁ多分よぉ!!


「……皆で、囲んで。『よう兄ちゃん……ちっとばかり……飲もうや……』的な」

「あら、良くお分かりで。兵士の皆さまの席を店の奥にご用意して、その周りを皆で固めて、その上で私のお話を聞いて貰いながら……ちょっと、ね?」

「うぅうううううんやっぱりぃぃぃいい!」


 やっぱり圧迫面接だった! 面接じゃないけど凄い圧迫力を持って交渉してる! 凄い積極策取ってた! 敵対行動に入れられても全く文句が言えない類の行動だよそれは!


「どーすんの!? 敵愾心煽って!?」

「いえ。酷い事は何もしてません。お願いも何もしてません。ただ、私は皆様に、『我々には罪は無く、其方にたてつくつもりもない事を、ご理解いただきたく』と()()()だけです。圧力に任せて言う事を聞かせるなんて、そんな」


 本当か!? やってないか!? いやでもこの場合それでもいいのか!? 周りの自分達の味方で固めて『私達無実。信じて?』って言うだけってそれはそれでクソの様に不気味じゃないんですかねあの皆さん!


「……大丈夫かな」

「一応、『わ、わかりました。おつたえしておきます』とは言ってらしたので、大丈夫だとは思うのですけれど」

「そうかぁ」


 効果あった、というか、効果あり過ぎた気がしないでも無いんだけど。


アンデルセン先生ごめんなさい。


おう、さいこうさ(棒読み)

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