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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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フラグのバーゲンセール

「……んーっ! あぁ……今、何時だ……朝か……? 昼か……?」

「昼ですね。お日様が天辺にありますので」

「そうかぁ。ガッツリ寝たなぁ。まぁ、昨日大分遅くまでやった、と思うし、当然と言えば当然なのかね」


 あーホントだ真上だ真上。時計が無いって、時間間隔が無くなって嫌ねぇ。時計が無くても時間間隔が狂わないようにしないといけないな。気づいたら朝とか、時計が有ってもよくあったってのにもっとあり得そうだよ……


「作品も仕上がった。方針も決まった……となれば、後は編集さんにお任せするしかない訳か」

「えぇ。大丈夫です。お任せください。頑張って、ボロが出ないように立ち回ります」

「……まぁ出ないと思うけどな。ボロ。別にどっかに協力してる訳でもないし」

「接触する隙、の様なものを見せなければ良いんですよ。要するに」

「何を達人みたいな事言ってんの……?」


 武術とか嗜んでないでしょ。いや、この人だったら軍隊式の殺人体術学んでましたとか言っても不思議じゃないと思っちゃうけどもさ。


「単純な話です。一人にならなければいいんですよ」

「一人に」

「えぇ。潜伏しているのですから、大手を振って話を聞く為に連行なんて事なんて出来ません。立場を明かす事だって出来ません。でしたら話を聞きたいとかいうのも、他に誰か居れば断るのも決して難しくないと思います」

「あー、この人たちと話してますんで、申し訳ありませんが、的な」


 そう考えると一人でいるのって結構リスキーだね。俺だったらなんか、人の輪から離れた所を頭陀袋を頭からひっ被せられてこのザマである、とかシャレにもならないって言う話もありえそうな気がしないでもない。


「そうです。それに周りに人が居る状況と言うのはそもそも話しかけられにくくなりますし」

「精神的に? 物理的に?」

「両方ですね」

「そりゃあ話しかけにくくもなるなぁ」


 両方って事はもう全力で大人数の中に潜む気満々……まぁ、要するに酒場に入り浸るつもりか。まあ確かに編集さんならあそこで滅多な事はされないと思うけど。


「――では、行ってまいります。無事に帰ってくる事をお祈りください」

「お祈りせずとも、信じてるよ。図太く帰ってくるってね」

「図太くは余計です……まぁ、大丈夫ですよ。完璧なプランと完璧な見通し、そして私もしっかりどういうのがダメな流れなのか、どういう風に躱すのか、そして潜伏した人がどんな感じなのかも完全に想像がついています。今の私は完璧です。美味しいフルーツを用意して待っててください」


 ……お、おう。凄い自信だね。えっとさ、でも、ちょっと気になるんだけども……あの、あのですね。その凄い自信がある言い方とか、完璧だとか……あの、色々あったんだけども。えっと。そのですねお嬢さん。


「……あの、編集さん。えっと……」

「なんですか? 先生」

「その、いや。あのー……なんでもございません。頑張ってください。出来れば」

「―ーえぇ。お任せください」


 あっ、何だろうその、その凄い好き取った瞳。もう大丈夫、何も怖くないから、的な表情がさ。とんでもなく、こう、凄まじい、不安感を……煽り建てるような!


「……えっと、それって死亡フラグって言いませんかね?」


 自信満々な発言。最後の発言。それにあの透き通ったような、悟り切った表情……全てが、全てが綺麗に、最終決戦直前に強敵の元へ旅立つ、そんな感じのシーンに見えてしまったんだけどもそれは、あの、本当に大丈夫?


「……す、すっごい不安になってきたんだけども……えっ、怖くない? 俺、着いて行かなくて大丈夫ですか?」


 あの、ずっと帰ってこなくて俺一人だけ残された、とか言う展開が見えてきたんだけど。いや、そんな漫画みたいな展開になる訳ない、ない……とは思いたいけど、ここ物語の世界だろ!? 死亡フラグとか普通に適応されそうで怖いんだけど! ちょっ……


「ちゃんと、帰って来て……くれるよな……?」




「只今帰りました」

「いやかえってくるんかーい」


 めっちゃ無事なんかーい。しかも全然傷どころか、何だったら髪一つも乱れてないんかーい。全くもって無事やないかーい。あれっ? とか言う違和感ないやんかーい。なんだったら行ってきた時と変わってないやんかーい。


「どうなされました? まさか無数に死亡フラグ立てて行ったのが不安だったとか?」

「……いや、別に」

「アレは、逆フラグクラッシャーと言う物ですよ。死亡フラグを無数に立てる事で死亡フラグを逆にへし折る、的な。そんな感じです」

「へ、へー……そうなんだ……」

「まぁ一応、不安な部分が無かったわけではないのでゲン担ぎ程度にやってみました」


 ……人の心配を……さぁ……いや、まぁゲン担ぎって言う部分で考えるなら間違っちゃいないんだろうけども、ただ心配し過ぎだっていうのは否定できないんだけどもさぁ。でも、こんな奇妙奇天烈な経験したんだぞ。万が一があるって思ってもしかたないだろうよ……!


「……はぁ……いいや、もう……で、どうだったの?」

「盛況。大当たりです。先生がしっかり詰めたのが功を奏しましたね。それと……やはり人混みに紛れるのは有効ですね」

「有効って、いうと、なんかあったの?」

「えぇ。何時も話を見てくださる方が、変な奴らが居たと話していたので、詳しく聞いてみれば私の事を見つめて、こそこそと話していた連中がいたと。酒場なのに、お酒も飲み物すら全くもって飲まず、ずっと。酒場の端に居たと」


 ……勘違いじゃないの? とか言おうかな思ったけど本当に変な人だった。そ、そんなあからさまな不審者っていらっしゃるの? ジョークじゃないの? いや、ジョークではないんだろうなぁうん。


「で、話しかけられなかった?」

「えぇ。人ごみに紛れてしまえばあっと言う間に撒けましたよ」

「が、ガバガバだなぁ……」


 そいつらが本物だとしたら、もうちょっとさぁ、しっかり見張れよ。情けなさ過ぎるだろうが。こんな目立つ人をあっさり逃すとか。


「ただ、ずっとあそこで見張られっぱなしっていうのも面倒なのは間違いありませんが」

「いや面倒どころじゃなくて怖くない?」

「――まぁ、それは今は置いておきましょう。先に、売り上げの方の話を」

「いや、安全の方が大切じゃないのかなぁ」


 まぁ、どうしても売り上げの話が先だってなら、止めないけどさ。


アンデルセン先生ごめんなさい。


フラグは立てるものじゃない。束ねてへし折るものである。

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