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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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私がやらなきゃ誰がやる

「……これで、こんな感じで。後は、細かい描写……は、必要ありませんか。流石に」

「うん。コレで主人公が綺麗に逃げ切れる流れに持っていけてるし、大丈夫だと思うよ」

「それでも、ここら辺が若干ご都合主義なのは否めません。この辺りは、もうちょっと詰める事は出来るのではないでしょうか」

「ここまで来たら、もう拘るかぁ。全力で」


 それこそ、この鮮やかな逃走劇が爽快で、そして完璧であればあるほどウケるって話。だからしっかり詰めるのは必要な事だ。そう。だから集中しなけりゃいけないのは確かなんだけども。でもなぁ、なんとも。


「――どうなされたんですか?」

「んっ? いや、何も」

「いや明らかに上の空じゃないですか。何を考えているんです?」

「ちょっと、な。さっき言ってた事を考えてて。味方に出来ないかなって」


 だって、何度考えても無理なんだよ。土台。俺自身が、あの超人共にでも何とか喰らい付けるようなキャラクターとして、自分では絶対にどうしようも出来ないキャラを設計したんだ。だとすれば、俺達が挑むのは正に下策では。


「アレ、本気で考えてたんですか? さっきも言いましたけども、厳しいのでは?」

「不可能ではないと思うんだよな。必ずしも向こうの目的とこっちの目的がかち合ってるとも限らないしさ」

「本気ですか?」

「……正直な話、いたって本気だけど」


それなら。それなら俺達は和解、と言う選択肢を選んでしまうのは決して間違いじゃないと思うんだよ。優しい世界を誰かを救う。多分今回の場合は俺と編集さんと言う、創造主とその右腕な訳ですけど。世界に救われる創造主とか胸が熱くなる展開だなぁー。


「何も、本当に協力しようって訳じゃない。ただ向こうの行動が、こっちと敵対しない様に出来ればいいんじゃないか、って思う訳だ」

「……言うは易し、ですが。どうやって?」

「どうやってって……向こうの行動にこっちが合わせればいいんじゃないかと」

「向こうの行動に合わせるって、こっちから向こうに協力する、と?」

「そうそう。それだったら疑われようもないじゃん。善意の一般人と思われるだろうし」


 それをどうやってやれば良いのか、と言う話だが。でも取り敢えず、向こうを出し抜くって言う方向性から今の内こっちに変えてしまえば良いんじゃないかと思わないでも無いんだけど。


「……先生」

「いい考えだと思わない?」

「取り敢えずその前に仕事をキッチリ片付けましょう。話はその後です」

「いやぁ……全くその通りでございます。仕事します」


 実際、上の空だったのがバレて『あっやべ怒られるかもしれない話題そらそ』とか考えてた訳なんで何も言えない……いやー、でも上の空だったのは、実際それが気になってたって言うのもあるけど……


「――まぁ、大分疲れてたっていうのもあるでしょうし、そろそろ休みも必要でしょうね。暇つぶしがてら食事でも取りましょうか」

「えっ」

「……何そんなに驚いているんですか。別に私だって、集中できないような状況で無理矢理やらせるほど鬼じゃないです。疲れててもやれそうな時は全力でやらせますけども」

「あっ、疲れてる時は無条件に休みって訳じゃないんだ……」


 一瞬この人にも慈悲が! とか思ったけど……というか、無条件で休ませてくれても良いじゃないですかと思うんだけど。疲れてる時ってパフォーマンスが落ちるって常識を知らないのかよ。


「疲れてる時でも、寧ろ動きが良い時はあります。健康上の問題等ありますが、睡眠不足と言う訳でも無ければ、多少の疲労状態でも頑張って頂くのは絶対にアウト、と言う訳でもありません」

「今は健康状態的にアウトだと?」

「いえ。単純に集中できない状態なのが良くありませんので」


 そっかぁ。そっち方向で判断するかぁ。


「後、食事をとらないままにする、と言うのはそれこそダメなので」

「……なんか、ホント編集さんって、今の働き方に真っ向から立ち向かう人だよね」

「徹夜も、疲労状態での仕事も、使えるものはすべて使って当然かと思うのですが」

「そう言う所だよホント」


 働き方改革? 何それ? 余りにもパワーの強い姿勢が凄いと思う。ホント覚悟決まってる。それで、自分がそれを率先して実行するのが余計凄い。普通は出来ない。


「その余りにも強い信念は一体何処由来なんですかね……? ぜひ知りたいよ本当に」

「……さて、何処でしょうね。私も知りたい位ですよ。どうしてこんな性格なのか」

「お母さん譲りとか?」

「どうでしょうね。母とは昔からそこまで仲がいいという訳でもないので。参考にした、という事はないと思います。多分ですけど」

「あ、そうなの?」


 ……そういや、この人からご家族の話とか言聞いたことは無かったな。大抵仕事の話と仕事の話と仕事の話と弾丸世界旅行のチケットと仕事の話と仕事の話と……つくづく俺、編集さんとそれ関係の話しかしてないんだよなぁマジで。


「さ、そんな話は良いので食事にしましょう」

「……まぁ良いけどさ」

「しかし、夕飯いっつもフルーツだね」

「一番安全ですからね。調理せずとも食べられる、っていう」

「別に火を……点けられない……訳じゃないん、だからっと! 点いた点いた」

「ホント火打ち石使うの慣れてますねぇ」

「慣れないと未開のジャングルとかホント地獄だったのよ?」


 最初はね……乾燥してない木材には火打石で火が付かないっていうのを知らなくて、一生カチカチしてた。本当に。狸かってんだよ。


「それと、ここら辺あんまり木材がしけって無くて、火が付きやすいっていうのもある。コレで何かしら焼けば良いんじゃんかよ」

「折角手に入れた食料が燃えて墨になったりしたら悲しくないですか?」

「……いやぁ、まぁ無いでもないけど」

「ホント、私炭とかよく食べてましたからね」

「墨食べるとかどんな生活送ってらしたんですか!?」


 あれっ、編集さんって料理もある程度できたと思うんだけど。記憶違い? 俺が完璧超人と思ってたが故の勘違いだったりした!? もしそんな悲しい生活してたとして、原因何? やっぱり金ですか!? 俺がもっと稼がないといけない系ですか!?


「……大分昔の話ですよ。えぇ」

「あ、今は違うんですね」

「そりゃあそうですよ。今は料理だって出来るようになりましたから」

「あ、出来るようにはなったのね」

「……えぇ。出来る様に()()()()()()()()()()()()ので」


 ……ならなけりゃいけなかった? ってあぁ、アレだな。一人暮らしをするにあたって出来るようになる必要があったって事かな。


アンデルセン先生ごめんなさい。


誰もやらない。

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