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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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経験を噛み砕いてみる

「……よく考えたらカンヅメではないんだけどね。この世界に来てからは何時もの事だからね俺としてはね。でもね? あのね? そんなね? 今起きた事に関する感想を言う暇も無くね? それでね?」

「『ね』構文止めなさい。それに感想を言った所で私達に対抗策を練れる訳もないんですから必要ないでしょう感想会は。先生がやれるのは、逃げ切れたことを噛みしめて作品を書く事くらいです」

「い、嫌めっちゃ決めつけるじゃん……」


 もうちょっと反省会しようよ……


「あるじゃんもっと色々! なんでバレた、のか、とかさ!」

「相手は超一流。怪物の如き天才です。私達のつたない細工でどうにか出来た、と思って居たこと自体が間違いだった。これからは更に警戒を強める……他に出来る事、あります?」

「えっ……いや……あの……その……な、ないです」

「でしょう? 私も先生も反省したのであれば、後はやるべき事に集中するだけです」


 そ、そうですか。とっても力強いお返事ありがとうございます。そりゃあ、そりゃあ言ってしまえばそうなんだけども。そんな割り切れる普通……?


「やるべき事って言うのがいつも通りの仕事なのがなんとも物悲しいけどなぁ」

「そもそも、今回の一件があって、大分お金を使いこんでしまったのです。いずれにせよ、銭を稼がねばいけないのは決まっていた事ですから。だったら今やっておきましょう」

「そ、そうね」


 よく考えてみれば、金が色々ギリギリだって言ってんのに、安いとはいえ宿に、紙も買い込んだ状態。そもそも、結構な金を細工の為に支払った事が原因だし……ため込んでいた金がなくなっているのは間違いない


「……しかし、いきなり書け、と言われましても」

「なんですか? 追いかけられていてまだ気が動転しているとでも?」

「いや普通はそうなるよ?」

「先生は小説家ですよ? どんな出来事に直面したとしても、動転したりせず寧ろ自分のネタにして昇華する位の気概を持たないでどうします」

「今回に限っては例外でも良いんじゃないかなぁ……うん」


 もうちょっとでヤバい所だったってのに。編集さんだってあんなに焦ってたのに、今は凄いケロッとしてんの。のど元過ぎれば熱さを忘れる、じゃないんだからさぁ……


「それに、先生はもう暫くは此処から出て来て貰う訳にはいかなくなりましたから、いずれにせよ最近の経験からネタを仕入れて頂かないと」

「……それは、どういう意味?」

「彼らはこれから、隣国の姫の要請で、国を立ち去る……様に見せかけ、潜伏するのです」

「あー、そうだよ。実際、人魚姫の抹殺を言い渡されてるし」

「そんな誰が敵で誰が味方中かも分からない様な混沌の渦に、先生を連れて行くなど……それこそ鴨が鍋の具材全部買って通い妻するレベル」

「おーん!?」


 鴨葱ってか!? 鴨葱ってか!? 田舎から出てきて悪いプロダクションに引っかかる、夢見がちな無垢な少女って事か!? クソッ、なんて……なんて的確な表現なんだ! 実際鴨葱なのは否定できないのだ俺は! 俺は社会適合率高いかって言えば凄い微妙だし!


「ギャンブルにも空気で流されて、勢いでやっちゃうし……!」

「海外旅行あんなにしてる筈なのに、どうにもしっかりしてないというか。ゲームで締め切り忘れちゃうとか、それなのに、なんか騙されやすそうというか」

「だ、大丈夫。闇金には手を出してないから……多分だけど」

「そこで闇金が出てくる時点でダメだと思います。先生」


 えっ。人間、闇金に手を出さなければギリギリ大丈夫だって聞いたけど、違うの? なんか物凄い哀しい顔されてるんだけど……えっ、俺なんか間違えちゃったりしたかなぁ。


「えぇ。そうですね。闇金に手を出してないから大丈夫ですね」

「あ、あの……はい。そうですね」

「という事で、私は一人で町に行ってきますので先生は良い子でお留守番しててくださいね」


 あっ、編集さん的には今のはアウト判定だったんですか。はい。スイマセン。私は大人しくここら辺でカリカリ物語を書いてますね……なんでこんな俺、しょぼんとした態度してるんだろうか俺は。本当に子供みたいな扱いされてるやん


「さて、町に行く前に、先生が書く題材を決めないといけないですけど……何にします? と言っても、先生としては凡そ方針は決まってるように見えますけど」

「……分かります?」

「分かりますよ。そりゃあ」

「さっき動転してる、って俺自身が言ってたってのに?」

「動転していたとしても、それはさっきまで追われていた事に対してで、貴方は小説家ですからあらゆる事をネタにして欲しい、というのを、実行は出来ていた模様で、良かったです」


 まぁ、あんな逃走劇繰り広げといてネタにしないってのは、流石にないよね。編集さんの言った通り、どんな事でもネタにする気概を持たないとって言うのは正しいし。もう凡そは固まってるよ構想だって。


「後は、どんなとっかかりを作るか、だなぁ……」

「そんな考えなくても、そのまま、ちょっと脚色を加えただけで受けるとは思いますけど」

「幾らなんだって、そんなクオリティの低い作品出せる訳ないだろうが。俺だって一応小説家だぞ。やるなら他人様に見せられる作品を書くってんだ」

「……そう言う所、本当に先生らしいですよね。下手に妥協しないって言うか」

「稼ぐってアンタが言ったんだから、妥協はできないだろうよ」


 ……なんだよ。なんでこっち見てるんだよ。


「今、凄い頑張っているってのに。文句でもあんの?」

「ないですよ。やれる事をやろうとしてらっしゃるので、良かったなと」

「子供を褒めてるんじゃねぇんだぞ……で、取り敢えず、今、自分が考えてる構想聞いて貰って良いですかね」

「えぇ。お任せください。ダメだったら徹底的にこき下ろしますから」

「あー最後は要らねぇなぁ……マジで……」


 こき下ろされるの辛いんだよ。まぁ、この人がダメな所をズバズバ言ってくれるから良いモノが書けるって言うのは間違いないんだけどもさ……あーしかし、こうして頭の中で物語を組み立てると改めて思い知る、トンデモナイ怪物。


「騎士の頭の回り方は、マジで戦っちゃいけないレベルだよなぁ」

「だからその辺り気にしても仕方ないと」

「いっそ、向こうを味方に出来りゃあなぁ……もっと楽な話になるんだけどなぁ」

「無理でしょう。私達の目的と、彼の目的は真逆の方を向いているのですから」


 ……真逆の方向を向いてる……本当にそう、なのか? 真逆なのか? 真逆と言えるのか? 彼奴らはあくまで人魚姫の邪魔をしたいだけだ。こっちは物語に見所を付けたいだけなんだ。それは本当に噛み合ってないのか……?


「……もうちょい考えてみてもいいかもな」

「物語の構想を?」

「それも」


アンデルセン先生ごめんなさい。


その結果、見えてくるものがあるかもしれない。

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