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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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お前は作者なんだよぉ!

「……君達もつくづく大変だねぇ。冤罪を被せられかけたかと思えば、謂れのない罪で追いかけられると来た。前の一件もそうだけど、本当に兵隊と言うのは人の話を聞きやしない」

「すみませんご迷惑をかけて……」

「いいよいいよ。別に。君達を乗せて行ったところで、何のお咎めもありゃしないからね」


 ……こうやって荷馬車に揺られんのも暫くぶりだなぁ。ゴトゴトしっかりと揺れるから若干腰が痛いのも変わってない。商品が結構減ってるから、若干荷台が広くなってるのが違いと言えば違いかなぁ……なんて。


「……おぉ、やっぱり居るなぁ。ほら、荷物の中に紛れて」

「はい。ありがとうございます……大丈夫ですか?」

「大丈夫。安心して乗っててください」


 で、編集さんの懸念が当たったと。しかし残念。俺達が怪しまれてるなら、それこそ細工を仕掛けてる間に町全体を包囲しかねない、って言う話。で、そこを突破する為に、前に乗せて貰った商人さんの荷台を利用させて頂いたのさぁ!


「――おや。貴方達は隣の国の……どうしたんですかコレは」

「どーも。いやぁ、お叱り受けるの覚悟で、ウチの上司が町の入り口に立って、ある人物を探せって言うんですよ……滅茶苦茶ですよねぇ。ここは自分達のシマじゃないってのに」

「それはまぁ、大変ですねぇ」

「長い事は出来ませんよ。全く、王子が折角頭下げてくださったのも無駄足になりかねない」


 ……そうだよなぁ。ここ、アイツ等の国じゃないのに、好き勝手やってるんだよなぁ。しかも本来の流れより、より激しく。本来、人魚姫を取り逃がした後は、一旦自分達の身分を隠して潜伏する筈なのに。隠しても居ないって言う。


「そんなに重要な人なのかい」

「上司曰く『疑問が残る相手。まだ動けるうちに出来るだけをしておきたい』って言ってましたけど……幾らなんでも気にしすぎじゃあないかと思うんだけどねぇ」

「ほーん。お偉い人の考える事は分からないねぇ」

「本当になぁ」

「ま、頑張ってください。私は商売が終わって気楽なもんです」

「なんだい自慢かい!? ったく厭味ったらしい、いっちまえいっちまえ!」


 ……疑問が残るってだけでここまでやるって怖すぎるんだけど。


「……良し。もう大丈夫だよ」

「そうですか。ありがとうございます」

「何処まで乗せて行けばいい?」

「もうちょっと先で。着いたら言います。その後は、自分達の足で行くので」

「はいはい。しっかし、隣の国の兵士に好き勝手させて、この国の兵士は一体何をやっているんだか……? 暇してるとか言ったら笑い話にもならないんだが」


 多分気付いてるけど、余りの無法で呆然としてるだけだと思う。だから、その、多分もう少し経ったら出てくると思うので、待ってて上げて欲しい。というか、俺がこの国の兵士だったら、余りの無法に怒り通り越してもう呆れるレベルだと思うし。


「気づかれてませんか?」

「あぁ、大丈夫だとも。向こうだって、商人の荷馬車をいきなり調べる程、礼儀知らずじゃないだろう。まぁ、今は調べた方が良い訳だけど」

「やめてください、冗談でも……」

「はは、ゴメンゴメン。兎も角安心して欲しい。序に、紙か何か買ってくかい? 折角だし安くしておくよ? 売れ残りだし」

「あ、それはありがたいです。おいくらですか」


 うわー商魂たくましい。この状況の人にもちゃんと欲しがるであろう物を売りつけようとするじゃん。しかも今お金は少ないからお安めっていう文句に弱いぞ。いいぞやれ。じゃない。もうちょっとタイミングと言う物を考えてもいいと思う。


「これくらいで」

「随分お安いですね。幾つありますか?」

「えっと……残りは、これ位かな。うん」

「全部買います」

「ちょちょちょちょちょちょぉおおい! そんな軽い勢いで買うなぁ!? 金欠ぅ!?」


 あ、あのアンタ! そんな無鉄砲に! 資金を! 資金を! そんなガッツリ紙を買い込みますか普通!? 全部って言って良いのは富豪だけよ!?


「なんでそんな買った!? 言え!」

「先生の為に書く為の紙が必要ですからね。幾らでも買えますよ」

「だからって全部!? 先生だってね! お金の心配位しますわよ!」

「……先生?」

「「いえなんでもありません、えぇ本当に」」

「そ、そうかい。まぁ別に詮索するつもりはないけど。あんまり騒がない方が良いんじゃないかなとは思うよ? まだギリギリ声が聞こえる位の距離だから」


 ホントスイマセン、その通りですね……あっぶね。ちょっと漏れちゃいけないもんが漏れてた。俺達はここでは姉弟なんだから。


「……聞こえてました?」

「いや、聞こえてるようには見えないから大丈夫。町の人も結構いるし、余程耳を傾けてないと聞こえないだろうから、別に騒いでもそこまで気にする事じゃないと思うけど。まぁ、念のためね」

「はい。申し訳ありません……あ、そろそろ」

「ん? ここで良いのかい?」

「えぇ。直ぐに横に逸れて森に入るので……」

「君達何処で寝泊まりしてるんだい。まぁ、分かった。速度を落とすから、その間に」


 っと、もうか。あーホントに紙買ってるよ。結構高い、って言う話なのに、アレだけ買って一体幾らしたって言うのか……こ、これは下手な作品書いて紙の無駄遣いをしたらどんな事を言われてしまうのか。コワイ、全力を尽くさねば。


「……よし、今の内に」

「お世話になりました。行きますよ」

「うぃっす……あの、本当にありがとうございました……」


 なんでこんな危ない橋を渡ってる時に俺はそんな心配をせにゃならんのか、と言う気持ちはないでもないが。もう逃げきれちゃって来るとね、先の事を考えてしまう訳なんだよ……結局の所こういうピンチの後にも俺にとってのピンチが待ってる訳でして。


「……とはいえ、良かった」

「何がとはいえかは分かりませんけど、えぇ。本当に助かりました。あそこで声をかけられたら本当に詰みですから、念には念を入れて置いて正解でしたよ」

「そうだなぁ。ま、これで当面の危機は去ったんだからよかったよ」

「いえ。まだです。少なくとも、暫くは町には近寄れませんよ」


 ……彼らが居たら確実にまた声かけられるからなぁ。危ない危ない。ったく、止めて欲しいよね本当に……


「その間は」

「……すぅぅぅうううう……」

「ため込んでた食料が有りますので、新作を書くためにカンヅメが出来ますね」


 まぁ、紙買い込んだからそりゃあそうだろうね! 分かってた!


アンデルセン先生ごめんなさい。


物語を書くんだよぉ!

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