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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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相手を『見る』

「えっと、ごめんなさい……本当に」

「い、いえ。構いませんけど……貴方こそ、大丈夫ですか? あの、鳴ってはいけない類の音がガッツリ響いていましたけど?」

「あぁへーきです。何時もの事なんで、ははっ。えぇほんとに」

「何時もの事なんですか!?」


 まぁ割と。ちょっと手段が直接的過ぎるだけで、ちゃんと注意してくれてるだけだから。それだけだから……微妙に未だ首痛いのは間違いないけども。


「それで、その。俺に何か、聞きたい事あるんですか?」

「あーいえ……そうです、ね。そうです。聞かないといけない事があるのですが。昨日、貴方は何方にいらっしゃいました?」


 まぁ普通にあの部屋に行きましたけども。でも昨日編集さんは、確か……俺を親戚に任せたとか言ってなかったっけか。違うか? 親戚、だったか? で、でもここで迂闊な事言うのは……良しここは万能の意味に仕えるあのワードを!


「え、っと……あの、その……おじさん達に、家まで、連れて行ってもらいましたけど」

「そうですか。お家の場所は?」

「あー、えぇっと、ですね」

「――ここから結構遠いです。一日で帰れる距離じゃないですから。それで、知り合い、に預けたんですよ。信頼できる方々だったので」


 あ、そうか知りあいか……あっぶね。迂闊に親戚だとか言ってたらマジで危なかった! 流石編集さんだ。完璧なタイミングで差し込んでくれた!


「ほう、一日で帰れる距離じゃないのに……弟さんは今ここに居る、と?」

「えぇ、そうなんですよ」


 とか思ってたら即刻失言!? マズいんじゃないの流石に!? ちょ、ちょっと待って、お嬢さん、そうなんですよって肯定したら疑われるやんけ!? しかも嘘吐いたそっちの方が余計に疑われるやんけ!


「――まさか、ベッドの下に隠れているなんて……」

「ベッドの下に?」

「昨日、貴方がベッドの下を覗き込んだでしょう?」

「えぇ、まぁ……」

「そこにこっそりと潜り込んで隠れて居た挙句、眠りこけてしまったようで……全く気が付活きませんでしたよ。知り合いに預けた、と思って居たのが。この子ったら、私にベッタリな物で、知り合いを撒いてまで、私の所へ」

「!?」


 ってまたそれかい! く、クソが。俺は何処まで行ってもシスコン扱いかよ……あー想像できてしまったあの酒場のおばちゃんに優しい微笑みされる景色が。地獄だよ地獄! 罵倒された方が未だマシだけど、あの器のデカいおばちゃんなら笑って流してしまう気がする!


「――という事は、昨日私が見たのは、やはり?」

「おや、気付いてらしたんですか?」

「旅をしている人の頭陀袋にしては大きいと思ってしまったので、こうして聞きに来たのですよ。万が一にもアレが弟さんだった場合、隠し事をされたという事なので」


 うーん、舐める様に見回されても、全くもって表情を変えない編集さんの鉄面皮よ。流石と申しますか。やっぱり肝座ってんなぁ。俺だったら多分、ビビっちゃって、何も出来なくなっちゃうと思う。いやそれは言い過ぎか。逆切れくらいはするかな。アレ? 悪化した……?


「あら、私を疑っていらしたのですか?」

「えぇまぁ。あんな化け物が居る現場にああして迷い込んでしまった……と片付けてしまえばそれまでですが、しかしあらゆることを疑わねば仕事に差し支えが出てしまいますから……まぁ念のためですので。今回で殆ど疑いは晴れましたよ」


 うーん疑い方がザ・暴力装置の騎士団じゃないんだよなぁ……いや騎士団が暴力装置って言うのも問題だけど。実際昔はそう言う騎士団一杯あったし。怖い話だよ。いや逸れた。問題はそんな集団の長の頭脳の使い方がドラマの刑事レベルな事なんだよ。


「それでしたら本当にありがたいです」

「……それと、お節介かとは思いますが」

「なんでしょうか」

「無理をなさらないで宜しいですよ。私の事は、恐ろしいでしょう? そんな気丈に振舞わなくても、大丈夫ですよ。寧ろ、素をさらけ出して下さった方が、双方にとっても良いと思うのですけども……」

「っ……本当に余計なお世話でございますね。失礼いたします」


 あちょっ、あのすいません首を掴んで引っ張らないでください。グイグイしないで。首が痛いです。許して。あの、というかせめて前を向かせて。こっちを見てる騎士さんとずっと視線が合ってるんですって!


「……ったく、誤魔化し切れたってのになんでそんな焦る必要が」

「誤魔化し切れてませんよ」

「えっ……」


 そ、そうなの?


「全然、普通に、理由とかもいい感じで入ってたんじゃないのか? 少なくとも、不自然には感じなかったし。寧ろ、納得したように見えたよ。俺には」

「えぇ。私としても、良い感じに言い訳が出来た、と思って居ました、けど」

「けど?」

「……私と先生の話す様子を見ていたんでしょう、彼は。そこから違和感を覚えていたんだ、と思うんです……多分、ですけれど」


 ……ちょっとちょっと待ってくださいなお嬢さん。全く意味が分からん。話す様子を見てたってどういうこったよ。全く分からないんだけど。


「私と先生との間の態度。彼は私を昨日の時点で疑っていて……そして、話している内に違和感を覚えたんでしょう」

「どこでだよ。俺にはそんな、可笑しな部分なんて……いや、首ぐきってやった所か? 確かに可愛がってる弟にする事じゃないもんなぁ。という事は、編集さんのミスなのでは」

「――ミスなのはそうですが、そんな単純な物ではありませんよ」


 た、単純ですか。そうですか、良い線行ってると思ってたんですけども。違うんですか。偶には推理小説みたいにカッコいい事やってみたかったんですけども……違うんですか……


「さっき、私はずっと彼と話していましたが……彼は、私と話す中で、私の顔をよく見ていたんですよ。そして……昨日もそうだった」

「昨日は部屋調べてただけだろうよ」

「彼にとって、それはあくまで、適当な言い訳だったのではないでしょうか」

「なんで言い訳なんかする必要が?」

「……私を観察する為に。弟を、アレだけ兵隊相手に怯えていた私が、兵隊が夜に訪ねてきて普通に接しているのは、明らかに不自然でした。油断、してました」


 ――今さっきも、編集さんはあの騎士相手に、実に堂々とした態度だった。アイツはそれを観察してた、って事か……? そ、そう言えばさっき、素がどうとか……!?


『無理をなさらないで宜しいですよ。私の事は、恐ろしいでしょう? そんな気丈に振舞わなくても、大丈夫ですよ。寧ろ、()()()()()()()()()()()()方が、双方にとっても良いと思うのですけども……』


 ……怖っ!?


アンデルセン先生ごめんなさい。


バレテナーイ(大嘘)

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