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ポンコツ作家と有能編集、自世界を行く  作者: 鍵っ子
二章:ポンコツ、新天地に立つ
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首をグッとね

「――はぁ、結局疲れが取れてしまっているのが、流石に編集さんの気遣いがしっかりと生きていると申しましょうか……」

「ふふん」

「スッゴイドヤ顔してんなぁ」


 無表情でもドヤ顔って言うのは分かるから凄いよなぁ。ドヤ顔って言う言葉が出来たのも頷けるよねぇ。明らかに、喜怒哀楽、何れにも当てはまらない絶妙な表情なんだよね。後凄い、イラっとはする。恩恵を受けた俺としては何も言いようがないけど。


「さ、朝一で起きたんです。ねぐらに帰りましょう。これ以上この街に留まる理由もありません」

「また微妙に固い布団に逆戻りか……儚い夢だった……またベッドで寝たいなぁ」

「先生が頑張って稼げば良い宿屋に泊まれるようになりますから。気張りましょう」

「そうねぇ……アレ? 俺が稼ぐのってそう言う理由だっけ……?」

「違うと思いますけど。まぁ目標が沢山あるのは良い事かと思います」


 ……良い宿屋に泊まりたいから必死に書くって、昔の事を思い出すな。ホント、まだまだ駆け出しで、編集さんにも未だ出会ってなかった頃。良い宿屋、っていうか、もっといい部屋に移り住みたいから、凄い必死こいて書いて……その直ぐ後辺りだったかなぁ。


「――どうされました先生」

「あーいや、昔の事を、ちょっとな。なんでもない。お待たせして申し訳ない。行こうか」

「もしかして、先生の担当を私がし始めた頃のお話ですか?」

「どうして分かったんですか!?」


 俺ひとっこともそんな事話してなかった気がするんだけども。


「そりゃああの話の流れだったらその頃の事を一番思い出すのではないかなとは思いました。それ以前の事は全く知りませんから、それじゃなかったらちょっと恥ずかしいな、とは思いましたけれども。まぁそれ以前も知りたくないと言えばウソになりますけど」

「めっちゃ当然の帰結……いや待って、それ以前知りたいの?」

「編集と作家は一心同体。人生全てを知りたいと考えて当然かと?」


 そうかなぁ……人の人生全体をガッツリ知るのって一心同体に必要なのかなぁ。そこまで一心同体になるのが作家と編集には必要なのかなぁ。俺そんな極まり過ぎた一心同体聞いた事も無いんだけどなぁ……


「……ダメだ。これ以上話すと脱線しかしない。行こう」

「分かりました」




「……昨日アレだけの騒ぎがあったというのに、随分と人通り多いですね」

「そりゃあ乱闘の一つ、大捕り物の一つ、超人の一人くらいで一々休む程、軟じゃないだろうよここら辺の住人だって」

「最後の一つが余りにもアレですが……まぁ、間違ってませんね」

「因みに編集さんは休みますか?」

「先生に仕事をさせる為ならば全てを投げ捨てて戦う所存です」

「ウーン編集さんは休んでも全然構わないと思いますけどもどうなんでしょうか?」


 頼もしいけどね? ……あっ、あの辺りちょっと焦げてる。って、あの辺りも焦げてる。いやめっちゃ焦げてんなぁおい!? 本当に容赦なく焼いたなあのチャッカマン……俺が書いた事とは言えもうちょっと力抜いて良いんだよ。


「ホント、ちょっとした放火魔だよなぁ」

「上の方も焦げてますよ。凄いですねー、ホント……?」

「あーホントだ。丸焼きやんけ」


 というか、そうなるとあの辺りまで油が跳ねて、火の粉もあの辺りまでガッツリ跳ねないとそうはならんぞ……俺達が見てたよりも全然凄かったんだなぁ、昨日の捕り物って。兵士の皆さま大変お疲れさまでしたって事で。ん?


「どしたの? 前ずっと見て」

「……」


 あの、ちょっと待って、見てるって言うかもう睨んでるんじゃん。何を見てるの? ちょっと怖いん……だけ……ど……


「おや、またお会いしましたね」

「……えぇ。本当に」

「弟さん。戻ってらっしゃったんですね。お話、聞かせて頂けると」


 どうしてこんな所にと言うかガッチガチに鎧き込んでるって事は仕事だよななんでそんな気合入れてるんですか俺は無害な一般人レベルなんですけど待って待って待ってどうするべきだいやもう決まってる全力だ戦略的撤退!


「それではっ!」 

「えぇしばしお待ちください」

「ぐぇえっ!?」


 こっ、この野郎!? 俺が捕まるのは危ないとか言っておいて逃げ出す前に首根っこを! やめろっ! やめろーっ! まだ犯罪者になりたくなーい! 俺はッ! 無実ではないがなんか捕まえられるような事はしてないと思うぞ!


「(落ち着いてください)」

「(何を落ち着けと言うのだねこの状況で!?)」

「(逃げ出したい気持ちは分かりますけどしかし、ここで逃げ出すのは逆効果。こうなった以上は話を聞く方が穏便に済むと思います)」

「(けっ、けどなぁ)」

「(迂闊な事言わない様に私もサポートするので。ここは踏ん張り時ですよ)」


 くっ……! 仕方ないか。確かにここで逃げ出す方が怪しいとしか言えない……いや、もう逃げだそうとした後だけど! でも、まだまだ立て直せるはずなんだ。しかし、どうやって切り抜けりゃいいんだろうなぁ……えぇ当たって砕けろ!


「エ、エート、オハナシトハナンデショ(グッギィ)グベッ」

「……すみません。もう少しお待ちください」

「……あの、ですね。大丈夫ですか。弟さんの首が、あの、えっと、あらぬ方向へ、向かって、らっしゃいますけれど……と言うか、音が、グキョッ、って。鳴っちゃいけない音が」

「お気になさらず。大丈夫ですよ。弟は結構頑丈なので。そう簡単に壊れたりしません」

「え、いや、明らかに、その、壊しに行ってますけど、あの、えっと」

「ちょっとお待ちください」


 ……当たってへし折られた……というか……首を、流れる様に……へし折るその手練手管……其方さん、あの、何処かの特殊部隊に、所属してらっしゃったんですかね……


「(何トンデモない大根してるんですか。真面目にやって下さい)」

「(だからってくびおるかふつう……)」

「(折ってません。ぐきってやっただけです。本当に首折る勢いなんてする訳ないです。見かけだけですよ基本的には)」

「(み、見かけだけでそんな音、なるんだ……)」


 と、とはいえ大根だったのは紛れも無いし。ここは仕方ない。改めて仕切り直そう。幸い、いきなりの暴挙で相手も怯んでる。付け入るなら今だ。


アンデルセン先生ごめんなさい。


直ぐに相手は黙るよ! 皆は真似しないようにしようね!

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