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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 16

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雨上がりは楽しめそうだね

 ユニバンス王国北西部自治領・帝国領との最前線



「最近同じことばかりで本当につまらないね」


 帝国軍が攻めて来ては軽く刃を交えて退却していく。

 まるで何かを確認しているような時間を稼いでいるような……消極的でつまらない。


「ヤージュ」

「何でしょうか?」

「今日も敵が来て帰ったよ」


 飽きた様子で頭を掻く相手に、参謀として従軍している彼はため息を吐く。


「たぶん相手は本隊の到着を待っているのでしょう」

「女狐ね……」


 欠伸をしながら山と積まれた骨付き肉に手を伸ばし、彼女……トリスシアは骨ごと口に運ぶ。

 ボリボリと鈍い音を発しながら骨ごと咀嚼するのだ。


「あれは頭でっかちの小娘だろう? あれが来たからってこっちが負けるのかい?」

「ですが彼女が軍師となって10年……11年ですか。帝国の版図が拡大した事実は変えようのない事です」


 紅茶の準備をしながら彼は言葉を続ける。


「実家の強い推薦で軍部に捻じ込まれ、卓越した才能から他国を侵略した才女です」

「才女ね……」


 呆れながら肉汁で汚れたペロペロと指を舐め、トリスシアは相手に顔を向ける。


「アタシが聞いた話だと、狂った女だって聞くけどね」

「事実ですよ」


 彼女の近くに紅茶を置いてついでに手を拭くタオルも置く。

 ヤージュは自分の分のティーカップに手を伸ばした。


「実家で保護されていたので難を逃れたようですが……11年前に起きた集団発狂事件の1人であり、屋敷に居たメイドなどを複数殺害したとか」

「そんな狂ったのが良く生き残ってるね」

「ええ。本当に彼女の両親が彼女を溺愛しているのですよ」

「はんっ! 娘の為ならメイドの命なんて虫ほどの価値って訳かい」


 今にも唾棄しそうな表情をし、トリスシアはカップを掴んで一気に飲み干す。


「アタシの記憶が確かなら、ユニバンスのあの糞王子がその手の事件を調べてたね」

「ええ。アルグスタ様は何でもユニバンスではあの事件の第一人者だとか」

「……女狐のことを知ったらやって来るかね?」

「難しいでしょうね」


 彼女の企みに気づき、ヤージュは呆れ顔をする。


「まず国元が彼らを手放しませんよ。そして運悪くそろそろ雨期も終わりです。王都近郊にドラゴンを集めて退治しているユニバンスとしては、あの夫婦を他国に送り出すことは出来ません」

「一応ここは同じ国に属する自治領って扱いだろう?」

「それでもです。彼らが行くことを望んでも周りの貴族たちが絶対にそれを許さない。それに国王であるシュニット様も許さないでしょう」

「はんっ! つまらないね」


 つまらない戦場で欲求を溜め込んでいる彼女の企みは簡単だ。

 ユニバンス王国に属するドラゴンスレイヤーを呼び寄せ、それと戦い遊ぼうと企んでいるのだ。


「ならアタシはこのつまらない戦場で釘づけかい?」

「仕方ありませんよ」


 主君であるキシャーラからの指示は簡単な物だ。帝国軍を引き付け時間を稼ぐ。

 一か所に兵を向けていれば広大な領土を持つ帝国は周りから侵攻を受ける。

 時間さえ稼げば帝国は必ず退却するのだ。


 何度もして来た説明をトリスシアにまた繰り返し、ヤージュは彼女の分の紅茶を淹れ直す。


「それにたぶん雨期が終わると貴女の暇は解消されますよ」

「本当かい?」

「ええ」


 改めてカップを彼女に差し出すと、また一息で全てを喉に流し込む。


「味わってください」

「ただの飲みもんだよ」

「それでもです」


 空のカップを受け取りまた紅茶を淹れる。


「で、楽しめる理由は?」

「知らないのですか?」

「何がだい?」


 ゆっくり振り返り、ヤージュは帝国が誇っていたドラゴンスレイヤーの"1人"を見る。


「帝国の女狐は、貴女が来るまで帝国のドラゴンスレイヤーだったんですよ」

「……本当かい?」

「ええ」


 カップを置くと、続きを聞きたいらしい彼女は手を伸ばさない。

 クスリと笑いヤージュは本当に子供のような素振り見せる彼女を見つめる。


「帝国のドラゴンスレイヤー。それが現軍師であるセミリアの経歴です。そして彼女が用いたその方法は魔法であり……内容は共食いです」

「共食い?」

「ええ」


 軽く頷いてから、ヤージュは凄惨すぎる内容から帝国内では禁忌扱いされている過去を口開く。


「魔法で支配したドラゴンを使役しドラゴン同士を共食いさせる」

「醜悪な退治方法だね」

「ええ。それも彼女はとにかく血を好むので……共食いさせるまでにも色々とやりましてね。だからこそ帝国は異世界召喚を用いて貴女を召喚したのです」

「アタシは間違いで呼ばれたと聞いたけどね」

「間違いと言ったのは、もっと従順な兵を呼び出したかったみたいですよ」

「はんっ! 従順ってことは自分で何も考えられない馬鹿か、気弱っていうのが相場だよ。そんなドラゴンスレイヤーが使い物になるわけ無いだろうに」

「私もそう思いますよ」


 素直に認めヤージュはようやく自分の分の紅茶を淹れ直した。


「それであの女狐は過去の方法を用いてアタシたちを殺しに来るって?」

「ええ。たぶん」

「そうかい」


 犬歯を剥いてトリスシアは笑う。


「なら雨上がりは楽しめそうだね。本当に」


 また肉の山に手を伸ばし、食人鬼は骨ごと食らう。

 休む時間は得られそうになく……ヤージュはまた紅茶を淹れだすのだった。




 ブロイドワン帝国領内・街道



 彼女は特別にあしらえた馬車の中で横になりのんびりとした時間を過ごす。

 次の戦場に向かうまでにはまだ時間を要するが、それでも到着する頃には雨期も終えているはずだ。


《移動だけで手いっぱいのドラゴンたちも……雨期が終われば十分に動ける》


 その手の中に集まりつつある調査報告書を眺めセミリアは笑う。


《元大将軍の最強の手札……異世界から呼び出した食人鬼。でもこれには決定的な弱点がある》


 余りにも簡単すぎる攻略方法に、帝国軍師は気怠そうに髪の毛を掻き上げた。


「最強の手札が1枚なら2か所から攻めたらどう対処するのかしら?」


 もしそれでも対処するなら3か所に、それでも対応するなら4か所へ……物量戦を得意とする帝国の強みを発揮すれば、小国の出城のような土地など容易に落とすことなど出来るのだ。


《さて……さっさと行って片付けてしまいましょうか》


 クスクスと笑い続け、セミリアは戦いの後に思いを馳せた。




(C) 2021 甲斐八雲

 新年1発目は…まさかの主人公不在! 狙った訳じゃなく偶然です。本当です。

 そんな訳で帝国の前ドラゴンスレイヤーである女狐さんとオーガさんのバトルが…その内始まります。たぶんきっと?



~ご挨拶~


 新年あけましておめでとうございます。

 今年もよろしくお願いします。


 今年から投稿パターンを少し変更します。

 毎日投稿は継続しますが…どう変わるのかは明日分かります!

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