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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 16

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行こ、う

(1/2)

「聞いてよナガト? 最近ノイエが自重って言葉を忘れているんだ」


 そもそもノイエに自重があったかは謎だが。

 出会った頃から……うん。可愛かったから良いです。あの頃から変わらず美人だしね。


「にいさま。だいじょうぶですか?」


 トントンと後ろに居るポーラが僕の腰を叩いてくれる。


 本当に優しい子だ。最近ファシーも自重を忘れだしたから、現状僕の傍で癒しの存在はポーラだけだ。


「大丈夫だよ」

「ほんとうですか?」

「うん。腰がね痛いだけだから」

「……」


 トントンと腰を叩いてくれていたポーラが擦るような手つきに替わりマッサージしてくれる。


「本当にポーラは良い子だね」

「ふつうです」

「うん。その普通を普通のままで居てね」

「はい」


 明るくて元気な声に癒しを覚える。


 ノイエの胸騒ぎをどうにかしようとしたら、彼女に襲われ確り絞られた。

 朝から燃え尽きたけれど、お仕事は待ってくれないのでお城へ向かう。


 雨期に入ってから僕の登城時刻は確実に遅くなっている気がする。

 だって仕方ない。ノイエが。ノイエが……


「にいさま」

「ん?」

「あそこにだれかいます」


 グイグイと服を引っ張ってポーラが僕の気を引く。

 現実逃避していた意識を元に戻して視線を向ければ、ポーラが指さす場所に何かが転がっていた。


「きっと行き倒れだろうね。可哀想に」

「はい」


 ナガトに止まって貰ってポーラと2人で手を合わせる。

『南無南無……』と心の中で呟いて、躯は放置で自然に還すのがこの世の常だ。


「せめてもう少し茂みの向こうに捨てておこう」


 もう少しで王都の北門だったのに無念だろうな。


 軽くナガトのお腹を蹴るが……この馬は全く僕の指示に従ってくれない。

 諦めてポーラにお願いする。


「おうまさん。あっちに」

「ヒンッ」


 ひと鳴きしてナガトはポーラの指示に従う。

 街道を逸れて脇に入り転がっている躯を咥えると、ナガトは軽々と持ち上げる。


「……ちょっと痛いんですけどっ! って!」


 茂みの向こうに躯が消えた。


「……行こうか?」

「にいさま?」


 危険回避スキルを所持していないポーラは、どうやらスルー出来ないみたいだ。

 出来たら真っすぐ北門に向かいたいところだが仕方ない。だってポーラは良い子だからだ。


 とはいえ対応に悩んでいると、ガサガサと音を立てて奥からナガトが投げ捨てた躯が歩いて来た。


「何で……疲れて寝ていたのに……」

「あれ?」


 出て来た人物の声に聞き覚えがある。

 ちょっと前に聞いたような……誰だっけ?


「って見つけましたよ!」


 躯がこっちを指さし絶叫した。


「アルグスタ様っ! 本当に貴方と言う御方はっ!」

「あ~。ごめん。何かここまで思い出してるんだけど」


 トントンと自分の手で喉仏の上を軽く水平に叩く。

 もう少し刺激があれば完全に思い出せそうなんだけどね。


「って本当に酷過ぎますっ!」


 ボロボロと涙を溢れさせて躯……どうやら女性らしい彼女が吠える。


 見た感じは若い女性だ。

 凄くボロボロで緑色の髪に枝とか刺さっているな。ナガトのせいか。


「あっと……もう一声」

「私ですよ! 共和国で一緒に!」


 共和国?


「自分そんな所に行ってませんが?」

「行きましたよね! 行って奥様と一緒に破壊の限りを尽くしたじゃないですかっ! 私は全部見て来たんですからっ!」


 全部? あれを全部見ていたと?


「実は廃墟好き?」

「廃墟にしたのは貴方と奥様ですからっ!」

「とんだ言いがかりだな。僕は共和国には行ってないのです」

「行きました! あんな大きな鳥とか呼び出してっ!」


 うむ。そう言うことか。


 全力で腕に仕込んだプレートを発動させて重力玉で相手を黙らせる。

 重さマシマシで……完全に気絶したな。


「にいさま?」

「うむ。たぶん何処かの貴族の嫌がらせだろう。捕まえてユニバンスのお城に居るという、伝説の拷問官に頼んで背後関係を吐かせよう」

「……」


 政治にはまだ疎いポーラは、首を傾げているが何も言わない。


 まさか無事に生きて帰って来るとは……正直渡したお金を持って、共和国の親戚の所にでも駆け込むと思ったんだけどな。


 エレイーナは一応密偵衆の所属のはずだから、近衛に引き渡せば良いのかな?


 問題はその近衛のトップが現在僕と言うことぐらいだけど。




「大丈夫?」

「は、い」


 震える足を動かし、ファシーは真っすぐ歩き続ける。

 向かう先はいつもの中枢に存在する椅子のような突起では無く、その奥に置かれている宝玉を動かす平らな石のような場所だ。


 ノイエの中枢は現在3つの転移する術がある。


 ノイエの体を使い外に出る前からある石の突起。

 それから刻印の魔女が置いて行った右目へと移動する平らな石。

 魔女がエウリンカに作らせた宝玉を使うための平たい石は、刻印の魔女が置いて行った石を模した物だ。


 震える足で必死に歩くファシーが向かっているのは、宝玉を使う石だ。


 本能的に恐怖を、自身の罪を思い出し震えているファシーは今にも吐きそうな表情をしている。

 どうしてか分からない。けれどノイエに会うと思うと怖くて仕方ないのだ。


 前は……いつもノイエが会いに来てくれた。


 独りぼっちで動物たちと過ごしていると、ノイエは輝かんばかりの笑顔で駆けて来た。

 一緒に遊んだ。楽しかった。あの時だけは……嫌なことを全て忘れられた。


 自分が持っていない物を全て持っている少女は、本当に明るくて幸せそうだった。

 憧れもした。自分もあんな風に振る舞えればと何度も何度も思ったものだ。


 石の前で足を止め、ファシーはギュッと自分の胸の前で手を握る。

 ガクガクと全身が震えて止まらない。


 怖い。けれど……どうしても逃げたくない。


「行こ、う」


 覚悟を決めてファシーは一歩踏み出した。




 気配を消したファシーの様子に、セシリーンは何とも言えない気持ちになる。

 自分よりもあんなに小さくて不安を抱えたファシーが、自分では出来ないことをしてみせたのだ。


 だから意識して聴覚を国の外へと向ける。


 ノイエとファシーの会話を……聞きたくはなかった。


《私はファシーよりも臆病なのね》


 再確認しセシリーンは寂しく息を吐く。


 怖い。けれど……立ち止まっていたら何も変わらない。


 ゆっくりと口を開き喉を震わせる。

 ただ一音を発するだけでも吐きそうになるが、それを堪えて喉を震わせる。


《負けられないわね》


 自分より強い少女にセシリーンは初めてそう思った。


 あの子にだけは負けたくないと。




(C) 2021 甲斐八雲

 大半の人が忘れているであろうエレイーナの帰還です。

 彼女が共和国を脱して帰国したのかは…涙無しには語れませんが、とりあえず割愛の方向でw


 恐怖に震えながらファシーはノイエの前に出ることを選ぶ



~ご挨拶~


『朝から投稿だと? 作者め…ミスったか?』とか思いましたか?

 ご報告通り投稿パターンの変更です。増やすことにしましたw


 現時点ではとりあえず毎日投稿を継続していきます。

 で、毎日とかは無理ですけど一定のペースで2話投稿します。


 そんな訳で今日は夜も投稿しますので、お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しみにしてます
[一言] 扱い雑でミシュかと思ったらそうでもなかったでござるの巻
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