会稽にて
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彭城を出発した韓信と鐘離眜はひとまず会稽へ行くことになった。
会稽で桃花を回収して改めて楚の王族を捜すつもりだ。
もちろん途中の街や村では情報は集めておく。
韓信達が王族を捜す地域は旧楚だった地域の中でも最も南の方となる。
会稽方面には逃げなかったようで特別な情報は手に入らなかった。
反乱軍の影響が非常に強いこの辺りはもう秦とは呼べない。
盗賊達もほとんど反乱軍に加わったのか、全く出てこなかった。
これならば気を張ることなく旅ができる。
道中二人は反乱軍に集った首領たちについてよく話をした。
あの中に次代の英雄とも呼べる人物が出てくるかもしれない。
二人の意見が一致したのはやはり項羽で、項梁軍の中では抜きん出て目立っていた。
項羽は実力よりも性格に難があるかもしれない、韓信は見ている。
非常に粗野で乱暴な部分がある。なまじとてつもなく強いため他人の力を頼むことを好しとはしない。だが、組織が大きくなればなるほどいかに自分以外の能力を上手く使っていくか、が大事だ。
鐘離眜は純粋に項羽個人の武力を評価している。
韓信は、鐘離眜が彭城の戦闘以来、熱心に剣と槍の鍛錬に励んでいることを知っている。
項羽の戦闘を身近に見て、鐘離眜に何か影響があったのかもしれないな、と思った。
韓信は特に鐘離眜の鍛錬については触れていない。
それは鐘離眜が韓信に悟られないようにこっそりとやっている「つもり」だからだ。
韓信からすると、特に隠す必要もないのにとは思うが、本人にとっては何か意味があるのかもしれなかった。
だからあえて触れていない。
話を変えるために今度は、能臣、参謀として誰かいたか?という話題を振る。
能臣、参謀として韓信は張良の名前をあげ、鐘離眜は范増の名前をあげた。
ただこの時点では韓信は范増の事を知らず、鐘離眜は張良が誰かは知らなかった。
思った以上に反乱軍には力自慢しか集まっていないのかもしれなかった。
中心人物である項梁ですら、あの中にいると頭脳派?に見えるかもしれない。
最後に韓信は沛公の名前をあげた。
鐘離眜は項梁に呼ばれた時に沛公をチラっと見てはいるが、特に思うところがなかったので韓信の意見が気になった。
沛公劉邦については通り一辺倒の情報しか知らない。
戦が下手だとか、酒好き女好き、農民の出で直前は盗賊か義賊か、などだった。
だが、韓信の答えは予想に反して『なんとなく。』だった。
少し拍子抜けしたが、とはいうものの韓信をよく知る鐘離眜は『なんとなく』などと曖昧な評価をする韓信を珍しいと思ったのだった。
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そうこう旅を続けているうちに会稽へと帰ってきた。
まさかこんなに早く会稽へ帰ってこれるとは思わなかった。
会稽を発つ時はそれなりの覚悟で出て行ったはずだったが…。
それよりも韓信は桃花に会える事に安堵していた。
信頼して酒家に預けたがなんだかんだ言って心配だったのも事実だ。
韓信は途中で桃花に土産を買ってある、少女の趣味などは韓信は無頓着だったので店員に選んでもらったものだ。
(…早く顔を見せて安心させてやりたい。)
きっと桃花も韓信達の身を案じていることだろう。
戦場に出る以上途中で命を落とすことも覚悟はしていた。
だから無事に会稽に寄れただけでも感謝せねばならないだろう。
会稽の門を潜った韓信と鐘離眜はまずは食事とばかりに桃花を預けている酒家へとやって来た。
「いらっしゃいませ、あらっ!?」
よく知る店員が二人の顔を見て驚く。
「二人、いいか??」
「もちろんです。どうぞ!!
もう戦は終わったのですか??」
店員は誰しもが聞きたいであろう事を聞いてきた。
「まだ終わってはいない。俺達も一回戦闘をしただけだったしな。
今回は項梁さまの命令でここに立ち寄ったのだ。」
「そうでしたか。お酒は飲まれますか??」
「ああ、貰おう。それとご主人の手が空いたら呼んで欲しい。」
店員はかしこまりました、と礼をして下がっていく。
二人で酒を酌み交わして話をしていると
「鐘離眜さま、韓信さま、お帰りなさいませ!」
主人が人のよさそうな顔をさらに破顔してあいさつしてくる。
「ご主人、久しいな!相変わらずの繁盛で何よりだ。」
「お陰さまでございます。桃花にも先ほど知らせましたので仕事が片付き次第来るでしょう。」
「すまないな、会稽には数日いるだけになると思う。宿を借りても??」
「今の時期は空いておりますので大丈夫ですよ。
会稽に寄られたのは項梁さまのご命令だとか?」
「うん、実は…。
楚王だった懐王さまの王太子妃が一人だけ無事に落ち延びられたらしく、その足跡りを追っている。」
「左様でございますか!!そのような話は初めて聞きました!」
「あの当時は秦が楚の王族、貴族達を殺しまくっていた時だ。(生きていることが)我ら庶民の耳に入るようではとても無事に落ち延びる事なんてできないだろう。」
主人が納得したように頷く。
「奥方様が生きて逃れた事を知ったのも、彭城の長老が教えてくれたものだ。そうでなかったら俺も知らない。
項梁さまに王家の血筋を捜し出すように命令を受けたが、内心正直無理だろうと思っていたからな。」
反乱が起こって、旧楚だった地域はほぼ反乱軍が押さえている。
秦の役人や商人達はみな争って逃げていってしまった。会稽で堂々と鐘離眜が楚の王族の話をしても危険はない。
むしろ情報を集めるためにあえて話をしている。
だが、酒家の主人は情報を持ってないようだ。
(やはり長老に聞くか。)
鐘離眜はそう考えて
「ご主人、会稽の長老様にお会いしたい。面会の約束を取り付けてもらえないだろうか??」
「かしこまりました。早速手配しましょう。項梁さまのお名前を出してもよろしいですか?」
「うん、項梁さまからも許可は貰っている。王族に関する情報を少しでも集めたい。面会の目的もお伝えておいてくれ。」
「はい、今から使いを出します。返事が来ましたらお伝えしますので離れの宿でお休み下さい。
桃花も宿の方に向かわせましょう。」
「手間を取らせるようですまない。」
韓信が主人に向かって礼を述べる。
「いえいえ、桃花も喜んでおりますから。」
韓信は言うならばここだ、と思い口を開いた。
「ご主人、その桃花なのだが今回の旅に連れて行こうと考えている。できそうか??」
主人は驚いた顔をして
「左様でございますか…正直桃花が抜けると仕事の分量的に厳しいのですが…。」
しばらく思案していたが、
「まぁ、あの子も休みなく働いていましたので、ここらで休みを与えるとしましょう。」
「おお、ありがたい。ご主人、恩に着る。」
「これも私の先行投資でございますよ。
見れば馬を連れてらっしゃるし、項梁さまに直接が命令をされた様子。
これからお二方はもっと出世なさると私は見ました。」
言われてみれば出兵前と比べると随分変って来ている。鐘離眜は特に。
さすが商人だ。恩を売っておいて将来につなげようという事らしい。
では、と礼をして主人は去っていった。
「よし、これを飲んだら宿で休むか。」
と鐘離眜は言ってぐいっと杯をあおった。
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