表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/75

范増登場

少し内容を修正します。


楚懐王の子供ではなく、孫にします。

項梁の呼びかけにより彭城へ集まった反乱軍はついに十万人近くになった。


どの兵士の顔も皆明るく、自分達の反乱の成功をうたがっていないようだ。


中にはどう見てもお前は盗賊だろう、といった集団がいるのだが、まぁ反乱軍なんてものはそんなものかもしれない。

ほとんどが庶民か奴隷か罪人かで構成されているのだ。


韓信はせっかくなので、集まった将の中に面白そうな人物はいないか、観察する事にした。


キョロキョロしながら警邏けいらをしているふりをしてあちこちの陣地を回っていく韓信。


やがて一つの陣地が何となく気になり足を止める。他の陣地とは違い、陣構えが整然と統一されている。間違いなく兵法を良く知る人物が指揮しているようだ。


そこは『沛』とか『劉』とか書いてある旗が掲げてある陣だった。


(沛という事は沛公か?確か劉邦という人が首領だったと思ったが…。)


沛公を一目見れないかな?と思いながら沛公の陣地の周りをぐるぐる回っていると、タイミングよく沛公が天幕から出てきた場面に出くわした。


韓信はさも警邏をやっています、といった雰囲気を出しながら、沛公と取り巻きたちを観察する。中心にいる大きな声で笑っているのが沛公だろう。

珍しい冠…というよりは始めてみる冠の形、あれは竹で作ってあるのか??


沛公はもう五十歳を超えていると聞いた。

であるなら、項梁よりも年上という事になる。

だが見た目だけなら項梁よりも若く見える


好色そうな、艶というより脂の乗った浅黒い顔、下品だが何となく憎めない顔つきをしている。


声もでかく大きく口を開けて、がははと笑っている。


(あれが沛公か……。才は見た限りは感じられないが…。

なんだろう?あの目か?少し吸い込まれそうな感覚がある…)


あとで鐘離眜に沛公について訊ねると、どうやら戦は下手くそで負けてる方が多い、というのと盗賊上がりで本人も下品だが庶民からは妙に人気がある、儒者が大嫌いで儒者を見つけると冠を奪い冠に小便をしたとか、主人に反して配下はまともらしい、とそんな事が聞けた。

人の持ち物、しかも頭に乗せる物に小便とは…。ちょっと衝撃が強すぎて言葉が出てこない。

それでよく恨みを買わないものだ、と少しあきれた。


あと気になったのは戦が下手くそで負けが多い、と鐘離眜は言っていたが、それにしては陣立てがきちんと兵法に則っていた。それで負けが多いというのはそもそも兵法が役に立っていないという事になる。何ともちぐはぐな印象を感じた。


それよりも、と韓信は一人沛公より気になった人がいた。


沛公の幕下にいる張良の事である。


張良の方が見た目は涼しげな美青年で、品格と知性を感じさせ、才気が身体から出ているのがわかった。

主の沛公には品性が感じられないのに不思議なことだと韓信は首をひねった。

あの人物が側にいるなら、あの陣構えも納得はいく。

少し張良と話をしてみたいと思ったが、一兵卒では近づく事も難しい。


沛公の陣が気になりながら、韓信は他の人物も見ようと沛公の陣地を離れていった。











□□□□□□□□











項梁が召集をかけた、反乱軍の首領達が集まり会議が始まった。


議題は陳勝王亡き後の体制と秦へどう攻めるか?といった内容だった。


その会議でいつの間に紛れ込んだのか、一人の老人が前に出てきて項梁に進言する。


「陳勝王が敗れたのは当然のことでありましょうな。

本来であれば、まず楚王の血筋を引く者を探し出して王位に就ける。

これにより反乱軍は大義名分が成り立ちます。


民衆は指導者が我欲で動いているのか、大きな義のために動いているのかは敏感に感じ取ります。

例えそれが建前だとしても、筋が通っているならば義となります。

義のためならば反乱の勢いは益々盛んになり、止める事はできなくなります。


陳勝王もこの手順を踏んでおれば、まだ生きていたでしょうな。」


なるほど、と項梁もうなずく。


七十は過ぎた感じの老人だが、眼光の鋭さが印象的で只者ではないと思わせる。


「まことその通りです。

ご老人、私が項梁です。これからも色々と教えてください。それでご老人のお名前は?」


居巣きょそう※)の隠居、范増はんぞうといいます。楚復活のために老骨に鞭打って働きましょう。」


「ありがとうございます。早速楚王の子孫を捜し出しましょう。誰か、鐘離眜を呼んでまいれ!」


しばらくして、鐘離眜が会議の場に姿を現し項梁はじめ諸将へ礼をする。


「鐘離眜、まかり越しました!」


「鐘離眜。

こちらにいらっしゃる范増老人の案により、楚王の血に連なる子孫を捜し出す事になった!

楚国復活のために王位に就いていただく。

そこで、鐘離眜には子孫を捜して来てもらう役目を申し渡す。」


「はっ…!承りました!」


「うむ、大変な役目だが、大切な事だ。頼むぞ!」


「項梁さま。

捜すとしたらどの辺りを捜しましょう?

秦によって楚が滅んで早十余年、旧楚だけでも国土は四方数千里、何か手がかりでもあれば捜しやすいのですが…」


范増が口を挟む。


「鐘離眜どの、まずこの彭城の長老に話を聞きなされ。

長老であれば楚が滅んだ時の事は覚えておろう。

そして他の土地に行った時も長老に会うといいじゃろう。」


「なるほど。

それならば見つかるかもしれませんな!」

項梁さまこの旅、従者を連れて行っても??」


「構わん、それと路銀は前払いで渡しておく。何としても捜してまいれ。」


「はっ!命に代えましても!」


鐘離眜は礼をして、下がる。


(まさか人捜しをする事になるとは…。)

項梁は、鐘離眜を前の彭城の戦闘で活躍してから色々と雑用に使うようになっていた。


準備をして彭城の長老の下へ向かう。その前に韓信に合流しようと思った。

鐘離眜は韓信と一緒に王族捜しをするつもりだったのだ。










□□□□□□□□










「では、長江より南方に落ちのびた、と?」


「はい、確実に言える事は懐王かいおう(※楚最後の王)の王太子妃の一人が逃げ延びられて、その時にはお腹にお子を宿しておらました。」


「おお!では、王孫かもしれないな。」


「男子かどうかまでは産まれる前でしたのでわかりかねますが、無事に産まれておいでであればもう齢十を超えるかと。」


「ありがたい。雲を掴むような話かと始めは思っていたがこれならば、何とかなるかもしれんな。」


「長老様、他の奥方様やお子様は…?」


長老は黙って首を振った。


もう生きてはいない、という事か。無理もない、楚に限らず秦によって滅ぼされた国の王族は全て抹殺されているのである。生き残りがいるだけでも奇跡だ。


礼を言って長老宅を出る韓信と鐘離眜。


「鐘離眜。それで、すぐに彭城を出るか?」


「うん、そのつもりだ。俺が項梁様に楚王の子孫を捜す命令をされているのは皆知っているからな。彭城でのんびりするわけにもいかないだろう。どうした?」


「要望があるのだが。彭城を出たら会稽へ行かないか?」


韓信のその台詞を聞いて鐘離眜はわかってしまった。


「桃花か??」


「ああ、出来れば一緒に子孫捜しに連れて行きたいと思ってな。今上司はお前だから、お前が許可を出してくれるならば。まぁ、ダメでも一旦会稽に寄って会うだけでもいいのだが。」


「ふむ、まぁ路銀はたっぷり貰っているから桃花一人増える程度、問題ないが。この旅にお前を巻き込んだのは俺だし、後は会稽に寄っている時間があるかどうか、だが。」


「項梁様からは期限は言われていないのだろう?」


「ああ。元々は生き残りがいるかどうかも分からない話だったからな。それなのに期限をつけられても困る。」


「ならば会稽によっても構うまい?」


「わかったよ、韓信。」


しょうがないなぁ、といった顔をする鐘離眜。


こうしてまた偶然とはいえ旅をする事になる二人だった。


※)居巣:彭城(現在の徐州市)から南へ300キロほどにある都市。

今回のサブタイトルは少し悩んでます。

范増の部分が少ないのでこのタイトルでいいのかなぁと。

他に候補で考えていたのが「韓信劉邦を観察する」とかですね。

んーどうしようかなぁ…。


誤字脱字ありましたら一報をお願いします。


感想評価もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ