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項梁軍出陣

翌朝、項梁軍は会稽を出発した。


会稽を守護する部隊を残しても出発する兵士は二万を超える。

立派な一勢力と言えよう。


韓信と鐘離眜は今、会稽の外で大将である項梁と甥の項羽を直接近侍する衛兵部隊を待っていた。


彼らが会稽の門を出てから合流し出発となる。


街は総出で項梁が出発する所を見送るようだ。

凄い熱気が街中に溢れている。


しばらくすると歓声が沸きあがる。


項梁が門をくぐって出てきたみたいだ。


韓信は鐘離眜の後ろに並びながら項梁と項羽を見ようと注意を凝らしている。


やがて対照的な二人が門に現れた時、周りの歓声が一際大きくなった。


どうやら本命の二人らしい。


小さくて歳を取っている方が項梁。

大きいだけではない、体中から溢れんばかりの覇気とも言えそうな空気をまとっているのが項羽だ。


そして韓信は項羽という人物を視界に入れた瞬間に、体中の穴と言う穴からぞわっと冷や汗が一気に流れ出たのを感じた。


(あれはヤバイ…!!)


何の冗談か!!あれは人間ではない!

例えるなら…そう、けもの…それも猛獣のたぐいだ。

人間がまともに闘っても勝ち目はない。


(!!…あれが項羽か!!…あんな人間がいたのか…。)


人知れずゆっくりと息を吐く。

どうやら無意識に呼吸を止めていたようだ。


前に並んでいる鐘離眜も身体を固くしている。


力が入ってしまっているのだろう。


……恐ろしい男がいるものだ。

直接剣を交えたくはない、むしろ項羽が素手でも全く勝てる気がしない。


とりあえずは味方で良かったと思う韓信であった。


そして、韓信が他人とは違う点はここからである。

これは張良とも共通する点かもしれない。



『もし』自分が項羽と戦うならば、どうするか…?

という事を考え始めるからだ。


猛獣に正面から力比べはしない

落とし穴を掘り、罠をしかけ、エサになりそうな獲物を用意し丁寧に毒を仕込む。


もちろん毒は無味、無臭のものだ。


そしてタイミングを計り、力を出させないように場所も考える。

狭い場所を使い、水を、寒さを、火を、暗闇を、あらゆるものを使うだろう。


幾重にも、幾重にも策を練る。

知恵を使って勝つのだ。


幸い項羽は猛獣だけあって知恵が先行するタイプではない。


そこまで考えてやっと少し気持ちが落ち着いてきたようだった。


(後で鐘離眜にも意見を聞いてみよう。)

鐘離眜が項羽をどう感じたか興味がある韓信だった。








□□□□□□□□








「項梁が出陣した!!」


この情報は未だ各地で潜伏していた反秦の勢力に驚きを与え、彼らはこぞって項梁の元にはせ参じた。


この時点でそれなりに名を挙げていたのが

陳嬰ちんえい黥布げいふである。


陳嬰は東陽の地で云わば無理やり旗頭にされた男で、人格者として評判の人物であった。


東陽で反乱が起こった時に首領に祭り上げられた。


陳嬰の名声は高く、東陽で陳嬰が立つ、と情報が流れた時に周りから争うように人が集まり、すぐ二万を超える勢力になる。そしてそのまま陳嬰は王に推戴されそうになる。


だが陳嬰という人は自分自身を良く知っていた。

とても自分は王の器ではないという事をわかっていたので、陳嬰は別の勢力の下に入る事にしたのである。

そして選んだのが楚でも名門中の名門、項家の項梁軍である。




黥布げいふは額に入れ墨(黥)が入っているので黥布と呼ばれた。

本名は英布という。

顔に入れ墨が入っている、という事は何らかの罪を犯し刑罰に処せられたという事である。


だが黥布はこの入れ墨を最大限に利用した。

名前を変えたのも世に名前を売る一環であった。

黥布はタイプが項羽に似ており、荒くれ者で力が自慢の武者であった。


項梁は人格者で有名な陳嬰、武で名高い黥布が傘下に加わると聞いて大いに喜んだ。

その他にも大小様々な勢力や志願者を吸収し、瞬く間に七万を超える大兵力になっていた。


韓信は一連の流れを当事者として見ていて、人の持つエネルギーの凄さを思い知るのである。


何せ面白いように兵が倍々で増えていくのだ。


兵士が増えたとは言ってもすぐに使い物になるわけではないが、兵数というのは戦を左右する重要な要素の一つである事は間違いない。


冷静に、大勢力へとのし上がっていく項梁軍の様子を観察しながら、その利点と弱点を正確に分析する韓信であった。






陳に向かう項梁軍は、その規模を急激に拡大しながら途中までは何事もなく快適に進軍した。


だが、使者として陳へ出した兵士が帰ってきて、状況が混乱することになる。


それは

「陳勝王が秦軍に破れ、行方不明。」


項梁が上柱国へ封じられたお礼と項梁軍が陳へ向かう事を知らせるために使者を出したのだった。

だが陳勝王が秦軍との戦いに負け、しかも行方がわからなくなったと。


そして、さらに混乱に拍車がかかる。


別のところから

「彭城(昔の楚の首都)で秦嘉という人物が景駒を王として楚を立てた。」

と情報が入ってきた。


「秦嘉??景駒??

誰だそれは??


そして楚??彭城で??


陳勝王が行方不明??


何がどうなっておるのだ??」


項梁は天を仰いで嘆かずにはいられなかった。

どうやら、勢いよく書ける話と時間がかかってしまう話と、があるみたいです。

今回は勢い良く書き上げることができました。


もう少ししたら范増とか出てきますね!


無双らしい無双という事で云えば項羽の方が無双は似合ってますね。

三国志でいうところの呂布でしょうか。

呂布とどっちが強いのかなぁ?


そういえば孫策が江東の小覇王などと言われたりしますが、元ネタは項羽です。項羽が覇王になりますので、項羽の再来のようだ、って事で小覇王と呼ばれることになります。


誤字脱字ありましたらご一報をお願いします。


感想、評価もお待ちしております。

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