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用心棒韓信

韓信と鐘離眜しょうりばつは淮陰の南門にいた。


ここで護衛の雇い主を見つけようというのである。


この時代盗賊のたぐいは日常茶飯事だったから、少し商いが大きくなると用心棒や護衛をつけて移動するのは当たり前だった。


韓信たちも苦労せずに雇い主を見つけることができた。


ただ交通が発達していない時代、商人達の移動距離は大して遠くはない。


行商はせいぜい隣町、珍しい高価な物を扱う商人でよくて200キロ程度が行動範囲だろう。


そして会稽は淮陰からほぼ南へ400キロほどである。


だから護衛する商人を換え、時には自分達だけで旅を続けねばならない。


報酬や待遇などの条件はその都度応相談になるが、最低限護衛の間の飲食ができれば御の字と韓信達は考えていた。


欲を言えば雇い主がつかまらなかった時の事を考えて、何日か余分の食料が確保できれば望ましい。


韓信は野宿でもかまわなかったが、街や村で宿泊する場合は宿に泊まる事が多かった。


やはり布団があった方がよく眠れるし、野宿の場合は交替で見張りをせねばならない。


宿だと見張りが免除になるのでそれはありがたかった。


盗賊に出会っても大抵の場合鐘離眜一人で事足りた。


幸いにして大部隊の盗賊には出会わなかった。


せいぜい10人いれば多いほうである。


陣形は前衛が鐘離眜、後衛が韓信である。


盗賊が襲ってきた時は韓信も商人と荷を背後に回して剣を抜き護衛する。


前衛の鐘離眜を突破して韓信の元までたどり着く事はほとんどなかった。


盗賊と言っても武芸に精通している者などいない。


韓信は安心して鐘離眜に任せられた。


韓信は見てくれが立派な長剣を持ってはいたが振るった事はほとんどない。


が身体が大きい韓信が長い剣を持って何となく構えているだけでハッタリにはなったようだ。





□□□□□□□□





旅の途中で、とある村に立ち寄ろうとした所今まさに盗賊の襲撃真っ最中であった。


商人と馬車を近くの森へ隠し、急いで鐘離眜と韓信は村へ加勢に入る。


ちょうど村の男達は仕事に出て、いない隙を狙ったようだ。


怒号と喚声と叫び声が飛び交う中、二人は飛び込んでいく。


賊は何人いるか分からないが、兎に角片っ端から斬り捨てていく。


賊はそれなりに頭数はいるようだが、武器は貧弱で連携も取れておらず鐘離眜の相手にはならなかった。


韓信は、鐘離眜が致命傷を与えて転がした敵に着実に止めを刺していく。


二人が多人数と戦う時はこの方法が一番効率が良かった。


気をつけるのは鐘離眜の武器の刃こぼれぐらいで、敵の人数が増えるほど武器にダメージが溜まる。


鐘離眜も慣れたもので、自分の得物が使い物にならなくなった時は倒した敵から剣や槍を奪いそれで戦っている。


「!!」


韓信は油断したわけではなかったが、足に矢が刺さっていた。


敵に弓兵がいたらしい。


すぐに鐘離眜が近くに落ちていたナイフの様な短刀を矢が飛んできた木にめがけて投げつける。


「ぐっ!!」


くぐもった音が聞こえた後にどさっと黒い物体が落ちてくる。


(投擲も出来るのか。)


韓信は矢を抜きながら友人の多芸さに驚いていた。


剣と槍の腕前は知っていたが投げナイフの腕もいいとは。


負傷した韓信は友人の足手まといにならないように、足を引きずりながら避難する。


すると馬が乗っているガタイがひときわ大きい男が叫びながら鐘離眜へ向かってくる。


どうやらこの男が盗賊の首領のようだ。


鐘離眜は冷静に落ちていた剣を首領に向かって投げつける。


と同時に鐘離眜は前に飛び出した。


首領は剣を剣ではじき返すが、同じタイミングで鐘離眜が首領の足を斬っていた。


たまらず落馬する首領に間髪いれず首を目がけて剣を振るう。


(相変わらずの強さ。)


全く相手にもならなかった盗賊達に少し同情をしてしまうほどの鐘離眜の強さだった。


剣の痛み具合を確かめながら鐘離眜が韓信の元へ来る。


「韓信、足はどうだ?」


「ああ、先ほどよりは痛みがあるかな?」


「確か馬車に酒があったはずだから、少しもらってこよう。


これで傷口の上をしばっとけ。」


布と木の棒を渡される。


韓信が悪戦苦闘しながら布を棒でねじっていると鐘離眜が商人と馬車を引いてきた。


「韓信どの、大丈夫ですか?」


「ええ、これで血は止まったようです。


それで酒をわけてもらえますか?消毒します。」


「もちろんですよ。それと量が少ないですが薬草もあったのでもってきました。」


「ありがとうございます。」


礼を言って酒を口に含む。


ぷーっと傷口に吹き付けると、殴られた様な痛みが襲ってくる。


「…!!…!!…」


声にならない声と変な動きをしている韓信。


盗賊の身ぐるみを手際良く剥がしながら韓信の治療を見ていた鐘離眜も変な顔をしてしかめている。


(痛てーよなー、あれ。)


自身も生傷が絶えないからよく知っているが慣れるもんじゃない。


そうしているうちに、辺りが静かになった事で盗賊がいなくなったとわかったのか村人達が家から出てくる。


(少しの間この村に厄介になった方がいいかもしれん。)


韓信の様子から判断して鐘離眜は村長らしき老人と話をするために立ち上がった。



※この時代消毒という概念があったかはわかりませんがこういう形になりました。


酒も蒸留酒がなかったでしょうからアルコール度数も低いでしょうしね…。


果たして消毒になるのか?


誤字脱字ありましたらご一報をお願いします。


感想評価もお待ちしております。

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