現実主義者のご利用は計画的に2
「お前、女になれ」
この先輩、借金でちょっとおかしくなているのかもしれない。
いきなり、女になれとか言ってくるとはどうかと思う。
いくら男所帯で、女っ気がないからってそれはない。
ここは、バシッと言っておかなければいけないだろう。
「・・・・・私は、先輩の恋人になるつもりはないのですが…」
そう言って、体を庇いながら先輩から数歩後ずさる。
「俺だってお断りだ!男を抱く趣味はねぇ。誰が、俺の恋人になれっつったよ。お前を女装させて、あいつに紹介するんだよ。んで、しばらく付き合うふりしてもらう。そういう意味だ」
冗談で言ったのだが、通じなかったかぁ。
アイオン先輩に本気の回答をもらってしまった。
「すみません。冗談です。ちなみにその案、却下します」
「それは、不可だ」
即答されてしまった。
先輩はどうやら本気らしい。
女装はすぐばれるとか、賭けカードとかやってみろとか、日雇労働の職はないのか?とか、私はその後あの手この手で説得を試みた。
説得をしながら、もしかして騎士にならなくてもそれで食っていけるのでは?
という案まで浮かんでしまったが。
結局アイオン先輩は、意志が強いのかはたまた頑固なのかこちらの意見を受け入れず、最終的に私の方が折れてしまった。
負けた。
「よし、決意が揺るがないうちに準備を始めるか」
そう言って、おもむろに歩き始める先輩。
ヴォイドと私は、思わず顔を見合わせた。
「ちょっと待って下さいよ。どこへ行くんです」
「どこへってお前、その格好で引き合わすわけにはいかないだろう?」
まぁ、それはそうだが。
「ともかく、黙って付いて来いって」
と言われたので、付いて行く。
で、辿り着いたのが騎士宿舎。
これからひと月世話になる寄宿舎と違って、正規採用された騎士の宿舎だった。
寄宿舎と違って豪華だ。
王宮ほどではないが、清楚感漂う品のいい建物だった。
おー、とか言って歩いていると、アイオン先輩に小突かれた。
ヴォイドの顔がピクっと動く。
「馬鹿、堂々と歩け。目立つだろう」
「いや、すごく思っていたのと違ったんで、物珍しくてつい。豪華ですね」
そう言うと、ヴォイドが説明してくれた。
「元は後宮ですからね。老朽化したのを宿舎として使って、新しい後宮を反対側に作ったんです」
おお、だから壁が女性向けなんだ。
男所帯なのに…
「詳しいな、新入り」
アイオン先輩がニヤッと笑う。
「有名でしょう?」
むすっとした顔で答えるヴォイド。
今日は朝から不機嫌だな。
何かあったのだろうか?
そうこうしている内に、目的の場所についた。
他の部屋に比べて、大きめの扉をあける。
何の部屋だろう?
「悪いけど、少しだけここで待っててくれないか?どうせ朝飯もまだだろ?ついでに持ってくる」
「解りました」
私がそう言うとこの部屋から去って行った。
私の部屋より少し大きめのこの部屋は、とても落ち着く感じだった。
色彩が柔らかい。
窓から朝日が照らされていて、一層この部屋に柔らかさを与えていた。
私の部屋と交換してくれないだろうか?
もっと狭くていいから。
中央にソファがあるのでそこに座って待っていると、アイオン先輩がやってきた。
後ろに女性が控えている。
騎士宿舎って、女性の出入りOKなんだ。
変なところで感心してしまった。
「朝食の前に、とりあえずレイ、お前は着替えろ」
そう言うが早いか、女性が私をクローゼットに案内する。
なるほど、その為の侍女さんか。
侍女さんが、そこにある沢山の洋服からすばやく数着選び抜き、その中でも似合いそうなものをピックアップしていく。
その侍女さんいわく、街で流行している服なのだそうだ。
なるほど街で着る物らしく、ドレスと違って幾分簡単な作りになっている。
「やはりこの色が一番似合いますわね。これにいたしましょう」
そう言って、サーモンピンクとオレンジの二色を複雑に染め上げた細身のワンピースを選びだした。
あっという間に、着替えさせられる。
胸をつぶしているので、この侍女さんに性別はばれなかったようだ。
ブラジャーさえしていなければ真平らで、つぶさなくても大丈夫なのだが念の為。
やめよ、考えていてむなしくなってきた。
そして服を着た後、街で流行っているという髪型にされた。
自分では絶対にこの髪型は、出来ん。
あのトップとサイドの三つ編みは、いったいどこに合流しているんだ。
メイクも少しだけしてくれた。
フルじゃないのは、自分に合う色のファンデーションがなかったので、バランスを考えて軽くしかできなかったというのが正解だ。
早急にファンデーション見つけなきゃ。
私の全体の出来上がりをチェックして、侍女さんがものすごくいい笑顔で言う。
「とっても、いい出来です」
「ありがとう」
彼女に微笑みながら、礼を言う。
侍女さんが一瞬固まったが、すぐに元に戻る。
「とんでもありません。レイ様のいえ今はルイ様ですが、着付けを手伝えて光栄でした」
ん?
もしかして、この侍女さんル・レイ会?
まぁ、いいか。
それよりも、アイオン先輩に確認しなきゃいけない事が出来た。
私は満面の笑みでクローゼットから出る。
2人がこちらを振り向き、固まった。




