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現実主義者の世話人めぐり(第9世話人)

辺りが静かになったので何事かと思い、周りを見渡す。

すると会場のほとんどの人間が、同じ方向を見ている。

皆の見ている視線を追っていくと、二階部分から下を眺めている人物に行きついた。

まとっているオーラから考えるに、間違いなくこの国の国王だろう。

案の定、案内係の声が、国王の来訪を告げる。

皆が一斉に頭を下げた。

私も周りに倣い礼をとる。

「皆の者、面をあげよ。今宵は隣国の客人を招いての夜会だ。思い存分楽しむがいい」

腹の底に響きそうなバリトンの声が広間中に広がる。

それを合図に先ほどとは違う音楽が会場に広がり、さっきまでの雑然とした雰囲気が一変する。

国王が二階部分からホールの方へ降りてくると、人の海がさっと左右に分かれた。

おお、生モーゼ。

後に続く人は少数だけど。

それはいいとして、何だろう?

人の分かれ具合が、こちらに伸びてきている。

その延長線上には、団長とキョウキーニさんがいた。

とりあえず、この場所にいたら明らかに邪魔だから私も脇によけ、ついでにお酒のお代わりをもらいに行く。

「まだ飲むのか」

副団長のあきれ声が聞こえる。

うーん何だか同じ事をさっきも言われた様な気がする。

「だめ?美味しいからつい」

さすがにはしたないと思わなくもないが、いかんせんここに出ているお酒が美味しすぎるので止まらない。

さっき受けたストレスも、若干ピッチをあげているのに加担していると、言い訳につけ足しておこう。

それに私は、酒依存ではない。

酒瓶片手に段差で躓くような、まぬけはしない。

躓くとき持っているのは、酒瓶ではなくグラスだ。

そこは主張したい。

「それはどう違うんだ?」

「持っていたのが瓶かグラスかによって、傷心度がかわってくる」

そうなのだ。

その時グラスを持っているか、瓶を持っているかで心の傷の度合いが変わってくる。

そのとき持っていたのがグラスだったら、危ない気をつけようで終わる。

が、瓶だとかなりへこむのだ。

何をやってるんだろう?自分。

というように、自問から始まり、自分の人生について考えてしまう、ドつぼループにはまる。

やがて自分の人生が走馬灯のように駆け巡りはじめる。

死なないのが不思議だな。

うん。

「それをキッチンドリンカーと言うんじゃないのか?」

おわっ、宗谷英規、いつからそこに。

「酒依存ではないと主張していたあたりからだ」

「え?口には出していなかったはずですが」

「いや、口に出てたぞ」

宗谷英規と副団長に同時肯定されてしまいました。

「ああ、申し遅れました。私は英規=宗谷と申します」

宗谷英規が副団長に自己紹介を始める。

「私はローアム=フォンジッニ=デラ=ウナオイア。騎士団副団長を務めている。宰相補司に任官されたとか?フィーから噂は聞いているよ。あいつの元では気苦労が絶えんだろうが、頑張ってくれ」

フィー?

「気苦労などとはとんでもありません。色々勉強になっていい刺激を受けています」

「あいつの変な影響だけは受けるなよ」

「変な影響ですか?」

「ああ、そのうち解るさ」

どんな影響なんだろうすごく気になる。

フィーとかいう人は、そんなに影響力がすごいのだろうか?

「ファインの事だ」

副団長が私に言う。

ああ、じゃあ、きっとあれだな。

直属部下が軒並み似非紳士になるとか、女性関係トラブル多発とか。

それはさぞかし混沌としていそうだ。

「だいたい、ルイがフィーの事をどう見ているか察したよ。まぁ概ねその通りだが」

「ああ、じゃあ宗谷さんは手遅れですよ」

にっこり笑う。

「どういうことだ?」

二人同時に問われる。

「いや、だってファイン様に影響受けなくても、現時点で兆候出てるじゃないですか」

そう言ってあたりを見回す。

女性の視線バッチリ。

まぁ、副団長ファンも混じっているけど。

「それに、宗谷さん、地球にいた時から結婚したい男上位に入ってましたよね?うちの社にも隠れファンいましたし」

周りを見た宗谷英規が、今気付いたかのように女性たちの視線に驚いている。

おおい、もしかして鈍感?

いやいや、まさかねぇ。

「おいおい、まさか宰相府はとんでもない男を入府させたことになるのか?」

「ある意味そうかもしれませんよ?ファイン様と宗谷さんのおかげで、ますます城内が潤っていると侍女さんたちが話してましたしね」

「ま、まぁ、がんばれ」

「え、ええ」

何だか2人がげっそりしているが、気づかないふりをしてあげよう。


そうこうしているうちに王様が近くまで来ていた。

私たちははすかさず礼をする。

礼をする。

礼を、あれ?

何だろう、気配が去らない。

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