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現実主義者が入団試験を受験できたわけ

「まったくだな」

「ですよねぇ?」

あれ?

今声に出してた?私。

ちなみにこの声は、副団長だ。

「あの2人はなんだかんだ言って似た者同士だ。すまないな。不快な思いをさせてしまって」

申し訳なさそうに謝る副団長。

「いえ、気にしていません。むしろ誤解は誤解のままでいたほうが私にとって都合がいいと思うんです」

「都合がいい?」

「はい。都合がいいです」

思いっきり頷く私。

考えてみると、キョウキーニさんは執着するタイプのバトル好きだ。

恐らく顔を合わせる度に、勝負を挑まれる可能性が高い。

それは非常に鬱陶しい。

何せ、彼の滞在期間がやたらと長いらしいのだ。

その間中、追い掛け回されるのかと思うと、精神的な疲労を感じずにはいられない。

では、相手が近づきたくないと思う程の嫌悪を私に抱かせればどうだろう?

彼は、二度と私に近付かないと断言できる。

となると、誤解を抱かれたままの方が、私にとっては都合がいいのだ。

その状態を維持する為にも、やはり団長には気付かれていない状態が望ましい。

それに、私は入団を諦めたつもりがないのでやはり、誤解はそのままにしておいた方がいいだろう。

という様な事を不敬罪に当らない様に留意して、副団長に話してみた。

「やはり入団はあきらめてなかったか」

え?

そこ?

そこを聞きますか?

「キースにも言いましたが、落ちるのを前提として試験に臨むのって、不毛だと思うんですけど」

「それはそうだが…」

副団長が複雑な表情をして唸る。

「正直な話、まさかお前が団長とまともに剣を交える事ができるとは思っていなかった。予定外だ」

副団長が最後の方を小さい声でぼそっと言ったが、私にはきちんと聞こえていた。

予定外。

予想外ではなく予定外。

これは、副団長の頭の中では、私が途中で失格すると考えていたという事だろう。

そういう前提だったからこそ、今回の入団テストをすんなりと受験させた。

どうせ、マラソンで脱落するか、万が一実技に通過しても、そこで落とされるだろうという予測の下で。

逆に、実技をしてそこで落とした方が、わだかまりも少なく本人も納得するし、落ちたら落ちたでこちらで何とか就職先を斡旋すればいい。

そう考えていたはずだ。

ところが、マラソンでは16番目に入っているし、剣技でも下手なりに扱える。

しかも変に目立ってしまったので、手を回して落第にするわけにもいかない。

副団長としては、予定外も甚だしい事だっただろう。

「ルイ、心の声はしまっておいてくれ」

「あれ?聞こえてました?でもまぁ、あながち間違っちゃいないでしょう?」

副団長が苦笑する。

「まぁ、どちらにしても、落ちても受かっても就職は必要なんで」

「前向きだな?もし俺がお前の立場だったら、そう前向きになれたかどうか」

「まぁ、何とかなるもんですよ。副団長だって、やってけると思いますよ?わりかし気配りの人なので、どんな環境でも生活していける気がしますし、私は。それより、私って、団長に誤解されたままの状態で謁見とかしたら、不敬罪とかに当たったりしないですか?何せ団長から見たら性別詐称だし」

ちょっと気になったので聞いてみる。

又牢屋送りとかは、ごめんこうむりたい。

「ああ、謁見の話か。そこら辺りは問題ないだろう。陛下は楽しそうな事に常に飢えているお方だからな。もしばれても、逆にそのまま続けろとか言いそうだ」

どんなトップだよ。

快楽主義なのか?

「団長が待ったをかけたりは?」

もう1つの懸念を聞いておく。

「それもない。あまり小さなことに拘らない性格をしているからな」

「まあ、そうかも。団長、男だと思っている割には、キョウキーニ様みたいにこの姿に嫌悪してなかったし」

「そのドレスが似合ってたからじゃないか?誰がどう見ても男にしか見えない姿だったら、嫌悪してたかもしれない」

「ふーん?似合っていたらいいんだ」

思わず、副団長をじーっと見る。

副団長が、ひるんだ。

なるほど、副団長は肌状態がいいのでファンデは薄づきでもいけそう。

顎の部分もごまかせそうだ。

眉を女らしくカッティングして、シャドウはその時の着るドレスかなんかに合わせようか。

口紅とチークは…

げ、むかつくほどの美女が出来上がりそうだ。

「おい、まさか想像なんてしてないだろうな?」

「やだなー、してませんよそんなの。妄想しただけで。むかつく程の美女になったんで考えるのをやめましたが」

かわいく首を傾げて見せる。

「思いっきり想像してんじゃねーか。頼むからやめてくれ」

副団長が何だかげっそりしている。

仕方がないなぁ。

でも一度トライしてみたいかも。


そんな悪魔のような事を考えていたその時、会場が急に静かになった。

何事?

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