現実主義者と仲間候補
あさりの砂はきの仕方。
海水もしくは塩分濃度3%の塩水を用意する。
その中に、夏なら2~3時間、冬なら8時間弱暗闇に置く。
こうする事でアミノ酸、所謂うまみ成分が再生され、貝の中の砂も吐き出されおいしく調理できる。
あ~お腹すいた。
ボンゴレビアンコが食べたい。
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藍の間における三者会談を終わらせた後、私が廊下に出ると隊長とキースと見知らぬ人物が立っていた。
誰?
そう思って疑問に思っていると、どうやら宗谷英規の護衛さんらしい。
隊長が教えてくれた。
取り敢えず相手は職務中なので、その場は会釈するだけにとどまり、藍の間を後にした。
しばらく隊長に付いて歩いていると、いつの間にやら先ほどとは違う道を歩いている事に気付いた。
「隊長。先程と道が違う気がするのですが」
と、恐る恐る聞いてみた。
「アークオーエン殿から客間へ案内すようにいわれています」
うわ、そうだった。
話を把握するので精一杯だったが、たしか客人扱いとも言われていた。
ただ、身分が未確定という事なので、いきなり王族と面会なんて事はならないだろうが、形式上でも滞在許可とその礼をする為に、この国の高官辺りとは近々会わないといけないだろう。
うげ、面倒くさ。
書面にサインして終わりとか、そういうシステムでは無さそうだしなぁ。
と、色々考えている内に到着。
「ここがこれから、ジャポン様が滞在されるお部屋となります」
キースがそう言って扉を開けると、大量の砂を吐きそうになった。
私は貝か、何の嫌がらせだ。
初めの控えの間、続いて藍の間と見て来たからほんの少しだけ期待したのに。
いや、決して品がないわけじゃない。
腐っても王宮だ。
ただ、ここは激しく好き嫌いがはっきり出る内装で、客の好みを把握しておかないと通せないという客を選ぶ難易度の高い部屋だ。
で、一応聞いてみる。
「ここ、使う人いるの?」
「い、一部の女性には人気の部屋だ」
キースの敬語が剝れる程には、衝撃のある部屋だったみたいだ。
隊長に至っては言葉も出ない。
同感だ。
取り敢えず解説しよう。
部屋は20畳位で、客間にしてはこじんまりしている。
そして、部屋のイメージ色は桃色。
メルヘン全開のカーテンに壁紙。
天井画もタッチは素晴らしいのに、モチーフがファンタジーすぎて残念な事になっている。
画匠にとって、不本意な仕事だったのではと想像する。
天蓋付きのベッドはどの部屋もデフォルトであるのだろうが、レースをふんだんに使った多重織の贅沢なコーナーカーテンが、唯一この部屋に落ち着きを与えている。
ここをしばらく根城にしなければならないのかぁ、と思わず遠い眼をする。
ただ飯食らいの分際で、部屋にいちゃもんをつけるわけにはいかない。
いかないのだが…
とか複雑な気持ちになっていると、ノックが聞こえた。
返事をしないでいると、隊長とキースがどうした?という目で見て来た。
ああ、そうか一応ここが私の部屋だから、私が返事をしろという事だな。
「どうぞ、お入りください」
2人とも変な顔をして、扉を警戒する。
「あっ」
今頃気づいた。
うわ、危機感無いわ私。
これ、日本でもやって失敗して懲りてたはずなのに。
所謂、相手の確認。
まぁ、初めての場所なんで、誰が来ても知らない人ばかりですが。
でも、これしないといくらなんでもまずいよね。
と反省していると、ナリアッテさんが入ってきた。
2人の警戒がとける。
「失礼いたします。ジャポン様、本日より身の回りのお世話をさせて頂く事になりました。どうぞよろしくお願いいたします」
そう言って優雅に礼をとる。
「こ、こちらこそよろしくお願いいたします」
そう言って、私もぺこりと頭を下げた。
ナリアッテさんが若干焦っている。
「あ、そうだ。隊長、キースさん、ナリアッテさん。訂正事項が2つ程あるのですがよろしいですか?」
3人がこちらを向く。
「あ、どうぞ皆さんおかけください」
というと、明らかに3人は動揺した。
うん、まぁ予想の範囲内。
要するに、身分とか何かが阻んで同席できないやらなんやら。
「えーと、私はつい先程まで囚人でした」
徐に話し出した私の言葉に、3人が一挙に動揺する。
「で、今は客人扱いですが、それは仮です。まだ私に対する身分その他の事が決まっておりません。そういう意味において、私の身分は皆さんに比べて下に位置するものだと考えています」
ナリアッテさんが思わず、そんなと言って声を漏らす。
ナリアッテさんに向かって少し微笑んだ。
「ですから、お願いがあります。せめてこの部屋にいる間で構いません」
ここで少し言葉を切る。
「私とせめて対等でいて下さいませんか?」
これは願いというよりも、懇願に近い。
堅苦しいままで接し続けられると、いずれ私がつぶれるとそう思った。
「これが訂正事項1つ目です。2つ目は、私の名前です。アークオーエン様にはお伝えしましたが、私の本当の名前はルイ=タダです。自分の状況を把握する間は偽名を通そうとしました。申し訳ありません」
そう言って、頭を下げる。
3人は慌てた。
立て続けにびっくりするような事を言われたら、動揺もするだろう。
頭を下げっぱなしにしていたら、小突かれた。
隊長だ。
「対等に接してほしいという人間が、まず敬語では話にならんだろう」
それもそうだと思いクスリと笑う。
私が笑った事で残りの2人も力を抜く。
いちばん戸惑っているのはナリアッテさんだが、きっと真面目な子なんだろうな。
「じゃあ、3人とも座って」
これが、この世界での味方を得た瞬間だった。




