現実主義者と重力場発生装置
ツンドラとは、主にロシアのシベリア北部地方など北極海沿岸の寒帯地域に見られる、地下に一年中溶けることのない永久凍土が広がる降水量の少ない地域のことである。
ブリザードとは北アメリカ大陸北部や南極大陸において、発達した低気圧による地吹雪を伴う局地風の事である。
視程100m未満、風速25m/s以上、継続時間6時間以上のものをA級とランクとされ最も警戒されている。
重力場とは、時空に質量や運動やエネルギーが存在すると光を曲げる程の時空の歪みが発生する、この時空のゆがみが重力場である。
以上の事を踏まえて、今の状況を解説すると以下のようになる。
特異点Xを中心に、ツンドラとブリザードが藍の間という時空に局地的に展開され、光も曲げるほどの重力場が発生している。
さらに勢いは強まり、特異点を中心にブラックホールが形成されつつあるようだ。
結論、形成されたが最後その場からは誰も逃げ出せない。
なんでこうなったんだろう?
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「私をファインと呼んでは下さらないでしょうか?」
えーっと、反応に困る仕草と質問だな。
と思って、助けを求めて宗谷英規を見ると…!!
ひぃっ
何このカオスな空気。
ちょっとどうなってるんだ。
今の宗谷英規に助けを求めるのは自殺行為だ。
取り敢えずよく解らないが、この場を早く離れよう。
そう、結論付け口を開く。
「わかりました。ファイン様とお呼びいたします」
と早口にいって、にっこり営業スマイル。
「…様ですか…」
少し物足りなげにこちらを見る。
え?様付けダメなの?
エーと、ハイルとか卿とか~侯爵とか役職名とかつけなきゃまずい?
「まぁ、いいでしょう。貴方の立場がはっきりしましたら、又ご連絡します」
と言って、にこやかに去って行った。
というか、なんで彼はこの空気に耐えられたんだ?
あ、官僚だからか。
政治の世界で生きてるからか。
やはり狐狸妖怪は、中央に住みつくのだな。
ならば、このミニマムブラックホールにも耐性があるわけだ。
納得。
私にはレベルが高いが…
いやいや、この一連の空気は私に対してかも!!
だから彼は気付かなかったとか?
え?じゃあここにいるのって私の命の危機?
幼少期に培われた、殺気察知能力が総力を挙げて警報を鳴らしている。
これは走為上!!
逃ぐるを上と為すだ。
という事で、逃げろ。
「では、私も失礼いたします。ごきげんよう」
おほほほほとか言いながら去ろうとしたら、思いっきり腕つかまれてるし。
しかも痛いし。
「まだ何かご用でしょうか?」
といったら、すまないと言って腕を放してくれた。
馬鹿力め。
取り敢えず、「で?」
と問うと、「え?」と返された。
ので、「は?」
と言うと、「ん?」と返された。
ので、「ふざけてます?」
と聞くと、「至って真面目だ」と言われた。
ので、「そうですかー」
と言って遠い眼をすると、「そろそろ本題に入っていいか?」と言われた。
なんか責められてる気がするのは私の気のせいか?
責めていいのは私の方だと思うのだが…
「どうぞ」
ま、どうでもいいので話を促す。
「君は、これを夢と現実どちらだと思う?」
「え?私は現実だと思います。事実、現実だと認識してしまったので」
といって、今まで私が出した考えを宗谷英規に語ってみた。
ここに至る前のアルファロメオの落雷から、今に至るまでに出した私なりの考察を。
「君の話からすれば、やはり現実だと考えているんだろうな?」
「考えたくありませんが、現実だと思います。まぁ、会う人物皆が美男美女という点においてだけ、夢という可能性が残されていますが」
「…。夢である証明が美男美女…」
何故そんな目をする宗谷英規。
「私にとってはそうですが、宗谷さんはいかがです?」
「美男美女が夢の証明となるかどうかか?」
「いえ、この世界が夢か現実か?です」
宗谷英規は、一瞬ばつの悪そうな顔をしたが、元に戻る。
あんまり表情の動かない人だ。
あれ?そういえばいつの間にかカオス空間が払拭されている。
機嫌治ったのかな?
ちらと見たが無表情過ぎて判らなかった。
「まだ、何とも言えない」
「まぁ、そうですね。まだ2日目ですしあせらなくてもいいのでは?」
少し冷たかったかもしれないと、反省する。
明らかに、この異世界トリップは宗谷英規を狙ったものだ。
帰還方法も彼に対しては、確立されているのではないか?
その考えが、心をチクリとさした。
地球に帰還した後の事を考えると尚更。
はぁ、とその考えごと息とともに吐き出した。
思ったよりも余裕がないみたいだ。
昏い考えに陥りそうになりかけた時、宗谷英規が何かを言っている事に気づく。
が、テンパっていた私にはよく聞き取れなかった。
『君に会えた事までは夢にしたくない』
一瞬見せた彼の表情とその言葉に私は気付く事がなかった。




