廃工場の戦い
アルク達三人は麻薬に関する情報を求め、ギルドへと来ていた。あの後、三人と話し合い、グレナディン一家の者には、話を聞くことが出来ないとの結論に達した。ロックから何かしらの命令が出てるらしく、そのことを尋ねても皆口を閉ざしてしまうのだ。そこで冒険者ギルドで情報収集をしようとした。しかし、
「駄目だ。全然教えてくれないよ、アルク」
「ウチはギルドにも顔が聞くからね。冒険者もウチを敵に回したくはないでしょうし。情報屋に金をちらつかせても逃げちゃったわ」
「うーん。どうしようか、ハル」
いきなり手詰まりとなってしまった。何かいい手はないものかとアルクは悩む。情報に精通していて、かつグレナディン一家と関係なく、その名前に怯まぬもの。そこまで考え、アルクの脳裏にとある人物が浮かぶ。
「ハル。フランさんってどうかな」
『むぅ、奴か。心情的にはあまり関わりたくないが』
「うん、僕もそうだよ。でも他に方法もないし」
『仕方ない。とりあえず、行くか』
アルクはその考えをパナシェとライムに伝え、三人で相変わらず誰一人並んでいない受付カウンターへと向かう。ここをアルク達以外が使用している光景を、まだ一度も見たことはない。そして、今日もまた同じであった。三人の存在を見つけたその受付嬢は、大きく手を振ってくる。その度に僧帽筋が盛り上がり、その威力に耐え兼ねた肩口付近の生地がビリリと音を立て破けた。
「ようこそ、いらっしゃい、私の王子様。嬉しいわあ。今日は何のご用かしら」
破れた服を気にする素振りもなく、フランは盛大にウインクをする。アルクは心を無にしてその攻撃を受け流し、麻薬の件について尋ねようとした。しかし、それより先にフランが顎に人差し指をつけ、先を続ける。
「待って、当ててみせましょうか。アルクちゃんの今回の要件はねぇ~、この街で流行っているイケナイお薬のことかしら」
「っ、なんでそれを⁈」
「ふふっ、乙女はなんでも知ってるのよ。まあ、ロックちゃんが出来うる限り、ライムちゃんを近づけたくないのか、来ても教えるなって言ってきたけどね」
「やっぱり……。ねえ、フランちゃん。あたし、それでも知りたいの。自分に何が出来るかわからないけど、自分だけただじっとしているのは耐えられない。あたしは自分の弱さを、克服したい」
フランの言葉に項垂れつつも、ライムはそう懇願する。最後のほうは少しばかり掠れていたが、それでも勇気を振り絞って、自分の想いの丈を伝える。そんなライムにフランは聖母のごとく、優しく微笑んだ。
「ええ、いいわよ。私たち友達でしょ。好きなもので語り合える甘味フレンズ」
「えっ、いいの? ロックお兄ぃに話すなって言われているんでしょ」
「まあ、そうなんだけどね。でもぶっちゃけ、グレナディン一家が報復に来ても、私の相手にはならないからね。私屈強な男にしか興味はないしー。ジョーさんかロックちゃんぐらいじゃないかしらね、私を満足させてくれるのは」
『どういう意味で言っているのかは不明だが、まあこの男なら確かに大丈夫そうだ』
強さ以外の意味でいっているのだろうか、と疑問に思ったが、今は麻薬の情報を聞く方が先だった。アルクはフランに先を促す。
「それじゃあ、フランさん。教えてください」
「焦らないで、アルクちゃん。せっかちな男は嫌われるわよ。まあ、最初は皆そうだけれどね……」
『精神にくる会話だな』
「よく聞いてね、三人とも。この街の外れに廃工場があるのは知ってる? ライムちゃんは知ってると思うけど。そこは昔表向きは製糸工場だったんだけど、裏では麻薬を製造していたの。グレナディン一家に潰された後、誰も寄り付かなかったその場所で、再びゴロツキどもが集まってるって噂よ」
「じゃあ、そこに行けば」
「ふふ、何かが見つけられるかもね」
両手を頬にあて、フランは三人を眺める。
「ありがとう、フランさん。僕たちそこに行ってみます」
「ええ、気を付けてね。私は頑張る男の子の味方よ。暴走する迷宮から少女を助けたり、義賊の娘さんと一緒に麻薬取引を潰そうとする勇敢な少年のね」
「な、何故それを……」
唐突なその発言にアルクは驚愕に目を見開く。見ると、パナシェも同様であった。そんなアルク達にフランは変わらぬ様子で和やかに続ける。
「情報収集もまたギルド職員の仕事の一環よ。安心して。この件は別に誰にも知らせていないわ。私の趣味の一環みたいなものだから。汚い社会から小さな子を守ろうとしたのでしょ。ふふ、驚いている顔を可愛いけど、そろそろ行った方がいいんじゃないかしら。ほら、あそこの冒険者、グレナディン一家の構成員も兼任してるわよ。ほら、こっちを窺ってる」
フランの視線を探ると、たしかに冒険者の中の一人が遠目にこちらを窺っているのが見えた。ライムが急ごうとばかりにアルクの袖を引く。
「じゃ、じゃあ行ってきます。フランさん。その……ありがとうございました」
「ええ、武運を祈っているわ」
アルク達は監視を潜り抜けるため、足早にギルドを出る。少ししたところで、立ち止まるとハルが驚嘆の声をあげる。
『しかし驚いたな。あの男、本当に何者だ』
「敵意はないと思うけど」
マップの反応は緑だったし、それにあの微笑みには本当に優しさを感じさせられた。不本意なことではあったが。
「まあ、そんなことより、今はその廃工場にいくわよ」
「うん、オイラ達にはやらなくちゃならないことがあるからね」
『そうだな、今はとりあえず急ぐとしようか』
アルク達はライムの案内に従って、その街外れの廃工場へと向かったのだ。
廃工場の周囲は開発が進んでいないらしく、森の中に存在していた。そんな中を三人は進んでいた。日中であるにも関わらず、森の中は暗く、ひんやりとしている。
『成る程、こんな辺鄙なところに工場など普通は建てないからな。最初から麻薬製造のためにその工場は作られたのだろうな』
「そうね。この廃工場で麻薬を使った組織は本当に手ごわかったってお婆が言ってたわ。だから戦闘も酸鼻を極め、レーヌでは伝説になったらしいわよ。だから、ゴロツキだって近づかなかったんだけど」
「まあ、そんな場所だからこそ最適なのかもね」
「麻薬なんて人を不幸にするものを許しちゃ駄目だよ。せっかくライムのお婆さんが潰したのに」
「そうね。絶対に……許さない」
暗い情念の籠る声でライムが呟く。アルクはライムの精神面が大丈夫か不安となり、その表情を窺う。真っすぐに前を見つめたライムは、少しばかり気を張りすぎているように思う。
ハルもそんなライムが心配なのか、アルクだけに聞こえる念話で注意を促してくる。
『アルク。ライムは少しばかり気負いすぎているようだ。感情が高ぶると人は思慮を失いがちになる。飛び出していかないように気を付けろよ』
(うん、わかったよ)
同じように念話で会話している間も、ライムは先頭に立ち、駆けるような速さで進んでいく。しかし、このスピードで行進できるのもここまでであった。マップには二つ、反応が見つかっている。
「ライム、この先に二つの反応がある。気を付けて」
「わかったわ」
振り返り、頷いたライムは忍び足に切り替えて、先を進む。すると人の声らしいものが聞こえてくる。茂みに身を隠しながら、ぎりぎりのところまで三人は進む。限界まで近づき、茂みからそっとその人物を覗き見たアルクは、その人物に見覚えがあった。ライムも意外だったのか息を呑む音が聞こえた。
『あれはラチャオだな。相手もゴロツキらしい入れ墨男だな。まだクロと確定したわけではないが、相変わらず胡散臭い奴だ』
(声は聞きとれないね。読唇術って言うのは?)
『遠すぎて駄目だ。おっ、会話が終わったみたいだな。来るぞ』
ラチャオは会話相手の入れ墨男と別れると、こちらに向かってくる。アルク達は息を潜めて身を隠す。近づく足音に心臓の鼓動がやけに鮮明に聞こえる。やがて、足音が遠ざかり、
マップ上でも安全な場所まで遠ざかったのを見ると、アルク達は大きく息を吐きだした。
「はあ、緊張したぁ」
「本当だね。でも、やっぱりあの人あんま良くない感じだね。ライム?」
「なんであいつが。そんな……」
麻薬製造の疑惑ある工場付近であの男を見かけたのが、よっぽどショックだったのだろう。愕然とした様子で両手を地に着け、ライムは呆然としている。
「あいつが犯人なのかな。そういえばエリ湖でも見かけたし」
『まあ、我々もまだ麻薬製造の真偽すら分かっていない。まだあの男がクロと断じるには証拠もなにもない。冤罪で人を断罪するのは許されないからな。まあ、取り敢えずは目先の廃工場から調べようじゃないか』
「そ、そうよね。まだラチャオが悪いって決まったわけじゃないしね。もしかしたら偶然ここに来ただけかもしれないし」
ライムは立ち上がると、アルク達を廃工場へ誘う。その足取りは、先ほどよりも更に焦りが見て取れるものであった。
廃工場についた三人は、近くの茂みに身を潜めていた。その耳には男達の野太い声が届いている。静かな森に怒号や笑い声が響く。しかし、ここからでは遠すぎて何も確認することは出来ない。
『全部で十人か。……見つかったら戦闘は避けられないだろうな』
「でも、ここからじゃ何もわからないから、もう少し近づかないと」
『身を隠す段ボール箱もここにはない。しっかり、マップを確認して進めよ』
「うん」
マップの反応や地形、人の動きを確認しつつ、裏側入り口の裏側へと回る。そこの壁は年月のためか崩落しており、人が通れるスペースがあるのだ。そこから工場の建物の壁へと取り付く。建物の壁も長年の放置の結果か、大きく剥がれている場所が多々あり、アルク達はそこから、こっそりと中をのぞくことが出来た。見ると男達は休憩中らしく、地べたに座って駄弁っている最中であった。
『ここまでは拍子抜けしてしまうぐらいイージーだな。見張りもつけないとは……。コイツラの練度は大した事なさそうだが……』
そっと、耳を澄ますとごろつきたちの声が聞こえてくる。しかし、その声量は大きく、耳を澄ませる必要などなかったが。
「しかしよぉ、外に自生してる花引っこ抜いてくるだけで、こんなに金が入るなんて笑いが止まんねえな。麻薬ってやつは大したもんだ」
「ああ、まったくだ。グレナディン一家が面倒くさい正義感振りかざしてなけりゃあ、もっとおおっぴらに大金を稼ぐことが出来るのになあ」
「まったく、あいつら街の代表みたいな顔しやがって。腹が立つぜ」
男達は麻薬を売って大儲けしているらしい。そして、それを邪魔しているグレナディン一家の悪口を大声で言い合っている。
『……どうやら、奴らが麻薬製造や、その売買をしているのは間違いなさそうだな。正直に言えば、麻薬の現物が欲しいが、それを得るには奴らと闘う必要がありそうだ。流石に人間の大人十人を相手にするのはリスクがな……。アルク達はまだ子供だからなあ。ここは素直に引いて、冒険者ギルドに報告するのがいいと私は思うが』
「そうだね。でも……」
アルクがちらりとライムの方を見ると、歯ぎしりをして、怒りを堪えている姿がある。怒りのためか、顔は真っ赤だ。握りしめた手が小刻みに震えている。
「へっ、だけど今回凄腕の騎士様が中央から来るんだろ。狙いはあの婆らしいぜ。そうしたらあの一家も終わりだな」
「ああ、これでようやく窮屈な思いをせずに済む。まったく、あの婆も早くくたばって欲しいぜ」
敬愛する一家やお婆への侮蔑を聞いた瞬間、ライムが跳ね起きていた。アルクは咄嗟に制止しようと手を伸ばすが、寸でのところですり抜けてしまった。ライムは崩落した壁へと身を踊り出すと、ベルトのナイフを一本取り出し、大きく振りかぶって、ひときわ大きい男へと投げつける。巨漢は呆けたように己へと突き刺さったナイフをぽかんと眺める。そして、痛みに気付くと喚きたてながら、地面へと転がる。
「ぎゃあっ⁈ 痛ぇ? 痛えぇーーーー」
「なっ、なんだあ。てめえッ! 何しやがる」
「それはこっちのセリフよ。ここはあたし達グレナディン一家のシマよ。随分と好き勝手してくれたじゃないっ! 覚悟は出来てるのっ!」
威勢よく啖呵を切るライム。その横にアルク達も並び、己の獲物を構える。
『危惧していたことが起こってしまったな』
「うん、でももうどうしようもないし」
「こうなったらやるだけだよ」
アルク達の姿を認めたゴロツキたちは、少しばかり安堵した様子で、幼い襲撃者を嘲笑し始める。
「なんだあ、こいつら」
「おい、あの黒い髪の女。ありゃ、グレナディン一家の」
「マジかっ、嗅ぎつけられたかっ⁈」
ライムの姿に男達に動揺が走る。そんな男達に人差し指を突きつけ、ライムは更に糾問した。
「麻薬なんてもの売り捌いたら、どれだけ堅気の人たちが不幸になると思ってるのよ。表の世界からいくら身をやつしても、貫かなくてはならない仁義ってものがあるでしょうが。それすら掲げられなくなったら、正真正銘のクズよ」
「そうだそうだっ、仁義だよっ」
パナシェがライムに追随し、スコップを天に突きつける。男達は最初はライムの剣幕とグレナディン一家の名前に臆したようであったが、次第に小さな子供に責められる怒りが勝ったのか、激高し始める。
「うるせえっ! 確かに俺たちはヤクを売り捌いたかもしれねえが、自分の意思で買ったのはあいつらの方じゃねえか」
「そうだっ! 見られたからには生かしておけねえ。ここでコイツラを殺っちまえば」
男たちはいきりながら、持っていたナイフなどの獲物を構えだす。
「うわっ、開き直った」
『ここで私たちを殺しても、他にそれを知るものがいれば、どうにかなる問題ではないのだが……。まあ、言っても解らないだろうな。アルク、初の対人戦だ。今回はロックが仲裁にくることもない。構えからして雑魚ではあるが、気を付けろ。いざという時は……躊躇うなよ』
「うん」
アルクも気合を入れなおして、ハルを構える。対人戦の訓練はモルトやセゾン達と行ったこともあるし、バーチャルでパナシェと共に、見知らぬ仮想現実での野盗を斬ったことはある。しかし、現実を生きている人間での真剣勝負は初めてであった。
「いくよっ、パナシェ、ライム」
「うんっ」
「こいつら、ぶっ潰す」
相手のうちの二人が意を決したかのように、ナイフを構えて奇声をあげ、突っ込んできた。狙われたのはアルクだ。その愚直な突進は、少女よりかは躊躇い難いと判断されたためだろうか。しかし、パナシェが横に並び、スコップを構える。一人を受け持ってくれるらしい。
体格では相手が遥かに勝っている。たいした戦闘訓練を受けていない相手でも、組みあうことは下策だろう。アルクは踏み込むと冷静に相手の利き腕を狙って、剣を振った。
「ゲエッ!」
その鋭さに、咄嗟に避ける動作を行ったゴロツキは、そのため利き腕を浅く斬られるだけで済んだ。しかし、痛みに怯んだのか、立ち竦んでしまう。あまり慣れていないのだろう。アルクはそう冷静に観察すると共に、男の側面へと回り込み、その太腿に銀の刀身を素早く突き入れる。ハルの鋭い切っ先は滑り込む様にして、男の筋肉へと潜り込んだ。足を奪ってしまえば、後はどうにでも料理できるとの計算の上での攻撃であった。
「あっ、足がああああっ」
男が傷口を抑え、もんどりうって倒れる。その際、取り落としたナイフを遠くへ蹴り上げながら、パナシェの方を見る。パナシェの足元にも男が崩れ落ちており、その腕はあらぬ方
向へと曲がっている。その体格から力を見誤り、受け損なった結果だろう。
「こっ、こいつ等強ぇ」
「マジかよっ、どうする」
あっという間に二人が戦闘不能になったのを目撃し、男たちが後ずさる。逃走されたら嫌だと感じたアルクは、一気に勝負に出ることにした。
「ハル、アレをやろうと思うんだけど」
「ああ、アレか。そうだな。もってこいの場面かもな」
「よしっ、行くよ」
アルクは一気に男達の中心へと切り込む。既に尻込みしている男たちは、アルクの大振りを大げさに避け、散会する。その予想通りの動きに、アルクはニィと獰猛に笑った。
「スタンッ――」
ハルの白銀の刀身を翻し、勢いよく地面へと突き立てる。
「ボルトッッッ!」
練り上げられたマナが、雷へと変換され、ハルを通して周囲へと拡散する。電流が男達を襲い、仰け反る様にして地へと倒れ伏す。この新魔法は、威力こそ少ないものの、集団戦、乱戦に絶大な効果を発揮するとっておきであった。くらった男達も、死にはしないものの、地へと倒れ伏し、地に打ち上げられた魚の様に痙攣している。
「ヒィィ」
かろうじて電流を逃れた二人が、その威力に戦意を喪失し、背中を見せて逃走を開始する。しかし、そのがら空きの背後に向けて、二本のナイフが容赦なく突き刺さった。
「ギャアァ」
太腿の裏にナイフが突き刺さった男たちは似たようなリアクションを取りながら、地面を転げまわる。この時点で、この場に立っているのはアルク達三人であった。しかし――。
『一人逃げられたな』
「凄い速さだったねえ」
先ほどラチャオと話していた入れ墨の男は、戦闘が始まるや否や、背を向けて逃走し、戦闘中にあっという間に、マップの範囲外へと逃れてしまったのだ。
『あいつを取り逃がしたのは仕方ないが、子供三人の来襲にあの逃げ足とは用心深いにも程がある。捕まってはいけない理由があったのかもしれないな。だが、この場を取り押さえられたのだけでも、良しとするしかないか。男どもを縛り上げて、中を調べよう』
「うん、そうだね」
アルクは倒れた男たちを、パナシェやライムと共に縛り上げる。その上で、怪我した男たちはパナシェが加護で癒す。痛そうだから、というのがその理由であった。建物内を調べると、キセクの花や、それを粉末に加工したものが発見された。これで、動かぬ証拠を手に入れたアルク達であった。しかし、そこでアルクはふと疑問に思う。
「ねえ、ハル。別にグレナディン一家じゃない、この人たちが麻薬製造してても、全然問題ないよね」
しかし、返ってきたのは予想外の答えだった。
『いや、そうとも言えないだろう。例え、全然関係がなくても、こいつらが関係者ですと言い張れば、疑惑はグレナディン一家に行くだろう。それに、グレナディン一家が直接関与していなくとも、その多くの傘下のうちの一つだったなら、責任の追及は可能だ』
ハルの言葉を聞いたライムが、ゴロツキのリーダーらしい男に短刀を突きつけながら、詰問する。
「ねえ、あんたたち。グレナディン一家の名前を騙って、適当扱いてただけでしょ」
しかし、男たちはそんなライムの言葉を、無慈悲にも否定した。
「いえっ、俺らグレナディン一家のある方に命じられてやってました。その人もグレナディン一家と反目しあって、本当は凄く仲が悪いって話らしいです。」
「はあっ⁉ あんた達、嘘をつくのもいい加減になさい」
「ぐえっ。い、いえ、本当なんです。勿論、本当かは俺らも解りませんが、ある時、さっき一緒にいた入れ墨の男がやってきて、これはある人の命令だから、内密になって」
「そのある人って誰よ」
「ろ、ロックさんです。グブッ」
ロックの名前を聞いたライムは、リーダーの首元を強く締め付ける。蛙のような声をだした男を見て、パナシェが慌ててライムを制止した。しかし、止まることなくライムは男の襟を強く締め続けた。
「ふざけないでよっ! お兄ぃがそんなことするわけないでしょ」
「お、俺らも本当にロックさんの命令かは分からないです。でも、あの男がやたらロックさんの名前を連呼してて」
なおも締め付けようとするライムを、アルクが止めた。
「落ち着いて、ライム。こいつらもそれいじょうは何もしらないと思うよ」
『ああ、今回の件を画策した奴らが、ただロックの名を騙ったのだろう。我々は速やかにこの場を離れ、ギルドにこの場所を報告したほうがいい。今、我々に必要なのは憤ることでなく、真相を掴むことだ』
「そ、そうね」
アルク達の説得で、ライムはようやく男の首を絞めることを辞める。その後、アルク達は男達を放置し、この場を離れ、フランにそのことを告げた。その後、男たちは麻薬を扱った罪人として、捕縛されたとの報が出たが、そこにグレナディン一家の名前は出ていなかった。




