第7癒 壊され潰されが定めの世
頭が痛い。身体も痛い。
「いたた、ここは?」
俺は周りを見渡してみるが、暗くてよくわからない。
だが、とても寒い。周りは見えないがとりあえず触ってみる。ゴツゴツして、冷たい。
「俺が落ちたのは洞窟型のダンジョンなのか?」
少し暗闇に目が慣れてきた。もう一度周りを見渡してみる。
周りは確かに洞窟ぽい気がした。ただ…目の前には巨大なボス部屋の扉があった。
「さすがにダンジョン入ってすぐにボスってのはないよな?」
俺は少し困惑しながらも、ドアに近づく。
ムニュ。
なにか足元から変な音がした。
足元を見てみると…俺の嫌いな…デカくてぶよぶよした虫がいた。
違うモンスターならば避けられたかもしれない。だが、俺はどうしても、どうしても虫だけはだめなんだ。
俺は反射で叫んでしまった。
「ガントレット!今は時間がないから手短に伝えて!なにができる!」
私はできる限りの力で走りながら聞く。
「オマエノシッテイル、マホウ、ジリツシコウ、シャベル、アトジブンノコトハジユウニウゴカセル」
そう喋ると、私の左腕はひとりでに動く。
「分かった。左の操作は任せたよ!」
「マカセテオケ。バンジカイケツシテヤル」
本当にこのガントレットを選んでよかった。
このダンジョンが終わったら名前をつけてあげると心に決めた頃、アサはヒーロのところにたどり着いた。
「助けてくれ!虫が!虫が!」
私を見るなりそう叫ぶヒーロ。私はその場面を見て笑いそうになってしまったが、デカめのムニュっとした虫が自分の巣にヒーロを入れようとしていることに気がついた。
「しょうがないな。助けてあげるよ」
『収縮せよ!我らが母なる水よ!スプリンクルアクア!』
前に使った魔法の応用である。
私は水を操り、虫の巣から空気をなくしていき、虫たちを退散させる。
「ありがとうアサ。危うく死ぬところだった」
そういいながら頭を下げる。
「まあいいよ。とりあえず生きててよかった」
続けてアサは俺のことを嘲笑うように言う
「それにしても、神を殺して、最強パーティーのリーダーが虫嫌いだなんて、驚きだね」
アサは虫を1つ掴み潰す。
「ほら、全然怖くない」
「いや俺はお前が怖い」
俺がそういい終わると、虫を潰した手を俺の顔の前に出す。
「なにが怖いのかな〜?私に言ってみなよ〜」
俺はすぐに後ろに下り膝をつく。
「まあそれで許してあげましょう」
アサはそう言うとくるりと後ろを向き、杖と左腕を構える。
「ドア、開けて。ボスを私の最大火力で潰してあげる」
「流石に無理じゃないか?クエストの紙があんなに古かったんだ。それだけ強いってことだろ」
俺は首を振りながらもドアの前に立つ。
「どうせ言うんだろ。私は最強だって。もう耳にタコができるぐらい聞いた。油断するなよ」
俺は言い終わるとドアを蹴り破る。
「やれ!」
「言われなくてもね!」
俺はボスの見た目を確認する。黒い岩の巨人のようなモンスターだ。ゴツゴツしていて、手も足も岩でできている。
「アサ!こいつは硬い!気をつけろ!」
アサはうなずきもせず、行動で示そうとする。そして、自信満々に詠唱をする。
『千を超えし海神よ!我が杖に宿り穿ち抜け!マーレショット!』
『スベテヲムニシ、カイジンニキセ、ブラストボム』
最初に見えたのは、アサに杖の先から出る一本の線だった。詠唱を聞いていなければ水だとわからないほどの、細くて、鋭い線。視界の端には、ガントレットから放たれるボム。
鋭い線が黒い岩の中心を撃ち抜いたとき、ガントレットが放ったボムが爆発した。
「熱っ!」
だいぶ離れているここでも熱いというのに、アサは一体何千度という温度に耐えているのか?
耐えていると言うには少し楽しそうすぎな顔だとは思うが。
アサがこちらを向いて叫ぶ。
「ヒーロ!この感じだと倒したっぽいよ!」
「待て!そいつはまだ動いている!」
アサは俺の声が聞こえたのか後ろを振り向く。
撃ち抜かれて、砕けた顔だと思われる岩は修復され、ボムによる爆破で粉々だった腕は周りの岩をくっつけている。
「なあ、アサ。潰すんじゃなかったか?」
俺は笑いがこらえきれずにクフフと笑いながら問う。
「うるさいな。まだ勝負はこれからじゃないの?」
「そうかもな」
アサの最大火力でも倒せない相手。
今までアサのことをヤバイやつだと思っていたが自分も同類だったとはな。
この一週間の成果を見せてやるよ!
「アサ!もう一度最大火力打てるか?今度は広範囲のやつを!」
「誰に物言ってるのヒーロ!この最強にできないことなんてないよ!」
杖から小規模な攻撃を出しながらアサは答える。
「ガントレット!お前、バフは掛けれるか!」
「アタリマエダロウ」
この返事が聞きたかった。コマはすべて揃い、あとは組み立てるだけ。
3分で終わらせてやる。
「アサ!魔法の詠唱を始めてくれ!ガントレット!バフも開始しろ!」
「リョウカイ」
「りょ〜かい」
二人の声が揃う。
『ヤドリシチカラヲツエサキニアツメヨ、アブソリュートブレイク』
見るだけで分かるほど、強さが倍増している。
『新星の爆破!今ここに再現せよ!ノヴァバースト!』
アサの杖先から、爆発の起点となる玉が音を置き去りにして飛んだ。
あの玉は、岩も、ガントレットも、アサですら見えなかったであろう。
だが、俺は見えていた。
『リストアタイム』
俺がそうつぶやくと、俺以外の動きが、極端に遅くなった。
『爆風を生みし風の覇者よ!我が手の平顕現し、飛ばせ!バーストブラスト!』
次の瞬間、爆風によりさらに加速された玉は、音すらも、光すらも置き去りにして弾けた。




