第13癒 出会いの歴史の一歩
「コロッんんっんっ」
死ぬ。すぐに口をふさいだが、声が漏れた。
仮に聞こえていたら死ぬ。
そんな緊張の中、心臓の音だけが流れてい
く。
「おい、今なにか聞こえなかったか?もしか
して起きているのかも」
「何いってんだサル。起きてるわけ無いって
言ったのはお前だろ?」
「それもそうか。俺等も寝ようぜ。久しぶりに酒が飲みたいが、今日は無理みたいだしな」
「酒は明日にお預けだ。いい夜を」
その声がした後、カツカツと音がして部屋から通り過ぎていった。
まだ私の心臓の鼓動が聞こえる。生きている。
だが、ここにいたらその音も止まってしまう。早く逃げなければ。
私は細心の注意を払いながらベッドから起き上がり、机においていた"それ"をポケットに入れる。
チャキと音がする。
音を出さないように忍び足で窓に近づき、手をかける。
力を入れてあげようとするが、開かない。
カギがかかっている。まさか逃げることが読まれていたのか?
だが、ばれていても問題はない。鍵ごときはこれで突破できる。
ダン!と音がするが気にせずに窓を開けて脱出する。後ろからどたどたと私がいた部屋に集まる音がする。
私はそこが見えるような位置に身を隠し、盗み見する。自分の鼓動の音すら抑え、木陰に隠れる。
その直後、サルがアルベルトに指示を出す声が聞こえた。
「アルベルト!お前はスキルで探し出せ!」
「分かった」
短くそう答えると、何かをつぶやいている。
スキル?この世界にあるのは魔法だけではなかったのか?そう塔曲から聞いていたはずだが、まさか嘘を?
『探査設眼』
そう聞こえた瞬間、何かに監視されているような、不気味な視線を私の背中が感じ取った。
「おい!いたぞ!」
その声が聞こえた刹那、銃蓮は駆け出していた。
「逃がすな!撃て!アルベルトォオオ!」
先程とは比べ物にならない大きさの音が鳴り、右足に強烈な痛みを感じる。だが走れないほどではない。まだいける。こんなもの、SATで飽きるほど食らった。
そして、走りながら狙った場所を正確に打ち抜く方法も、学んだ。
右のポケットに入っている物を取り出し、彼の右腕を狙い撃つ。
あとは見なくてもわかる。痛みに悶える声と、液体が降り注ぐ音。
その二つがあれば十分だ。
私はもだえる声が遠くなることを感じながら、森を抜けていった。
森を抜けてから数時間歩くと、そこには町が広がっていた。私は町に近づこうと思い、歩く。
さすがに疲労がたまっているのでどこかで休みたい。少し足取りがおぼつかなくなってくるが、まだ歩ける。どうにか歩き、門をくぐる。
守衛たちがこちらを見てくるような気がするが、気のせいだろう。
少し奥に、宿屋のようなものが見える。とりあえずはそこを目指して歩くことにする。
一歩、一歩、と歩くごとにふらふらしてくる。もう歩くことさえきつい。
「……陀は………だろ」
耳もほとんど聞こえない。脱水症状が出ているかもしれない。
「アサも……そんなこ……よな」
もう限界かもしれない。あと少しなのに足も上がらず、頭をあげることも難しい。
その、刹那だった。
何かにぶつかり、後ろへ転ぶ。
「大丈夫ですか?」
誰かが手を伸ばしてくる。
「だから前見なよって言ったじゃん~ヒーロ」
ヒーロ。ぶつかってきた相手はそういうらしい。手を伸ばしてくれているが、今の私には掴む力もない。そのまま数秒が経過すると、周りが騒がしくなってきた。
「どいてどいて、俺達は守衛だよ」
そんな声が聞こえて、足音とともに向かってくる。
守衛が私の直ぐ側まで来て、運ぼうとする。誰かが動けないことを見越して読んでくれたのかもしれない。
「守衛さんですか?この人が具合悪そうで……」
「はいはいわかったよ。とりあえず連れて行くから」
そう言って私は6人の守衛に連れられて病院かどこかへ行くはずだった。
連れられてついたのはどこかの地下室だった。
鉄の匂いが充満していて、うめき声も聞こえる。やばいということは分かる。
守衛たちが誰かと話す終えたあと、ペンチを持った男が近づいてきた。
「私があなたの拷問官です。名前は名乗りませんよ?あなたのような汚らわしい異世界人に名乗る名前などありませんですからね」
……拷問?なぜ拷問されるのだ?私がなにかしたというのか。
とりあえず脱出しようと試みるが、ガッチガチに体を固定されている。動けない。
「あなた、何がなんだかわからないという顔をしていますね。良いです。教えてあげますよ。簡潔に言えば、」
「あなたの、脳をいただきます」




