第12癒 奪国のみちしるべ
第1章 リストアシュート編 終
風が吹いている。女は風の吹き荒れる草原の真ん中に立っていた。いや、今立った。
周りに見えるは草のみ。そんな中、女は今唐突に現れた。
女はひどく焦っている。額から汗が吹き出し、足も震えている。
女にはこんなときにはいつも口ずさむ歌があった。幼少期からずっと記憶に残り続ける歌を。
「かーごめかごめ♪」
このフレーズを口ずさむと、心が落ち着いてきた。
冷静になった彼女は持ち物を確認する。ポケットに手が触れると、チャキっといった金属音が聞こえてきた。
◆◆◆
ガタガタと体を揺らされる。まだ眠く、体も気だるいが少し目を開ける。
アサが俺の体を勢いよく揺らしてくる。これ以上狸寝入りしていたらガントレットで殴られる。そんな嫌な予感がしたので仕方なく体を起こして聞く。
「どしたんだよ…まだ眠いんだけど」
「やばいの!やばいから早く来て!」
アサに引っ張られて俺は部屋を出る。そのまま廊下を通ってリビングに出ると、言葉に出来ないほど凄惨な現場だった。鼻につく鉄の匂いが俺の目を覚ます。
あんなにきれいだったリビングのカーテンは赤く染められ、キッチンは元が赤だったのではと錯覚するほど。全く持って以前の景色を保てていない。
「違うんだよヒーロ。これには深いわけが…」
「そうですよヒーロ君。私たちも悪気があったわけじゃ」
俺は話を遮って話す。
「で、何でこんな事に?アサは少なくとも料理できないよな?」
キッチンの中に入っていき、豚か何かの残骸を指差す。
「何でこうなるんだよ。なんかすごいことなってんじゃねえか。残骸じゃねえかよ。もったいないだろ!食べ物で遊ぶんじゃねえ」
「要陀はなんでだよ。お前剣を使ってんだろ。刃物の扱いがうまくあれよ!とりあえず片付けろよ!」
なぜ急に料理をするのか、なぜ解体するだけでここまでの範囲に飛び散ったのかは今は聞かない。
眠いから寝たい。
自分の部屋に戻る最中、横に目をやる。
横目で見るあいつらは少ししょぼんとしていた。
ベッドで寝転がって少し目をつぶる。ほんの少しのように感じたが目が覚めてから時計を見ると八時間がたっていた。のどが乾いたので冷蔵庫を開けて中から要陀からもらった激甘であろう抹茶に手を付ける。今はもうあの甘い匂いはしない。
一口飲む。
冷たい液体がのどを通るのを感じる。やっぱり甘い。
それにしてもなぜあんな箱で飲み物が冷えるのだろう。考えた人はすごいな。
「ヒーロ!ご飯できたよ〜」
アサが呼んでいる。行かなくては……って、アサが作ったのか?!
俺はあの凄惨な状況を見たくないと頭で思いながら急いで部屋を出る。
目の前に広がったのは一面赤色ではなく
机いっぱいに広がる豪華な料理だった。
◆◆◆
女は歩き続け、ついに永久に続くかと思われた草原を抜けた。
草原と森の境目、数え切れないほどの木が生えてるなかで、ひっそりと置かれている看板に気が付いた。
その看板に近づいてみると、奥には獣道が続いている。
看板に書いてある内容を読んでみる。
【Follow the way】
道に進め。そう書いている。
女は果たしてその言葉を信じていいのか迷っているが、見知らぬ場所に転移してきた時点で危ないも何もないと気が付き、その道を進んでいった。
十分と少し歩いてゆくと、木でできた大きめな屋敷がでてきた。
正確には平屋といったほうがいいかもしれない。一階部分しかなく、横からみたらこの家の存在は気が付かないだろう。
女はドアをノックすることにした。
コン コン コン コン
4回鳴らす。こんなときでも4回鳴らしてしまうのは一種のクセであろう。
少しドタバタと音がして、ドアが開く。
開けられたドアの先には人が7人。
ドアを開けてもらったはいいが、あまり歓迎はされてない。
ドアの先の7人にはそれぞれ武器が握られていた。
2人はサーベルを持ち、3人は刀。残りの2人は少し離れたところで長細い何かとナタを持っている。
どうしようか女が考えていると、刀を持った男が喋りかけてきた。
「おい、お前はどこの国の刺客だ?」
そう言って刀を近づけてくる。
首筋に当たりそうな位置で刀を持ってこられるのは流石に怖い。
女はその刀をはねのけ、答える。
「日本。京都から来た」
その答えを聞いてもなお、武器を向けてくる。
「京都の紅葉が有名な寺は?」
なぜそんな事が聞かれるか分からないが、答える。
「清水寺?」
………
その言葉を聞くやいなや、彼らは武器を下げ始める。
「悪かったな。俺達も命懸けなんだ」
そう言って彼らは家の中に入れてくれる。
「でよ、嬢ちゃん。名前聞いてもいいか?」
「私は狙投車銃蓮。警察よ」
そう言うと彼らは次々に自己紹介をしていった。
夜も更け、ここがどこかも教えてもらえた。
まさかーーーーいわゆる異世界…だったとは。
「今日はゆっくり休むといい。この一番奥の部屋を使ってくれ」
そう言ってくれたのでお言葉に甘える。
「ありがとうございます」
そう言って私は部屋に入った。
サーベル使いのベル・ベスキー、サル・ベスキー。
刀使いの塔曲雪衣、レロベルト・ローレン、敷露旭影。
ナタ使いのアクエ・デ・エボレスキー
長細い何か、これは狙撃銃だった。
スナイパーの砂井・アルベルト・パー
これが今ここにいる人達らしい。
明日は何かできるようなことがあるか考えていると、眠気に襲われてウトウトしてきた。不意に廊下から会話が聞こえてきた。
「おい、アルベルト。あの女は俺達の仲間に入ると思うか?」
「こんなとこで話すんじゃねえよ。聞かれたらどうする」
「聞かれるわけ無いだろ。あいつはぐっすりだろ。こんなとこに来ちまって疲れないわけがない」
「まあそうだな。あの女が仲間になるのは五分五分ってとこだな。もし仲間にならなければ、可哀想だけど」
「殺すしか無い」
第2章 異世界人奪国編 始




