第10癒 スパッとやってドーン
「ナニヲヤッテイル。キヲツケロトイワレタバカリダロウ」
後頭部あたりから機械音が聞こえる。
何この音?
そう思って後ろを振り返るとアサのガントレットがある。少し焦げ跡がついているが、太陽に照らされ、光っている。
「なあ、アサ。今ガントレットが喋っていなかったか?」
「え?うん。そうだけど。それがどうしたの?」
「いやいや、え、おかしいのは俺のなのか?ガントレットは喋らないよな」
そう喋っている間に、もう一撃爆発が飛んでくる。それをあえて俺は受ける。
腕が片方吹き飛ぶが、俺は気にせずに話す。
「ほら、デカい岩のモンスターの時も喋ってたじゃん〜。詠唱もしていたし」
そういえばそんな気もする。
「ワスレルナンテヒドイジャナイカ。イマモイノチヲスクッテヤッタノニ」
「そうだ!それだよ。アサがこの爆発に気づくとは思えないんだけど、お前って自立して動けるのか?」
「ソウダ。ヨクワカッタナ。コイツハキガツカナカッタトイウノニ」
そうこう話している間に六発はこちらに向かって爆発してきた。
最初は片腕、回復。右足、回復。横腹、回復。指先、回復。髪の先。する必要なし。最後は外していた。
まあ、奪ったそばから回復していく姿を見たら、心を折られて狙いがずれるのも分かる。
外れても近づいてこないのは近接に自身がない証拠。こっちから近づいていけば速攻確保できるだろう。
けど、それじゃ面白くない。どうせなら人としての尊厳を奪っても許されると思う。だってあいつらも奪ってきたからな。体と寝床を。
「アサ、拘束魔法って使えるか?」
俺はあえて聞こえるように大声で聞く。
「もっちろん!使えるよ〜」
「じゃあ、3秒数えたら使ってくれ」
「わかった。行くよ」
1,2,3。
詠唱と同時に走り出す。
『捕らえよ!宿電の籠!ビリスカーテン!』
いた。
木の陰でしびれて動けていない。
意外と楽しみだったのに、寝床を奪ったことを後悔させてやる。
『リストアタイム』
視界がすべて遅くなる。その中でも俺は動き続け、マジッカーの胸ぐらをつかむ。
後は唱えるだけ。
『幽生換え霊生となれ!ゴースランデブー!』
「そのまま苦しめ。何も感じられぬ恐怖で」
このマジッカーは3日は何も感じられず、触れることもできないだろう。もちろん認識されることもない。俺以外には。
俺はこいつがいる場所に向き、首を掴む。そして引きずって行く。木の焼け焦げた匂いで顔をしかめてしまう。
「どうしたの?顔をしかめて?体調でも悪い?」
「いや、なんでもない。それより、犯人を捕まえたから戻ろう」
「え?!どこにいるの?どこにもいないけど」
そう言ってアサは周りを見渡す。
「今は見えないかな。魔法をかけたから」
そう言って歩いてく。俺達が通った跡には、木も、草も、何も残っていなかった。
家の前に付くと、なぜかゴージャスなパラソルと、椅子があった。要陀が手に持っているのは抹茶。しかも角砂糖3つとガムシロップが入っている。甘い匂いがここまで辿ってくる。
「あら、おかえりなさい。お疲れでしょうし、お茶でも?」
妙に優しいのがとても怖い。
「ああ、その砂糖がエグいくらい入っている奴はいらないけど。あと、お前には見えっ」
俺が言葉を紡いでいたとき、俺の右手から頭1つ分ほどの重さが消えた。その事を認識することと同時に、顔に生ぬるい液体が飛び散り、アサの頬に、どす黒い、赤い液体がかかる。その液体は右手から吹き出している。正確には、右手より少し上の位置だが。
俺は要陀の方を向く。無表情でお茶を飲んでいるが、左手は揺れている。刀を振った証拠だ。
俺は要陀に詰め寄り、問いただす。
「おい、要陀。何で殺した?なぜ見えていた?」
要陀は湯気の経っている抹茶を一口のみ、答える。
「わたしの真理の目はすべてを見透す。それだけです」
その返答には満足できず、さらに問いかけようとしたとき、急に隣から崩れ落ちる音がした。振り返るとそこにはアサが崩れ落ちている。
息も荒く、見た感じ異常に心拍が早い。
異常だ。これはなにか、トラウマが蘇ったかのような。
私は、もともと裕福な家系の出だった。母と父、そして兄。父は小規模な土地を治めており、人々に指示をして最前に立つ姿が好きだった。
兄は温厚で優しく、常に一番だった。魔法も私よりもうまく扱えて威力も速度も私以上。剣術も師範を倒せる実力。私の自慢の兄だった。
けれども、あの夜。私は確かに見た。業火に焼かれて潰えていく家の一角。私が両親を起こしに行こうとしたとき、すでに兄が両親の部屋についていた。ドアを開けたときは両親は寝ていた。寝ていたように見えた。兄の腕に鋭く、尖った、血に塗れた剣が見えるまでは。
そこから先はよく覚えていない。無我夢中でドアを開けたと思えば、兄の脇を通り過ぎて窓から脱出した。
横目で見た両親は、首から上がなくて死んでいた。
兄の横を通り過ぎる間、1つだけ覚えていることがある。
兄は確かに、こう言っていた。
「また会おうね〜。我が可愛い妹よ〜」




