ミールの決意Ⅰ
ミールさんの言うには、パーミルの街まで行って救援を連れて来ていては、到底間に合わない事は判っていた。
最初はこっそりヤツらのアジトに戻って、隙をみて妹さんだけでも救出を…とか考えていたそうだ。
だがヤツらの監視は非常に厳しく、そんな隙を見つける事は出来なかった。
そこで森の中で、誰か助力を頼めるひとを探す事にした。
しかしこんな辺鄙な森の中で、ひとに会える確率などとても低い。
ましてや出会えたとして、その人がひと拐い共をけちらせる強さを持っている確率となれば、ほぼゼロだろう。
「だからウチは、ウルティナ様に祈ったのニャ。誰か力を持っているひとが、ウチの前に現れるのを。」
"獣神ウルティナ"…その名前は知っている。
確かビースト種族の神様で、月と時間の神様でもあったはずだ。
この『アレス』の世界では、超高位的存在として普通に神様がいる。
ゲームでは、その下位従属神クラスをイベント上位者報酬として得られたり、神様自身から頼み事をしてくることもあった。
そしてその神様達は、時として人々の願いを叶える事がある。
所謂『神の奇跡』というヤツだが、キセキといわれるだけあって、めったにある訳ではない。
大抵はハイレベルの神官や巫女が祈って、初めて神様が聞きいれるはずだ。
言っては悪いが、ミールさんが祈ってもそのようなキセキがおきるとは思えないのだが…
あっ!もし俺が神様だったら、間違いなくお願いを聞き入れちゃうと思うけどね!
その俺の言葉に軽く笑って、ミールさんは話しを続けた。
「ウチもそうおもったニャ。
だからウチは『父と母、祖先と己が名において』ウルティナ様に祈ったのニャ。」
「っ!ミールっ!」
その言葉に俺以外の皆が、息をのんだのがわかった。
「?」
俺は何の事だか解らない。
「ミール、君はウルティナ神と『神前契約』をして、聞き入れられたのか…」
『神前契約』?…どこかで聞いたことがあるような…。
いつかのイベントでそれを聞いた気がする。
…だめだ、思い出せねー。
「どうやらキミは『神前契約』について知らないようだな。
キミのいた所には無かったのか。」
バルストさんは俺の不審な顔を見て、そう思ったらしい。
だが続けて説明してくれそうなバルストさんの言葉を、ミールさんは手で止めた。




