回帰そして方法的懐疑
俺達は顔を見合わせ、そして鏡写しのように首を傾げる。
「とりあえず、追っかけちゃう?」
「まぁ、任せます。無茶はしないで下さいね」
フルハーネスをカチャカチャとやりながら、楽し気な公右衛門。
「相手次第ってとこだな」
この時間帯でもこの辺りはまだ、大型車両が多く、新富士川橋までは信号も多いし、なにより、一般道であるからして、当然バトルなどはしない。大前提として。
流れるようないいリズムで、ランデヴーを続ける2台の昭和50年型のフェアレディZ。
俺は敢えて、前に出るような事はせず、一定の距離を保って、相手の技量を値踏みするかのように付いて行く。
しかし、上手い乗り手だ。後ろから見ていても、マインドの志向がはっきりしている。気持ちのよい走りだ。まるで昔からの仲間のように走りの呼吸がシンクロしているのが少々不気味ではあるのだが。
不思議な事に、信号にもひっかからず、通常では林のように連なるパネルトラックや、大型特殊用のトレーラーが、気持ち悪い程いない。
新富士川橋手前、なかなかイイ線いってる乗り手を目の前に、年甲斐も無く些か熱くなりかけていた気持ちを、これまたナイスなタイミングで、赤信号が抑える。
トラックのせいで横に付けられず、彼の後ろに付いたまま、信号の変わるのを待つ。
ふと、公右衛門が「なんか、あのZ、似てますねこのZに」などと、スっとぼけたことをいうので、同じ車種なんだから、似てるも何も……と、言おうとしたが、青に変わったので、何も言わず出る。
2速に入れた途端、強烈な加速で俺達のZを置き去りにする彼のZ。ターボ車特有の不自然な魔力を持つ加速を後ろから眺め、公右衛門の言いたかった事が理解出来た。
「(あれは、俺なのか?)」
吐いたつもりは無かったが、無意識のうちに言葉にしていたのであろうか? 俺を鼻で嗤う公右衛門。
「ぁに言ってんスか。寒ィっすよ。晴男さん」
「そっそうだよなぁ……」
ちっ、何言ってんだ俺! 疲れてんのかな? トシか? ああヤダヤダ。とか、自分で自分の顔が赤くなってんのが分かる程の恥ずかしさを隠すように、スロットルペダルを踏み込む、3、4、5速直結。エンジンの回転とミッションの回転が同じになる。マシンが意識と直接繋がる感覚に目眩がするほどシビれる。
「晴男さん、リミット8000でヨロシク!」
「わかってるって」
ハートは灼熱に燃えていはいるが、頭の方は恐ろしくクールに冴えている。脳汁の分泌が活性を帯びる。
ヤツは五速トップエンドでもうアタマ打ちだろう。しかし俺は、もうイッコ上がある! が、約1000Mの直線はアっというまに、太平洋へ飛び込むような、左右の高速S字に変わる。4速、3速。前行くZは、1100kg位か、おれのブレーキングポイントよりかなり手前から制動を開始する。そのままインを刺すのは雑作も無い事だった。
ヤツのZも素晴らしく高次元なチューンドだ。恐らくRB26であろう。しかし、コーナーワークでは、こちらのZの敵ではない。それほどにこの神Z改はもう、別次元のバケモノということだ。
ヤツのナンバープレートだってもう……、え? 読めない。バイヴレーションが激しいわけではない。……老眼が進んだか……、46?48? 4はわかるが、丸っこいヤツはなんだかわからん。




