懐古と革新
そのまま港湾地区方面パークウェイを下り、海岸線の国道R150を西へ。
東名高速に乗り、ヌマヅまで。この間で取り敢えず、300km/hをマークしておく。
ノーマルミッションのトップエンド6速のファイナルレシオが2・931。18インチ255、30のタイヤ外径が610mm。8000rpmまで回してやった時に、Zのアナログダイヤルメーターでは、フルスケール320km/hを振り切っていたが、実測で311km/hだと、公右衛門は満足げに言っていた。
「きっちり9000回すとどんくらい出るん?」
「そうっすね、350ですかね。この調子なら確実っす。あ、でも今日の所はこのくらいでお願いします。」
「そう……、じゃ、しばらく俺がナラシておくわ」
「おねがいします」
芦ノ湖までの間では各ギアゆったりと5000rpmまでをリミットとし、更にアタリをとる作業に腐心する。
既に公右衛門が、あらかたナラシを終えているとはいえ、俺からいわせりゃまだまだ足りねぇ。
箱根峠道の駅で、漸く車から降り、自販機でドリンクを買う。
勿論、公右衛門のオゴリで。
「やっぱ、実走でセッティングですね、テンプレのアルゴリズムでは、ここまでの質感は出せないっすから」
「そこはテクノロジーが進化しても、どうにもならんトコだよな」
「流石はスピードの権化っすね!」
「なんか、褒められてる気がしねぇ……」
この後も、二人、腹の減るのも気付かぬまま、芦ノ湖スカイラインを何往復もし、更に伊豆スカイラインまで攻め込む。最終的には、横浜湾岸線から、首都高環状線まで走り、ついには、日付が変わってしまった。
「今日は良く走りましたね。ガソリン代で財布の中がカラっぽですよ」
公右衛門が、屈託なく笑い飛ばす。
「マジか! じゃ、帰りは燃費走行で行っか」
「気ぃ使わなくても大丈夫です。あんまり食わないモードにしましたんで」
「そういうとこは、ビバ、テクノロジーだよなぁ」
「もう遅いんで、東名で帰りましょう」
帰りの東名でも飽きもせず、一定速度からミリ単位のスロットルワークで、更にアタリを取る。意地悪く、重箱の隅をツツく如くに、トルクの継ぎ目や、パワーカーブの乱れを探る。公右衛門もあらゆるネガに対し即座に対応する。
基本的にカミソリレスポンスなセッティングには変わりない筈が、公右衛門の燃調の妙といおうか、電子制御のアルゴリズムによる最適化がこれほど運転手の負担を軽減してくれるとは、時代の流れってすごい! と素直に感動してしまった。
オッサンふたりが、なんの会話も無く淡々と、時速100km/hから180km/hまでの、加速減速を阿呆のように繰り返す。
大井松田から足柄SA迄の区間ではちょっとハシャいだりもしたが。




