6話「優しい歌声」
"木は踊る、風も踊る
この葉をなびかせ
僕は踊る、君も踊る
輝く夜を超えて
輝く夜を超えて"
優しい歌声で目を覚ます。体中に熱を感じ、意識は朦朧としている。けど不思議と心は穏やかで、宙を漂っている様な感覚に近い。
歌が終わると、そっと頭を撫でられた。
「....する...だから大丈夫...」
俺はまだ寝ていたい、そう思うと再び意識が飛んだ。
それからどの程度経ったかは分からないが、俺は勢いよく飛び起きた。
「...どこだここ?」
知らない部屋、ふかふかのベットの上、側には青い一輪の花が、おしゃれな瓶に挿してある。
掃除が丁寧に行き届いている部屋は、まるで持ち主の心を映している。
俺は立ち上がり窓に手をかけ、冷たい風を頬で感じる。どうやらこの部屋は2階にあるようだ。
「確かこの世界は魔群大陸とかなんとか...でもこれは」
木々は青々として、鳥が自由に空を飛ぶ。外の景色はあまりにものどかだった。
ふと花瓶の下に目をやると、紙切れ一枚が覗いていた。
「んん、読めない」
異国の文字で書かれた謎の文。おそらく俺へのメッセージだろう。
しかし、このスパゲッティの様な文字を解読するよりも、今は冒険へ先立つ方が優先だ。
そろそろ、これを見てる君も新たな展開を欲している頃だろう。俺もだ。
俺は部屋の戸を開けた。そして階段を降りる途中、誰かに声をかけられた。
「あら、お寝坊さん。やっと起きてくれたのね」
その声の持ち主はとても美しい女性だった。背がすらっと高く、金髪をフワッと丁寧に結び、おっぱいもフワッとしていた。
「えっと、あなたは?俺はどうしてここに?」
「私はシルフィア。覚えてないのも無理ないわ。森で倒れてたのを見つけて、私がずっと看病してたのよ」
あの後空から落ちて、俺は奇跡的に生きてたのか。
だとしたら、シルフィアは命の恩人だ。
「本当に有難うございます。そして迷惑をおかけして申し訳ございません。是非お礼がしたいのですが...」
「私もこの家に1人で住でて、寂しかったところなの。だから迷惑だなんて思ってないわ」
窓からの隙間風が、そっとシルフィアさんの髪を撫でる。さらりと広がった髪を、細い指先で耳へとかけた。
その横顔の美しさは、たとえこの世の全ての美しさを集めても、彼女には到底叶わない。そう思わせるほどだった。
俺はその瞬間、恋に落ちていた。
そうか、彼女こそが俺の物語の本当ヒロイン。ドSサキュバス(笑)ではなく、彼女を幸せにする為に、俺はこの異世界へと来たのだ。
これは俺が選んだ、俺だけの恋。誰かのシナリオの上では無く、作者のエゴに付き合っているわけでもない。
この胸の高鳴りが、何よりの証拠だ。
だとすると、このシーンはとても大切だ。
自分の恋心に気がついた主人公が、好きな相手へと贈る言葉。
俺は言葉をゆっくりと噛み締め、そして優しく口を開いた。
「ところで、その胸の2つの膨らみは何ですか?」
―パチン
突然右頬に痛みが走る―。
「え?ああ、これはおっぱいよ」
シルフィアさんの頬が赤く染まり、同時に俺はおっぱいに目が釘付けになった。
「おっぱい...ですか?ちょっと存じ上げないのですが...触ってもよろしいですか?」
―パチン
今度は左頬に痛みが走る―。
「ええ、良いわよ」
―――おい。
「それでは」
俺は右手を伸ばす。初めては右手だと決めていた。なぜなら俺は右利きという設定らしいからだ。
そして心臓の鼓動が高鳴る。もう数センチ、後少しで届く。
その姿はあまりにも巨大で、近づくほど遠く感じた。そして指先が触れようとした
その時――!
「おい!!!」
誰かのドスの効いた声が耳に飛び込んできた。
「いだだだだ!!」
「なーにやってんだモブ雑魚」
右の鼻の奥に強烈な痛みが襲う。この感覚は前覚えがある、それにドスの効いたこの声も。
「レミュール!?何でここに!?」
レミュールが腰に手を当てて睨んでいた。尻尾の先を鼻から抜くと、汚そうに地面に叩きつけ汚れを落とす。
「何でここに?じゃねーだろボケコラ!お前このままだと死ぬぞ?」
俺はシルフィアさんの方へと目をやる。
しかし、そこにはあの美しい姿は無く、
太い木の根が複雑に絡み合った化け物がいた。
そして、化け物の根が俺の喉元まで伸びて、今まさに首を絞めようとしていた。
「うわぁぁあ、なんだこれ!シルフィアさんは!?おっぱいは?おっぱいは!?」
「また意味のわからない事を...で?どうする?助けて欲しいの?欲しくないの?それともまだ幻覚見てたいわけ?」
幻覚?あれは全部幻覚だったのか?窓から見た風景も、冷たい風も...優しいシルフィアさんも!?だってここはあんなにのどか――!?
空は赤く、木々は痩せ細り、風は生暖かい。
俺の目に飛び込んできた本当の世界は、あまりにも禍々しかった。
遠くの方で変な鳥が奇声を放ち、自分で自分の頭を木に叩きつけている。
それもなぜか満足そうな顔で。
その声が森中に響き渡り、風に揺られた木々の音は、まるでその様子を笑っている様に感じた。
挿絵って機能に気がつきました!これ絵を投入できるのでしょうか!!!なら是非作りたい!




