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4話「サキュバスで男の娘!?レミュール誕生!」

俺は乾いた唾をゴクリと飲み込み、プロットマシーンの表示に目をやる。


『タイトル』

"無策で魔王に挑んでみた(笑)"

『世界』

"血で血を洗う異世界「魔群大陸アズランド」"

『テーマ』

"まぁ、これといった良い事はないけど、明るく元気に頑張ろう!"


「おい。おいおいおい!タイトルから既に駄作感漂ってんじゃん!てか(笑)つけてんな腹立つなぁ!明るく元気に頑張ろう!ってそれテーマか!?」


まずい、このままだと間違えなく、俺の初主役の物語はクソ異世界ファンタジーになる。何とかしないと!!


「な、なぁ...神様。このルーレットやり直しはできる?」


「わしゃ神じゃ」


神は首を横に振る。しかし、ここで諦めたら取り返しがつかない事になる。


「ならせめて、武器とか持たせてくれよ!それがダメなら優秀な仲間とかつけてさ!」


「やっと目が覚めたようじゃな」


神は反対のポケットから新しい装置を取り出した。


それは大きな透明なボールが台座の上についている、プロットマシーンよりも大きい装置だ。


台座には白いハンドルと"取り出し口"と書かれた穴があった。


これは巨大なガチャマシーンだ。内部には色とりどりのカプセルがぎっしりと詰まっていた。


「こ、これを回せと?」


笑顔の神が頷くと、俺は固唾を飲む。


これは俺の物語を左右する、"力"となる物が入っている。俺というキャラクターにとってとても重要なアイテムだ。


俺はその大きなハンドルを。体を目一杯使って回しきった。するとガチャマシーンは大きく揺れ、中から真っ黒のカプセルを一つ排出した。そのカプセルは熱を帯びており、不気味な蒸気を放っていた。


「こ、これは当たりなのか?」


「わ、わしゃ神じゃぁああ!」


俺は神の方を見た。神は明らかに怯え、あたふたと落ち着かない様子を見せていた。


どういう事だ?神が恐れるほどの、とんでもない力なのか?


よし、なら手にしよう。これを手にした俺が完璧なプロットにして見せるぜ!


「うぉおおおお!」


俺は全力でそのカプセルを叩き割った!すると中から予想打にしない物が出て来た。


「ふぁぁあ。え、何ここ?どこ?」


「...はぁ!?」


カプセルの中から出て来たのは人だった。それも小さなツノと長い尻尾の生えた、黒髪ショートの超絶美少女だ。


歳はいくつだろうか?俺が多分18かそこらだから、この子は15歳くらいか。背は俺と同じくらいので、華奢な体つきで、とにかく、まぁ、"つるぺた"だ。


だがそうか、これはヒロインを選別するガチャだったんだ!!それで俺は見事、ツノと尻尾有り美女の大当たりを引き当てた。


美少女はあくびをしながら、ゆっくりとカプセルのかから出て来てた。そして周りを見渡し、俺と目が合った。


おっといかん、俺とした事が。誰かに用意された展開に、危うく飲み込まれる所だった。


いくら美少女といえ、所詮は誰かの性癖によって生み出されたヒロイン。


そう簡単に俺の心は奪わせない!!


しかし挨拶は人として大切だ。

よし、さっき練習したあのセリフをっと。


「初めましてお」 

「殺すぞ?」


俺の声に被せるように、か細いがドスの利いた声を放った。そして鋭い目に一瞬で縮こまると、美少女はふらっと俺の前に立つ。尻尾がゆらゆらと宙を漂うと、俺の顔の先でピタリと止まった。


「おいモブ雑魚、この状況をウチに説明しろ」


「ええっと、モブ雑魚と言いますのは、わたくしめの事でよろしいのでしょうか?」


「はぁ?お前しかいねぇだろ?他に誰がいるんだ?」


あれ、神様がいない?遠くの方で神が背を向けて、歩いて来た方向に猛ダッシュしてるのが見えた。


「神てめぇ逃げんな!!俺をこのまま放置しないでくれ!!てかこっち来る時より足速ええじゃねぇか!」


「声がデケェよ、ウチが命令したらさっさと従え」


尻尾先端が右の鼻の穴に突き刺さる。広がった鼻から激痛が走った。


「いてて!話す!話すからこれやめてくれ!」


「話すまでやめねぇよ」


「分かった!話す!ここは創作の世界だ!誰かが書いた創作物の中だ!俺たちはその中のキャラクターで、俺たちの出会いも展開の一つだ」


「意味分からねぇ事言ってんじゃねぇよ!」


「う、うわぁぁ!」


鼻の奥に再び激痛が走る。だが入るはずのない物を、無理やりねじ込まれているこの感覚。OMG。この扱いも悪くねぇと思ってしまう俺のキャラ設定に文句を言いたい所だが、今はグーサインを掲げておこう。


「うわきもっ!何喜んでんだお前!」


美少女は尻尾を鼻から引き抜くと、俺から離れる様に身を引いている。


「そうか、ここでやめてしまうのか、お前というキャラは。知ってるぞ、ツンデレって設定だろ?しかしがっかりしたな。たかが相手のキモさで、自分のドS設定を裏切るなんて。どうやら俺はドM設定らしいが、ツンデレには容赦しねぇぞ!!分かったか!!!!」


「お前がなに言ってんのか全然分からねぇよ!!そういう所がキモいからやめたんだよ!てかツンデレってそう言うんじゃねーし!」


美少女は俺の顔面目掛けて足蹴りをかました。俺は勢いよく後ろへ転がり、鼻を押さえて身を起こす。これは好きでは無い。


「と、とにかく俺が話した事が全てだ。さっきいたじじいがこの世界の創造というか、プロットを決めた」


「プロット...」


美少女は俺が指し示したプロットマシーンをしばらく観察し、そして自分が出て来たカプセルに目を移した。そして静かに口を開く。


「そうか、て事はウチさっき生まれたんだ」


美少女は下をうつむき、ゆっくりと尻尾を宙で揺らす。それは何かを考えている様で、何かを察した様な表情だった。


「前の記憶とかないのか?ちなみに俺は勿論ない」


「今まで生きてきた記憶はウチもないよ。でも名前とか種族とか、何が出来て、何をしたくないとか、そういうのは分かる。うっすらだけど」


これが、キャラクターに与えられた設定という事か。記憶とは違い、うっすらと覚えている様な、違和感に近い感覚。


「やっぱりか。俺は君みたいにしっかりとしたキャラ設定はされて無い。羨ましいよほんと。だって俺名前すら無いからな。ところで名前は?」


「ウチはサキュバス族のレミュール。そう覚えがある」


「レミュール、すげぇ良い名前!そうか、レミュールが俺の美人なヒロインか!」


「あのさ、さっきから妙にウチの事意識してるけど」


「?」


レミュールは言いづらそうな表情で俺を見ている。なんだ?何を言う気なんだ?


「ウチ男だよ?」


「あふぃへいや?」


俺は変な声と共に、背中から倒れていった。

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