番外編・性別が女の子の理由。
お風呂上がりに魔力をこねこねしながら、新しく契約した精霊さんの体を作る。
私の記憶を見せてどんな体がいいか相談したらヒグマに一番反応していたんだよね。山菜取りで出会ったらイコール死! みたいに恐怖の対象なんだけど、そこが気に入ったみたい。
もちろんこの子にも真の姿として人型も作るよ! どんな子にしようかな。名前はどうしよう。ゆめぴりか? ななつぼし?
ちなみにエマにも真の姿あります。人魚です、美しいです。女神かな?
ソファに座っている私の横ではエマが紅茶を準備中。最近トゥナさんから教えを乞うているらしく、ますますメイド技術に磨きがかかっている。
紅茶の淹れ方ひとつであんなに味が変わるなんて知らなかった。
「お嬢様、こちらは見て楽しめる紅茶でございます」
「見て楽しむ?」
エマはテーブルに透明なガラスのポットを置き、青いマリモみたいな物体を入れお湯を注ぐ。少しずつマリモが溶け出し中から赤い蕾が出てきた。ゆっくり花開きながら浮かび上がってきたのは真っ赤なバラの花。
「うわぁ、綺麗」
少し薄めの青い紅茶と深紅のバラのコントラストが美しく思わず感嘆の声を上げる。
実はこのマリモ、ディノさんが人前でキスしたお詫びとしてくれた紅茶だ。まだ四つ残っているから今度はディノさんと一緒に見よう。
「エマも座って?」
「しかし……」
イセリア領にいた時は一緒に食事をしていたのに、こっちに来てから一回もない。エマはメイドだから立場とかあるのはわかるけど、そんなの知るか。本来は精霊だしそんなの関係ないよね。
いつもの否定のセリフを続けようとしたエマに畳みかけるように言葉を被せた。
「私はエマのことを家族だと思っているんだけどエマは違うの?」
「……家族の概念はわかりかねますが、エマはお嬢様のことはとても大事です」
「なら前みたいに一緒に。ね? 一人で飲むの寂しいな」
「…………セイラ様はずるいです」
口では文句を言いつつも向かいのソファに座ってくれる。
素直じゃないんだから。……ん? あれ? 今、名前で呼んでくれた?
「エマ、今のもう一回」
「紅茶が冷める前にどうぞ」
「エマ~」
とにかくエマと一緒に飲む紅茶はいつもより美味しく感じた。
紅茶を飲み終え、片付けの為にエマが部屋から出ていく。一人になるとついつい考え事をしてしまう。
この紅茶、バラが入っていたけどお高いんじゃ?
ディノさんが言っていたじゃん! 生花は高いって。そのせいで花を取り扱った商品全般高級品の部類。
そういえば、フッツーに使っているけどお風呂場に置いてある石鹸もバラの香りだし、お風呂上がりに肌の乾燥を防ぐために使っているボディローションみたいなもの(アターというらしい)も花のとても良い香りがする。
そして決定的なのは私の部屋には毎日違う種類の生花が飾られているんだよ!
これってものすごく贅沢?
一度ディノさんとお話し合いをしなければ!!
部屋をノックするとディノさんが「何かあったのか?」と怪訝な顔をしながら扉を開けてくれた。
実は今日はディノさんが珍しく早く帰宅した。一緒に夕食をとり、お互い今日あったことを報告しあって、もう寝るからと二時間前におやすみの挨拶をして別れたからだ。
「あの、中にお邪魔してもいいですか?」
「っ……どうぞ」
一瞬迷うような表情をされたが部屋の中に入れてくれた。ソファに座りディノさんも私の隣に腰掛けた。
だけど、いつもは一緒にいると必ずくっつくかどこか触れてくるのに、今は拳二つ分距離が空いている。なぜ?
ちょっと寂しく感じたが用件を伝えることにした。
「紅茶さっき頂きました。とても綺麗でしたし、味もおいしくて。ありがとうございます」
「気に入ってくれてよかった。礼なら明日でもよかったのに」
「それでですね、紅茶もそうですけど私の身の回りのものって実は高級品だったりしますか?」
私の問いに何回か目を瞬かせたディノさんは衝撃の事実を口にした。
「セイラに合うものを用意しているから値段は気にした事はないな」
「えっ。気にしてください。私に高いものは必要ないです。働いてもいない居候の分際で申し訳ないです」
「俺の婚約者なのだからもっと頼ってくれて構わない」
あ、私達婚約者だったんだ。いや、嬉しいよ。嬉しいけど、私の手を握ってゆっくりディノさんが顔を近づけてきたからそれどころじゃない!
キスされる!
思わず目をつぶるが何もない。
「……?」
そろりと目を開けるとディノさんが首元に顔をうずめて匂いを嗅いでいた。
ええっ、ちょっ、お風呂上がりだけどやめてぇ?!
「アターのいい香りがする。俺の好きな香りだ」
ディノさんの好きな香りならもう一生使います。だから離れて頂けませんか?
「紅茶は五種類あったが何味だったんだ?」
「へぁ?! 味? 味ですか?」
首元で喋るからくすぐったくて思考がまとまらない。
「今から確認するから」
確認? もう飲んでないですよ……と言おうとしたら口を塞がれた。
唇を割り開かれ熱い舌が入ってきた。ゆっくり味わい尽くすように動く舌使いに翻弄される。
やっと解放された時には息も絶え絶えだった。
「そういえばずっと聞きたかった事があるんだが」
「なんっ……で、しょうか?」
「精霊の人型時の性別がみんな女なのは何でだ? 俺としては無理やり引き剝がさなくてよかったが気になる」
「……あの、それは男の人の体の構造が、よくわからなくて、ですね。その……」
誤魔化そうと思ったがやはりディノさんに嘘はつけなかった。
「セイラは前世で恋人は?(もしいたらその男消しに行こう)」
「…………全部ディノさんが初めてです」
あまりの恥ずかしさに両手で顔を隠して俯く。
「そうか(手間が省けた)なら、これから詳しく調べてみるか? セイラなら好きにしていいぞ」
その言葉に顔を上げたのがいけなかった。
ディノさんは私に見せつけるようにシャツのボタンをひとつひとつ外していく。見事な腹筋をさらけ出すと私の手を取り自分の肌に触れさせた。
「あの、二人きりの時に」
「今、二人きりだが」
そうでした! 必殺技の意味がない!
「じゃ、じゃあまた今度で! お願いします!」
「ダメだ。風呂上がりに男の部屋に来るセイラが悪い。最初は我慢したがもう無理だ。
触らないなら俺がセイラのことを好きにするぞ?」
一生忘れられない夜になった。
「坊ちゃん! イラ! アンタ達何してんだい!!」
「最後までしてねぇからいいだ、いってぇ!」
「そういう問題じゃないよ! あと言葉遣い!」
翌朝トゥナさんにめちゃくちゃ怒られたから。
ファルコ・スクレロ・カクタス
魔王。妻と研究大好き。覗き魔。
ディノ、リッカルド、ファルコの三人の中で純粋な力比べをしたら最弱。その辺の子どもにも負けるぞ。
つまんないな〜異世界でも覗き見するかと術を使ったら、とある風呂場と繋がり女性が入浴中だった。動揺してしまったため術が乱れバレた。これが妻との出会い。
リッカルド・アストロフィツム
騎士団団長。正義感強い。兄貴肌。
三人の中で一番の常識人。二人のことをよく止めてる。でもキレると一番暴れる。手に負えない。
ディノがフラヴィオ、龍ノ助、御者を本気で消そうとしてたので全力で止めてた。
友人二人に相手ができたので自分も恋人欲しいと思ってる。
これで番外編も終わりです。
番外編も最後までお付き合いいただきありがとうございます。
ブックマークと評価も嬉しかったです。
またどこかの作品でお会いできたら読んでやってください。




