番外編・プーちゃん最終形態
日間ランキングにひっそりと入っていて嬉しさのあまり心の中で小躍りしました。
皆さまが読んで頂いたおかげです。ありがとうございます。
そのせいかあとがき含め今回ちょっと長いです。
一般的には精霊と契約してから体を作るものでしょうが、毎日毎日お客様(ルビーロウからの侵入者)がやってきて本当に忙しかったんです。
半ばヤケクソでクラゲボディを作ってしまうほどに。
その後クラゲに入ってくれる精霊さんを探したら案外早く見つかったのは良かったんですが……。
触手が多すぎて一人(?)の精霊では扱いきれないという問題が発生しました。
一人また一人と精霊を増やして合計四人でやっと触手が自在に動かせるようになったんですよ。長い道のりでした。
その日はエマと乾杯しましたね。
やっと解決したと思ったら次の問題が発生しました。
他三名の精霊さんが自分も体が欲しいと訴えてきたんです。
すでにひとつの体に四人の精霊を維持するため私の魔力を注ぎまくった結果、クラゲが大きくなりすぎてしまったため別で体を作るのは躊躇われました。
そこで、ピンチになったらフリー○様みたいに変身させれば面白いんじゃないかな?
と、唐突に思いつき勢いのまま四人の身体を作り上げました。勢いって大事ですね。
クラゲは元々捕獲用。
触手で絡め取る。毒を打つ。クラゲボディに閉じ込める。相手の攻撃を吸収する……など攻撃手段を一切考えていなかったので、変身後のクラゲは四人に分裂させ攻撃タイプにしようと改造したんです。
精霊さんそれぞれの身体を作ってあげられますし、「光栄に思うがいい! この変身を見せるのはお前が初めてだ!」みたいに真の姿になるのはロマンがあって面白そうじゃないですか。
光の精霊は金髪ポニーテール。
闇の精霊は黒髪ツインテール。
火の精霊は桃色ウェーブボブ。
土の精霊は茶髪ふわふわショートヘアにしました。
みんな女の子。エマの妹達みたいでまさに天使。
大人の女性にしてあげたかったんですが、人型時の魔力の消費量がえげつないことになったので幼女でストップ。可愛いから問題なしです。
名前もありますよ!
光→サマーレモン
闇→ブラックココア
火→ハッピーピンク
土→キャラメルナッツです。
機会があれば呼んであげてください。喜びます。私が。
それぞれ個別の名前があるのでクラゲの時は名前で呼んでなかったんですよ。
それが団結力が生まれたのか、ここぞという時にプルプルして私の心を的確にダイレクトアタックしてくるので「プリン」とクラゲの時の名前もつけてしまいました。
後悔はしていません。
「……以上がプーちゃんの最終形態への経緯です。ご満足頂けましたか? フラゔぃオさん」
「イラ君。名前の発音が相変わらずおかしいぞ。わざとか?」
「てめぇ、いい加減名前呼びやめろ」
「名前呼びくらい許してやれよー。ディノ」
◇
ここは騎士団詰所の内の団長執務室。
騎士団に呼び出された私は面倒だな……と思いつつも、団長リッカルドさんにお世話になった手前無下にもできず仕方なく騎士団を訪れることになった。
ディノさんも一緒。
「セイラをまたあの野郎と二人きりにさせるわけにはいかないからな。早く終わらせよう。終わったら王都でも案内しようか?」
「はいっ! 是非!」
やった! ディノさんとデートだよ。
何を着て行こうかな。
騎士団に行くのが楽しみになった瞬間だった。
そして到着して案内されたのはあの殺風景な取調室ではなく、リッカルドさんの執務室だった。
お父様の執務室は壁紙から調度品に至るまでギラギラしていかにも成金趣味全開だったんだけど、リッカルドさんの執務室は必要な物しか置いていないシンプルな内装。落ち着く。
そこに置かれているソファに座る。
私の横はもちろんディノさんで、お向かいにフラヴィオさんとリッカルドさんが座った。
ディノさんは私を当然のように膝の上に乗せて抱きしめようとしてきたので全力で拒否したら、あの悲痛な表情をして無言で見つめてきた。
ううっ、その表情は反則ぅ。
たまらず「二人きりの時にお願いします」と耳元で囁いたら笑顔で快諾してくれた。
あれよ。耳元で囁いたのはリッカルドさん達の目があったからだから!
いちゃついてるわけじゃないのよ!
リッカルドさん。ニヤニヤしないでください!
でも、ディノさんの隣に座ったのはいいけど腰に手を回されてこれでもかと密着してくるので結局傍から見たらいちゃついてるように見えるよね?!
だからリッカルドさん……以下略。
まあ、一悶着あったけど、御前試合の決勝戦で暴れまくったプーちゃんについて聞かれたので正直に答えた。隠す必要性も感じないし。
そして私の名前呼びにお怒り中のディノさん。
そんな様子を全く気にしていないフラヴィオさんが口を開く。
「それにしても、君は一体どれだけの事をしたか自覚はあるのか?」
「自覚ですか?」
何か罪に問われるようなことをしてたのかな? 御前試合で変身は反則とか?
「誰にも師事を受けず魔術書だけで精霊を具現化するのも凄いが、その精巧さと大きさには目を見張るものがある」
褒めてくれている……の? でも眉間にしわを寄せたままだから怒っているように見えるよ。フラヴィオさんツリ目だから三割増しで怖いんだって。
私の疑いの視線を感じ取ったフラヴィオさんが手をかざす。
「見てみろ」
「あ、可愛い」
「嬢ちゃん、おれのも見てくれ」
「おお、この子もまたモフモフ」
フラヴィオさんの手の中に小さいハムスターが現れた。茶色い毛がポヤポヤでまるで毛玉。
ハムスターに釘付けになっていたら、リッカルドさんも手の中に小鳥を出した。首回りの毛がモフモフで冬の雀みたい。
「精霊の具現化は結界で弾かれる所も潜入でき、力の行使に無駄がない利点がある。ただ、その大きさは手の平が限界でそれ以上だと体が維持できない」
話しながらフラヴィオさんがハムスターを私に渡してくれた。
モフれる! と感動したけど、この子ハムスター特有のちょこちょこ動く動作もなくピクリともしない。ぬいぐるみ?
でも精霊が中にいる感じはするし。
すると小鳥もこちらに飛んできた。だけど、動き方は羽を閉じたままの宙に浮いての平行移動。
羽があるんだから羽ばたこうよ。
「わかったか? 嬢ちゃん。具現化しても動きまでは再現できねぇんだ。人型だけでもスゲェのに、あの滑らかな動き。各部署から嬢ちゃんを手に入れろ! って大変な事になってるぜ」
リッカルドさんの言葉に思わず逃げたくなった。ゆ、ゆっくりさせて。
「閣下の所にも招待状が殺到しているのでは?」
フラヴィオさんがディノさんに視線を移す。
かっか? ディノさんって閣下って呼ばれているんだ。あ、そうそう私はディノさんの所でお世話になっています。
「全部燃やした」
「燃や……ええ?! いいんですか?」
「セイラ、大丈夫だ。俺に命令できるのは魔王陛下とセイラだけだ」
ディノさんは足を組みながら優雅に微笑む。
命令できる発言に驚いていると、横からリッカルドさんの楽しげな声が聞こえてきた。
「陛下の次に権力強いもんなー。ディノ」
「ディノさんって御前試合の委員長なんですよね? そんなに力があるようには見えませんけど……」
「聞いてないのか? ディノはこの国の宰相だぞ」
聞いてないです。驚きの事実。
「ディノさん宰相なのになんで委員長をしていたんですか?」
「人手不足で仕方なく。セイラは俺の補佐になったからもうどこの呼び出しにも応じなくていいからな」
驚きの事実がまたしても。そしてすでに決定事項。
「悪いな、セイラ。カクタス国は万年人手不足だから御前試合で活躍した者は必ずどこかに所属するんだ。俺の所に来れば守ってやれる」
「ディノさんと一緒なら何でもいいです。不束者ですがよろしくお願いします」
頭を下げようとしたらディノさんに抱きしめられた。小声で「このまま誰にも見せずに閉じ込めたいな」と言っていたのは聞き間違いだと思いたい。
リッカルド「何だ。嬢ちゃんの配属先決まってたのか。じゃあなんでうちに来たんだよー」
ディノ「協力してもらったからな。一応、騎士団の顔を立てたんだ。あと、そこの奴にセイラは俺のものだって牽制したくてな」
フラヴィオ「陛下のように彼女の本当の名前で呼んでいないので大目に見ていただきたいですね」
ディノ「名前を呼んでた?陛下が?今からぶっ飛ばしてくる」(ドス声)
セイラ「え、デートは?」(袖クイ&上目遣い)
ディノ「もちろん忘れていない。さあ、行こうか」(満面の笑み)
二人が去った後。
リッカルド「嬢ちゃん、そのままディノの手綱握っててくれ」
フラヴィオ「宰相閣下の初めてできた弱点じゃないですか?」
第十話「短髪ツリ目→副団長 体格のいい人→団長 ハットの人→委員長」での
「火・水・土・風の精霊」の表記を「光・闇・火・土の精霊」に変更してます。
精霊の名前の候補は水→SODA。風→宇治抹茶だったため、名前の語感を統一する為に光と闇に変えました。
水はエマがいるし、新しく契約した精霊が風なのでちょうどよかったです。
グリ◯さんから怒られたら名前は変更します。
読んでいただきありがとうございます。




