ローガンよりディノさん
日曜はお休みしたかったけどシリアスのまま放置は嫌だったので投稿します!
私の前世の名前は村上聖。
私が産まれた病院の名前に「聖」の字が入っていたとか、その日がクリスマスだったからとか、とにかく名付けは適当に決めたと聞いた。
前世でも好きになれなかった名前。
そんな私の名前を知っているのは愛しのあの人とエマだけ。
なんでローガンが知っているの?
私の驚愕の表情を見てローガンは笑みを深めると決定的な一言を言い放った。
「俺達の再会の合図だろう? 忘れてしまったのか。セイラ」
「っ!!」
さっき私の目を潰して治療したと言ったこと、再会の合図。そして私の名前。
ローガンが……あの人だった? ずっと近くにいたの?
やけに口の中が乾く。絞り出すように声を出した。
「どうして、ここにいるんですか? ずっと側にいたのなら一言くらい声をかけてくれてもよかったのに……」
「イセリア領で不穏な動きがあってね。潜入調査をしていたんだよ。セイラは嘘がつけなさそうだから黙っていたんだ」
「そう、なの」
あの人に会えたら、雪解けの中から一輪の花を見つけた時みたいにほんわかした温かい気持ちになると思っていたのに全然嬉しくない。
やっと名前を呼んでもらえたのに心の中は凪いだままだ。
「セイラ。どうして戻ってきたんだ? 命令は魔王を殺すこと。魔王にもっとも近づけるのは御前試合の他にはない」
私の様子に御構い無しにローガンは話を続ける。
「心臓が痛いだろう? 命令を守らないからだよ。今ならまだ間に合う。すぐに王都に戻って魔王を始末するんだ」
「あなたはっ、魔王に仕えていたんじゃないんですか?」
「この国にあの魔王はいらない。必要のないものを消すのは当然じゃないか」
何を当たり前のこと聞くんだい? とローガンは首を傾げる。
言葉を紡ぎながらローガンは私に一歩一歩近づいてくる。
逃げ出したいのに動けない。
「助けたお礼をしてくれるんだろう。次は魔王を殺せ。このままだと心臓が止まってセイラが死んでしまうよ」
ローガンの漆黒の瞳は私の思考を鈍らせ彼の言う通りにすることが当たり前だと思わせる何かがあった。
目を逸らしかけると顎を掴まれ無理矢理視線を合わせてくる。
暗くて引きずり込まれそうな闇の瞳。
ディノさんの夜空のような綺麗な瞳とは違うな。
「そういえばあの男、自らセイラの監視をすると言っていたのに連絡ひとつ寄越さない。使えないやつだった」
「……あの男?」
「常に帽子を被った銀髪の男だよ」
「!?」
ディノさんだ。
じゃあ、ローガンに言われて私に近づいて優しくしてくれたんだ。
そうなんだ……。
そうだったんだ。
そうだよね。
会ったばかりの私にあんなに優しくしてくれるなんて最初からおかしかったんだよ。
なんかもうどうでもいいや。
「……わかった。魔王の元に行く。その前に私からも再会の合図をしていい? あなただとわかって嬉しいの」
「もちろんだとも。はらぱんだろ? 覚えているよ。だが準備が必要なんじゃないか? 食べ物だろ?」
「大丈夫。すぐ用意できるものだから」
私は満面の笑みで左手でローガンの肩を掴み右手で思いっきり彼のお腹を殴りつけた。
「ぐはぁっ?!」
骨が折れる鈍い音と共にローガンが口から血を吐き出す。汚いなぁ。
二発目は肩から手を離し抉るようなパンチをお腹に叩き込む。
吹っ飛んだローガンは壁をへこませ動かなくなった。
「これが腹パンよ! お前みたいな嘘つきが勝手に愛しのあの人を名乗るな!!」
◇
ローガンを置いてお父様のいる執務室に向かう。
疑問に思いつつも正直ローガンには途中まで騙されかけた。でも、触れられた瞬間その手の冷たさに我に返った。
あの人の手はとても優しくて温かったから。
それだけじゃない。
あの人は私の呪いを解く手立てを探してくれると言っていた。それなのに呪いの通りに魔王を殺せと言うなんておかしい。
そもそも私が命令されたのは王妃を殺すこと。
いつの間にか魔王になっているのにローガンは当たり前のように魔王を殺せと命じてきた。
龍ノ助君から出てきたあのモヤは私の呪いをより強化して逆らえないようにするためだったのかも。
まぁ、手の冷たさ以外の理由なんてあとからいくらでも考えられる。
ローガンがあの人かもという話よりディノさんが私を騙していたことのほうが衝撃が大きくてどうでもよくなった。
とりあえず目の前のローガンを腹いせに殴りたくなるほどに。
それにしても私の名前や再会の合図のことまでバレているなんて誤算だった。
これから私の名前を知っている人はまず敵だと認識しなきゃいけない。
「はぁはぁ、痛っうう」
ズキズキと心臓が激しく脈打つ。
痛い。痛いよ。ディノさん。助けて。
……なんでこんな時にディノさんを思い出すの。
会ったばかりなのに。
あの人は私のこと騙していたんだよ。
ローガンの仲間だった。団長のリッカルドさんが気をつけろって言っていたのはこの事だったんだね。
ディノさんの知り合いのトゥナさんも仲間かもしれない。
お母さんみたいって思ったのもそう思わせる作戦だったのかも。
結局前世でも今世でも私は一人だったんだなぁ。
鼻の奥がツンとする。
喉が震え、視界が歪む。
目が熱い。
重力に逆らえず涙がこぼれ落ち頬を濡らす。
「っ……ぅう」
このまま目が溶ければもう何も見なくて済むのに。
ふわりと温かい光が現れた。
龍ノ助君と戦った時、私と契約した精霊さんだ。
他の精霊も私にたくさんくっついて光り輝く。
まるで慰めてくれているみたい。
「ありがと。君の身体を作る約束したもんね。こんな所でうじうじしていられない。早く終わらせよう」
そうだ。私にはエマもプーちゃんもこの子もいる。
それに龍ノ助君を日本に送り届けなきゃ。
呪いの影響で思考が暗くなっていたんだね。危ない。
お父様の執務室の扉の前に着いた。
呪いとか命令とかそんなの知るか! とりあえず一発殴らせてもらいます!!
二回戦の時の???さん
「あんのクソガキ!イラに傷をつけただとぉ?!しかも馴れ馴れしく触りやがって、潰す!精霊もしつけ直してやる!」
お怒りだった。
イラが御者に抱き上げられた所を見た???さん
「あの御者消そう。そうしよう。塵になるまで分解してやる!イラも手ぇ回してんじゃねぇよ。ああいう男が好きなのか?やっぱり俺以外と会えないように閉じ込めるか」
自分を介さないイラの幸せを願えるとか言っておきながら嫉妬全開だった。
そんな???さんを見た副団長フラヴィオさん
「わたしとイラ君が戦う時、『触るな、攻撃するな、怪我させたら殺す』と脅すくらいイラ君が大事なんだな。過保護だ」
???「おい、勝手に名前で呼んでんじゃねぇぞ」
八つ当たりされた。
フラヴィオさんと???さんのやり取りを見てた団長リッカルドさん
「あれを過保護と言うフラヴィオは天然だな。???もさっさと自分のものにしちまえばいいのに、ヘタレてんなぁ」
???「うるっせぇ!」
フラヴィオ「うるさいですよ。団長」
余計な一言のせいで二人に怒られた。
リッカルド「おい、???。そろそろ行くぞ。フラヴィオはあとの御前試合の運営を任せた。途中魔王陛下消えっけどなんとかしてくれ!じゃ!」
フラヴィオ「えっ、急に何の話ですか?団長?!だんちょー!!」
フラヴィオさんは苦労人。頑張れ。




