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第15話『妨害行為は実力で解決だ!』

 これは完全にやられたな。


 俺は今、授業中に嫌がらせを受けている。

 授業内容や科目は問題がなく、先生の合意を得ているからこそたちが悪い。


 というのも、現在行われている授業内容は造形魔法。

 攻撃や防御の魔法とは違い、要は図画工作や土木建築な側面を持つ授業となっている。

 やったやられたと比較的に簡単なものではなく、奥深すぎて大変なのだが。


 そんな状況下、配布された資料を故意に破られ、グループ分けされているからメンバー内で見せ合う流れになっていて――。


「……」


 たちが悪い以上の言葉が出てこない。


 声や音にも出さず肩を上下に揺らしながら腐った笑みを浮かべる彼らは、全員が俺を目の敵にしているメンバーで構成されている。

 であれば、故意的に破られたことは明白であり、誰1人として資料に目を通させてはくれない。

 陰室にもほどがあるし、教師も一度容認したから目を配ることをしてくれないときた。


 どれだけ生徒に対する信頼があるのか知らないけど、理想と実態は別物ですよ、先生。


「――」


 元の宿主は、こんな姑息な嫌がらせを入学から続けられていたということか。

 いや……もしかしたら学園に入る前から、中学生、小学生……。

 追体験しているわけでも記憶があるわけでもない俺は、ただ想像することしかできない。


 強者や権力者には媚び、弱者や格下には徹底した排除と妨害――。


 今すぐにでも拳を顔面にぶち込んでやった魔法で外にぶっ飛ばしてやりたいが、さすがに感情的で過激すぎるか。

 先生が資料を読みながら巡回する、あの国語の時間みたいにしてくれたら状況は一変するだろうに。

 でも先生は教卓から動く気配はない。

 さて、どうしたものか。


「それでは実戦をしてみましょう」


 先生が進行を止めてくれないのだから仕方ない。

 文字や絵が記された資料に目を通すことはできずとも、先生が要所要所で解説してくれた内容は耳に入ってきた。

 ある程度は即興でやるとして、先生の指示が理解できれば大失敗にはならないはず。


 出遅れによる煽りなどの害を飲み込み、まずは観察から。


「おいおい」

「何ボーっとしてるんだよ」


 野次が飛んでくるも想定済み、無視無視。


 しかし、実践している内容は興味深い。

 規模感は小さく、消しゴムぐらいの大きさにした魔法と魔法を積み重ねている。

 主に土台として扱う魔法は土であり岩として出現させ、上を風や火や雷とかで削ったり溶かしたり。


 ちなみに今、教室内で授業を行っているが机は地面に折りたたまれ椅子だけがある状況。

 驚きを隠すのに必死だったけど、机も現在行われている魔法の工作で作成されているから魔力に反応して変形するらしい。

 つまり授業で行っている内容は序盤の序盤であり、完成形は岩の彫刻――そう、もっと小さいときにやる粘土遊びを魔力で行っている感じだ。

 精密な魔力操作の技術が必要であるだけじゃなく、2種類の魔法を扱い続ける集中力も必要ということか。


「――」


 この中で完成形を把握していないのは俺だけ。

 むやみやたらに作業開始するのは失敗へ直行することになる。

 芸術の分野であるなら、周りに合わせる必要はないだろうが。

 だが序盤の校庭は理解できたから、まずは岩。


 左を開き、片手で覆えるぐらいの岩を出現させ。

 次に右手で扱う属性を決めるわけだが、周りを参考にすると特に指定はない様に見える。

 じゃあ形を意識するために風にするか。


「……」


 ここまでは簡単にできた。

 後は完成形がわかれば――ほう、なるほど。


 グループ内でも長方形や正方形、円形や三角形を作っているように見える。

 そして他のグループにも目線を向けても、同様に見えた。

 つまり今の授業内容は自由工作であり、何かしらの“形”を作ることがゴールというわけだ。

 先生も先生で、スタートの合図と一緒にゴールを教えてくれたら苦労しなかったのに。


 じゃあ始めよう。


「眺めてるだけじゃ点数はもらえないぞ?」

「まだ初めてなかったのかよ」


 おうおうおう、言ってくれるじゃないの。

 君たち、俺はちゃんと見ていたからな? その岩、既に4回は失敗の今だよな?

 失敗を責めるつもりも咎めるつもりもないが、自分の失敗を棚に上げて出遅れる俺に野次を飛ばしている余裕があるのか?


 長方形ならスパッスパッと、コロッと宙に浮かせてハイ完成。

 膝の上に置いて、2つ目の岩を出現させてスパスパスパッと三角形はい完成。

 はい次はい次はい次!


「はいじゃあそこまでー。未完成でもいいから提出してください」

「今回も完成させることができなかった」

「簡単そうに見えて難しいよな」


 そんな声が近くから聞こえてくる。

 声の主は、今回一緒になったメンバーたち。


 先生の催促に従うため、俺は立ち上がる。


「けっ」

「どうせ1つもできなかっただろうに」


 立ち上がる順番にさえ文句をつけてくるなんて大したものだ。

 俺は最後に立ち上がり、最後に提出しなければいけないってルールでもあるのか? あるわけないよね? どんだけ自分勝手なんだ、こいつらは。


 そんなことより、途中で言葉を投げかけてきたくせに自分のことで精いっぱいだったから、俺の作業を見過ごしてるじゃん。

 あんなにわかりやすく目の前でやったのに。


「な、なんだこれは」


 教卓に完成した岩を並べていく。

 先生の声が漏れ、後ろの方からクスクスと嗤う声が聞こえてきた。


「アヤトくん、これは……」

「はい。自分でやりました」


 先生は作品と俺の顔を何度も交互に見て、「嘘でも冗談でもないんだね」と確認作業をこれでもかと繰り返している。


 そのおかげで、列ができ始めてしまい意図的ではないが強制的に注目を集めてしまう。


「素晴らしいじゃないか! これは!」

「ありがとうございます」

「なんという繊細さ、素人目にもわかるほど綺麗な仕上がり。お見事!」


 両手を広げて喜びを表現する姿は、小さい子供のソレ。

 あまりにもオーバーリアクションをされ、その無邪気な表現に恥ずかしさはないのですか、と質問しそうになってしまうほど。

 もう少し待てば飛び跳ね始めるのではないかと思ってしまうほど。


「そろそろ戻っても……?」

「ああ、いいさ。今から提出するみんなにも観てもらおうじゃないか」

「は、はい」


 そんなに喜んでもらえるなら、「どうぞ」としか言えない。


 自分が作ったもので誰かが喜んでくれるなんて、久しく味わっていなかったからこそ、こちらも少し嬉しくなってしまった。

 だがクルッと振り返ると先に提出した生徒以外が並んでおり、羞恥心やらなんやらが一気に押し寄せてくる。

 そのまま誰とも目線を合わさずに席へ。


「ほら、よーく観るんだ」


 俺の様子など気にせず、はしゃぎながら紹介し始め。

 無言のまま立ち止まり戻る生徒も居れば、「おぉ、凄いですね」と感嘆の声を漏らす生徒も。

 見下しているか否か。

 あまりにもわかりやすい反応で、待っているだけだから笑いそうになる。


 そして例外なく、一緒のメンバーとして工作していた彼ら彼女らは面白いぐらいに離れるのが早かった。

 ここまで爽快な出来事が訪れてしまうと、嫌味の1つでも言ってやりたい気分になってしまう。


 いやぁ~今、どんな気持ちなのだろう。

 腸が煮えくり返っている? 歯を食いしばっている? 顔を歪めている? 拳を握り締めている? 劣情に支配されている?

 明確な妨害行為に加え、煽りまでしていた相手が褒められる気分はどんなもん?

 ストレスの発散だか腹いせだか知らないが、逆にストレスをためる展開になっちゃったねぇ?


 と、いう具合に。


「――ふっ」


 誰にも聞こえないよう鼻だけを鳴らし、危険な発言は心の中に留めておく。

 でもこれスカッとするなぁ~。

 タイミングを見計らい、盛大に仕返しをするのも悪くない。

 そう考えると、口角を上げてあからさまに喜びと達成感を表現しそうになる。


 でも楽しそう。

 そのときが訪れるのを心待ちにしておこう。

ここまで読み進めていただき、本当にありがとうございます!


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