表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/26

第11話『またか、という感想しか抱かず』

 またか……。


 悪役ムーブ、加減を考えないと優越感に浸るだけで悪い印象だけが残らないだろうか? なんて考え始めていたのに。

 正直、自分のことばかり考えているような人間ぐらいしかそう感じないだろう、と結論を着地させても問題ないだろ。


「あのときはよくも邪魔してくれたな」


 休み時間、そろそろ1人で考える時間が欲しかったから校舎裏へ移動したのに。

 どうしてルラーナが居ないのにもかからわず、俺は囲まれなくちゃいけないんだ。


「俺は邪魔をするつもりはなかった」

「あぁ? この期に及んでいいわけか?」

「本当に偶然だった」

「んなわけあるか!」

「言いがかりだ。じゃあ理論でも理屈でも説明してくれ。あの場に居た誰かが、俺と知り合いだった? 入学してからの日々で、俺と会話した人は? 偶然ではないと決めつけるのなら、その理由は?」


 あんたらの方が当たり屋理論だろ、たちが悪い。

 こちらはいくらでも理由を並べることができるし、何よりも学園で受けている冷遇を状況証拠として判断させるという、最強カードを提示できる。

 俺を知らない人間に見せたら、もはや同情されるぐらいの酷さだろ、あれ。


「ごちゃごちゃとうるせえ!」


 ついさっき考えを改めたばかりなのに、どうやら訂正は必要ないらしい。

 こんな野蛮な人間も居るって事実を忘れていた。


 男たちは全員で――10人か。

 完全に囲まれていて、杖を出されている。

 と、こんな状況なのに疑問が浮かぶ。


「じゃあ質問したいが。この状況で僕をどうしたいんだ? 殺すの?」


 煽り文句ではない、単純な疑問。

 よく『不良に絡まれた』『無慈悲な暴力に襲われた』『殴り合いの喧嘩に発展した』等々の出来事を噂程度でしか聞いたことがない。

 そのどれもが、『誰かの通報により仲介人が来た』『救急車送りになって全治数週間』『隙を見て逃げ出した』等の結末が主だ。

 最悪の場合は、凄惨な最期を迎えてしまう事件はニュース化するが……まさか金持ちのボンボン集団が、まさか学園内で揉み消すことが大変な大事を起こす覚悟があるのか?


「痛めつけるに決まってるだろ!」

「それのせいで、もしも僕が死んだら?」

「そそそそそ、そんなことやってみないとわからないだろ」


 その動揺した口調が答えだな。

 力加減がわからないから、途中から怖くなって腰の力が抜けるか、感情の赴くままにヒートアップし続け結果的に命を奪ってしまうか。

 未熟なままな純粋な暴力。


「軟弱だな」

「はぁっ!?」


 会話している人間が主犯だろう。

 ルラーナに掴みかかっていた男は居ないみたいだが、グループが別なのだろうか。

 だとしたら、別グループと別グループに板挟みだった可能性が出てきた。


「おっと、杖は抜かせないぞ」


 正々堂々、魔法で対応しようと思っていたのに。

 会話している男に集中しすぎて、距離を詰められて杖を背中に突き付けられてしまうなんて不覚だった。


「加減なんてせずとも大丈夫だろう。制服があるんだし」


 そういえばそうだった。

 魔法防御の魔術が組み込まれている制服があるのだから、一定以上の攻撃を続けても死ぬはずがない。

 しかも、こんなボンボンたちが扱う魔法に殺傷性があるとも思えないし大丈夫か――って納得している場合じゃないか。


「それで。威勢がいい割りに、いつまでお喋りを続けるんだ?」

「このっ!!!!」

「貫け――」

「燃やせ――」

「切り裂け――」

「焦がせ――」


 それぞれが詠唱を開始し、すぐに魔法が放たれる――前に。


「なっ!?!?」


 振り返って背後の男の腕を掴み、回避手段など取らせず拳を顔面へぶち込み。

 そのまま地面へ力を流して叩きつける。


「っかはっ」

「はぁ!?」

「何ぃ!?」

「――炎!」

「――氷!」

「――風!」


 咄嗟に詠唱を止めて驚愕を露にする数人と、反応できなかったのか気づいていないのか魔法を唱え終えた数人と。

 囲まれているから魔法障壁を展開しても一方しか防げない。


 だったら。


「全てを拒絶する」


 俺は魔法障壁ではなく、自身を円形に囲む魔力結界を展開。

 全ての魔法を完全に消滅させ、着崩れた制服を正す。


「ど、どうなってやがる……」


 残り9人。

 全員が威勢を失い、口を開けっぱなしにしている。


「別に不思議なことではないだろう? 授業で習ったはずだ」


 認めよう。

 俺は今、習ったばかりのことを自信満々に話そうとしている。

 あたかも自分で発想を生み出し方のように、内心ウッキウキで。


「魔力を取り込み、変換し、魔法として発現させる。キミたちが今、やったことだ」


 でも思い出したのは、ルラーナのおかげ。

 彼女が周りの人間は“魔法を扱えなくなる”という言葉を発していたから。

 今考えても、“魔法は扱えない”のに“魔力は扱える”という話を理解しきれてはいない。

 でも、要は『魔力を体内に取り込んで魔法として発現させる』ことはできなくなり、『漂っている魔力を魔法として発現させる』ことはできるということだろう。


 いや、それでも完全には理解できないが。


「だがもう1つの魔法だってあるだろう?」

「ま、まさかお前……それができるっていうのか」

「本当だ。杖を使わずに魔法を行使してるぞ!」

「う、嘘だ。あれは高度な技術が必要で、先生は……いや、でもたしかに」


 え、そうなの? 高等技術なの?

 そしてごめん、杖を扱わない状況で魔法を行使することが条件っていう話も初耳なんだけど。

 もしかして1回分の授業内容が遅れてる?


 ルラーナが普通に扱えるって感じだったし、俺もスタートがその状況だったし――でもたしかに、初出しの情報だったけど短かったから明日の授業でやるってことなのかな。

 うっわ、恥ずかしい。

 これつまり、今の俺って知識で負けてるってことじゃん!

 絶対、動揺を表情に出さないよう意識しないと。


「そんなことより、さっき言ってたよな。制服があるから大丈夫、だったか」

「な、何をするつもりだ」

「僕も試してみたいと思って」


 両手を広げ。


「炎剣――」

「おいおいおいおいおい」

「嘘だろ」

「な、なぁ!? 少しだけ話し合おうじゃないか!」


 9本の炎で形成された件を発現。


「待ってくれ! お、お願いだ!」

「――演舞」

「う、うわぁああああああああああ」

「ああああああああああ」

「ガハッ」

「グハッ」


 任意の本数だけ炎剣を作成し、それぞれに意図が宿っていると錯覚してしまうほどの精度で操作して対象を攻撃する魔法――【炎剣の演舞】。

 完全に創作魔法だけど、杖を介さず魔法を行使する場合は使用者の想像力と実力が結果に繋がる――らしい。


 そんなことはさておき。


 魔法障壁を展開しようと試みて腹部に直撃してぶっ飛ばされた人も居れば、対抗しようと魔法を発動させようとした人も木へ激突した。

 一番滑稽なのは逃走を図ろうと背中を向けたばかりに、直撃のタイミングがわからず情けない悲鳴を上げながら転倒し、顔面と体を強打してほぼ自滅してた人も居る。

 ちなみに、威勢がよく俺と対面していた男は炎剣が腹部を貫通してその場に崩れ落ちて気を失った。

 制服の性能を過信していたようだったから、少し安心していたが……腹部の衣類は全て焦げ、それは背面も例外ではなく、本当に剣で貫通させられてみたいになっている。


「加減って難しいんだな」


 正直、この場に居る全員が生きている確証はない。

 目の前で倒れている彼も、皮膚が火傷しているのは一目瞭然だし、内臓がどうなっているかはわからない。

 逃げようと顔面強打した人なんて、脳震盪を起こしている可能性もありうる。


 間違いなく言えることは、全員の意識は刈り取ってしまったから……目撃者は大量殺人の現場を目撃してしまった、ぐらいのショッキングな状況を目の当たりにしてしまう。

 さすがに生徒が発見したら可哀そうだが……まあ、ここが変な連中の溜まり場になっていることは他生徒よりも教師陣が把握していることだろうから大丈夫なはず。


「またこれで貴重な休み時間を浪費してしまった」


 そんな愚痴を零しつつ、倒れている彼らを横目に教室へと歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ