第71話 ここはフーリエ族の宇宙船
ここは、フーリエの母船。
「いやー、厄介なことになりましたね。パラレルワールド管理局が出向いてきたことで、計画を練り直さ無ければなりません。それに、あの、カレンと言う女性も要注意ですね。夫のフリオ氏もどこかで見たことがあります」
「危ない橋ですね。下手に渡ると、我々は滅びますね」
ガルゴとヤエがテーブルに着いている。
パラレルワールド管理局の調査結果から、あの宇宙災厄を免れた種族は多くは無い。
フーリエ族は、その前から他の星への移住計画がすすめられたこともあって、外宇宙にまで、出向いていたガルゴが操縦するこの船が唯一残ったようだ。この船に眠るガルゴ人はおよそ20万人。
ルーレット・カガクが率いるカガク族は、ルーレット・カガクとヨハンたち、5000人のみとなったが。その他の種族に至っては、5000年経った今でも、検知できていない。まあ、フーリエ族は今まで検知されなかったことが不思議らしい。
「カナチ女王をお呼びしましょう?」
「そうだな。全員のことだから女王に裁断してもらおう」
ヤエは、特別室で眠る女王を起こしに行った。
「あたしを起こしたということは、重要なことなのね?」
「はい、これこれしかじか・・・・」
「わかりました。アズサ様のおっしゃる条件を飲んで、この星に移住しましょう。放浪も飽きました」
ここはマレイの家の居間。
フリオ、カレン、アズサ、タロウ、ヨハン、ソフィア、にゃん吉、グリン、そしてシロ。
「追いやるのは簡単ですが、我々としては、できれば人手が欲しいところなんだ」とフリオ。
「そうですね。彼らは、まだアマルを2体、保有しているようです」とアズサ。
「と言うことは、この星に投資してもらえば、魂が余分に得られるようになるのでしょうか?」とソフィア。
「そうです。この星は現在10体アマルを保有しているので、年間およそ一万の魂が生成されています。これに、アマル2体分は魂2000個ですので、これに見合った移住と言うことで、どうでしょうか?」とヨハン。
意見が錯綜したが、概ね受け入れる方向で話がまとまった。
「では、こうしよう。毎年、マレイ領から2000体のホムンクルスを提供する。そこへ、フーリエの疑似人格を移す。そして、地上の開拓村で働いてもらい、順次神殿で魂を得させる。残りは、現在の衛星軌道の母船にとどまらせる」
「でも、レベル7の人たちが、レベル3の衣食住環境に耐えられるでしょうか?」とカレン。
「それは、魂の無い状況で慣れさせることができます。それ以上の譲歩は不要でしょう」
彼らは、宇宙法に抵触しており、本来ならば隔離施設へまっしぐらのはず。特に仮想世界に居る疑似人格は消滅させられる。生命じゃないからね。実質、母船を動かしている、魂持ちの30人が該当するだけ。
やっぱり、開拓地に魂と労力は欲しいところだ。
さて、10日が過ぎた。
フーリエの母船に皆が集まった。ガルゴとヤエの他に3人が加わっている。
順次、自己紹介すると面倒なので、こちら側はアズサが紹介した。
ガルゴやヤエと違って、身長2メートルほどの2足歩行の猫種が前に出てきた。
「あたしは、カナチと申します。わが一族の総意で移住をお願いします。できれば自治権を認めてほしいのですが?」
「それは認めない。我が星の一員として、また良き領民としてならば受け入れましょう。でなければ、即刻離脱を勧告します」
「次の10カ条を、基本守ってもらえば良しとします。
むやみに生き物を傷つけない
ものを盗まない
男女の道を乱さない
うそをつかない
無意味なおしゃべりをしない
乱暴なことばを使わない
筋の通らないことを言わない
欲深いことをしない
耐え忍んで怒らない
まちがった考え方をしない」
「わかりました。良き領民としてのルールを全て受け入れますので、よろしくお願いします」
まあ、良き領民と言うところで、人権が保証されると理解したようだ。
「では、今後の進め方については、事務方に任せましょう」
果ての集落から北へ30キロメートル離れたところにノルダ開拓地がある。その北にフーリエの町を作った。
それから5年、カナチ女王こと町長は、今日も町を眺め、あの決断は良かったと回顧していた。アズサ様は、様子を見ながら自治権を認めてくれた。まあ、他の種族とのいざこざもなく、その必要はなかった。鳥越苦労だった。
しかし、レベル3の生活には、なかなか馴染めなかったが、今は楽しいと思える毎日だ。




