第60話 ミレーユ王国へ
最果ての町からミレーユ王都へは、500キロメートルほど、馬車で5日ってとこかな。
遠いよ。
その間に、サンズ村、ニズ村、イチズ村、サカイ町、レイラ町がある。
サカイ町はミレーユ王都から、300キロメートル離れており、500年前は最東の町といわれていて、特産が魚介類であった。そこから、さらに開拓民が東へ進出して、イチズ、ニズ、サンズの村ができたらしい。
直接、王城に乗り込むことは避けて、一つ手前の町レイラで策を練ることにした。
馬車は2頭立てで、シルバーの箱型でガラス窓が付いて、結構装飾を施してある。小麦の穂が3つ交差したマレイ王国の紋が描かれている。また、迷いの森から来たイメージで、緑の蔦や、色とりどりの大小の花を散りばめている。
通りすがりの人たちの目を引くように、ゆっくりと、これ見よがしに通りを抜けてゆく。
今回のメンバーは、アズサ、ソフィア、タロウと僕の4人。
アズサは17歳で第2王女、ソフィアは22歳で第一王女。美人を揃えた。
僕が執事役をする。タロウが22歳で、第1王子という設定だ。
(アズサ、カレン、タロウとソフィーズは、この星の人たちから5歳ほど若く見えるらしい)
そう、町や村に入るときは、門番のところで東に国の王太子だと偉そうに告げると、ほぼ問題なく通過できる。
問題がある場合は、まず後ろに続く騎士のアオシとモモコが出てきて、威圧する。
次には金品にものを言わせる。まあ今回はイチズ村で威圧が必要だっただけで、円滑にレイラの宿に辿りついた。
王都では、王城が近い、一番高級な宿、あけぼの亭に泊まった。
『東の国マレイ王国の王太子、タロウ・マレイがご挨拶をしたい』と書状にしたため、僕が王城の門番に持って行った。もちろん、正装して豪華な馬車で出向いた。
2日後、王城から返事が入った。
”明後日、お会いしたい”と。
「ねえ、フリオ。町を見たい。美味しいものを食べたい。綺麗な服を見たい。行きたい、行きたい」
とアズサが飛び跳ねながら駄々をこねだした。
まったく、何時までも子供なんだから。
町娘とお兄さんに扮して、町へ繰り出した。
あけぼの亭は王城の近くで、300メートルほど先に城門が見える。
反対に500メートルほど下ると、噴水のある大きな広場に出る。広場の周りには屋台が沢山出ており、アズサとソフィアは、蝶のようにあちこち顔を突っ込んでいった。
まったく、お姫様が務まるのだろうか?。
大きな町だ。ホワイト町に比べることもないか。
大通りは幅50メートルほどで、南から王城に続いており左右には大きな屋敷や商館が立ち並んでいる。
僕たちが泊まっている、あけぼの亭は、その中でも屋敷のような宿である。
車回しが3か所あって、芝生とバラの植え込みが綺麗だ。
朝から、王女たちはドレスを整え、アクセサリを選びなど、大変なことになっている。
僕は、シロのスーツに白い手袋。それじゃあ赤い尻尾だけが目立つね。
王城に向かった。
城門で、執事の僕が門番に到着の旨を伝えると、門が開いた。
シャンシャンと鈴の音を響かせながら、門を潜って行く。
迎賓館と思われるところの車止めに停車した。執事の僕はアズサを下し、ソフィアを下し、タロウを下した。
振り向くと、迎えが左右に立ち並び、奥への誘導を促している。
先頭は、アオシのクロードとモモコのエリーが進み、その後をタロウ、アズサ、ソフィア、僕が続いた。
迎賓館の奥には、王とその重鎮たちが揃い立ちしており、迎えられた。
我々は、この国の家臣ではないので、膝まづくことはしない。軽く右手も胸の前に持ってきて、少し頭を下げた。
「マレイ王国、王太子のタロウ・マレイと申します。この度は、お会いいただきありがとうございます。こちらに控えますは、第1王女のソフィア・マレイ、第2王女のアズサ・マレイでございます」
「余は、ミレーユ王国の王、ハヤト・サガラだ。ゆっくりされよ」
「宰相のマサムネ・アイバと申します。前もって頂いております書簡に沿って、親睦並びに交易関係のお話を進めたいと思っております。よろしくお願いします」
「・・・よし、これで良いかマサムネ。窮屈でいかん。別室で茶を飲みながら話そうではないか」と王が膝を崩した。
ここは、王城の一室。とはいうものの、豪華な部屋だ。
円卓に、立派な椅子が12個備わっている。王側は6人、マレイ側は3人、双方とも警備はいない。
執事役の僕は、ドアの外。でも大きな耳は、伊達についているわけじゃないよ。ドアの中に耳を傾ける。
王側には王のハヤト、その横に王妃、王子、王女と宰相が座っている。
なかなか家庭的な人選だな。こちらに合わせてくれたのだろうか。
「さて、東の国の様子を聞きたいね」とハヤトが口火を切った。
「迷いの森の東側には、我マレイ王国があって、人口はおよそ3万人ほどいます。その東は、さらに森と草原が続いており、調査させたところ、馬で100日行っても東の果てに辿り着けなかったと。」
「ところで、迷いの森をどのように抜けることができたのでしょうか?」と王子が聞いてきた。
王子は20歳ぐらいでがっちりした体格をしている。この国の防衛を任務にしているのかな?
「我々は、森の民と長きに渡って交流がありまして、迷いの森の通行を許可してくれたのです。そして、20日ほど前に、交易のための東から西へ隧道が完成しました。ミレーユ王国側は、果ての集落町の近くに入り口があります」
ミレーユ側は驚きを隠さず、王子が一声
「では、マレイ側から侵略できるということか!」と怒鳴ってきた。
「待て待て、コロク。そなたは、目の前のタロウ殿が目に入らぬか。そのような企てがあるなら、そもそも、ソフィア王女もアズサ王女も、こちらに来まい。落ち着け」
「タロウ殿、申し訳ない。最近、北側のミズキ王国に不穏な動きがあって、ちょっと神経質になっている故」
「ごもっともです」
歓談までとはいかないが、何とか話をまとめることができた。
1,迷いの森の西側出口を開放する。そこにミレーユとマレイの共同管理のグリーン町を作る
2,西側の入出はマレイが管理、東側はミレーユが管理する。一日の通行量は200人までとする。
3,ミレーユの町には、マレイ大使館とマレイ商会を作る。
4,マレイ領にも、ミレーユの大使館とミレーユ商会を作る。
5,月1回は、双方から管理状況の報告を受ける。
6,マレイ・ミレーユ双方の持ち込み税は2割とする。
7,ミレーユ商会、マレイ商会の取引税は1割とする。
8,お互い侵略行為をしない。第3者の脅威に至っては共同で事に当たる。
まあ、こんなところになった。8番目の軍事同盟はさらっと流した。
追々、追加修正してゆくことで、合意した。
「いやー、お宅のアオシ、モモコ殿は、滅法強いですね。またの折にご指導願います」
後日、コロク王子から、メッセージをもらった。
宰相のマサムネが大使館と商館の設置を手配をしてくれた。
大使館は、あけぼの亭の右対面で、大きな屋敷だった。2年前までは、貴族のハナダ侯爵が住んでいたが、手狭になったと言って住み替えたため、ここが空き家になっていた。
そして、この大きくて立派な屋敷がマレイ王国の大使館となった。
「お誘いくださって、ありがとうございます」
ミレーユ王国第1王女ミリー・サガラが、華麗に挨拶をしてきた。
「これはこれは、存分にお楽しみください。我が国のお菓子も沢山用意しておりますので、味をお確かめ願います」
今日は、マレイ大使館のお披露目会である。
ミレーユ王国の王族、重鎮はもとより、近隣の町や有名な商家、実力者などに案内を配った。
ホールに入りきらないほどの大盛況を見越していたのだが、意外と少ない。受付の情報では100人ほどらしい。
なぜに?。
まあ、慎重なのは良いことだ。
「お初にお目にかかります。私、サム・コリウスと申します。王国内で商いをさせていただいております。よろしくお願いします」
「わたくし、マリア・ソバージュと申します。衣装から装飾品まで取り扱っております。ご贔屓にお願いします」
次々と有力者の挨拶が続いた。
まあ、ミレーユ王国に、およそ受け入れられたと感じた。
もちろん、マレイ領側のミレーユ大使館でも同様の催しが行われた。
そこには、聖獣様のシロがいたことに、ミレーユ側が驚き、シロに跪いていた。




