第59話 迷いの森にトンネルを掘る
ルーレット・カガクの矜持である商人魂が、西の国ミレーユ王国と交易をしたいといっている。
以前、森人のグリンに相談したら、マレイ家の人々とフリオが許可した者に限ること、そして、”森人の鈴”を鳴らしながら通行することが条件で協力してくれることになった。
そして、今日、この果ての集落に僕らは居る。
本格的に交易をするには、条件の緩和が必要であるが。それよりも、山が重なる森の中に道を作るより、トンネルを掘って平坦な道を行き交う方が良い。
そこで、再びグリンに相談して、以下の計画が了解された。
青の館から、南西に20キロメートルのところ、海岸から50キロメートルのところ。この位置で迷いの森は狭くなっており、およそ50キロメートル。山の高さはおよそ2000メートル。急峻な山と谷が横たわっている。
ここに、50キロメートルのトンネルを掘る。馬車だと3時間ぐらいの距離になる。
安全のため、必ず入ったもの、出た者を確認できるように一方通行とする。馬車一台の幅と、歩道を設ける。途中休憩所を10、20、30、40、キロメートルの4か所に設ける。休憩所には、椅子とテーブルがあるのみ。
どうやって、トンネルを掘るのかって。それは、手スコップで掘るのだが、アズサが掘って、カレンがトンネルの壁を固めてゆく。タロウとホムンクルスたちが土を出して、僕はトンネル工事の監督である。アズサとカレンとタロウは入れ替わるが、僕は魔力が少ないので監督が選任。
大雑把に掘って行き、排水路や休憩所など付帯設備は後で加える算段だ。
掘削に使うスコップは、超合金で岩もサクサクと削れるし、魔力を込めることで、疲れ知らずさ。何せ見学者も多いので、機械を持ち込むわけにはいかないよね。ただ、アズサとカレンとタロウの仕事ぶりはマレイ家以外には見せない。秘密!。
迷いの森の西側は、ステップ村に貫通する。
通路の整地、トンネル壁の補強、灯り、休憩所や連絡管の敷設など、細々した設備を整えた。
一日2キロメートルで30日の大工事になった。
完成したよ。
落成式を、マレイ家の面々と森人、周囲の村人、およそ200人でやった。
近隣の長にも案内を出した。
ヌマタ村のガロ村長は、死ぬ思いで切り立つ海岸を東に走ったことを思い出して、涙ぐんだ。
(嬉しいのか、悔しいのか、悲しいのか、全くわからない。でも、このトンネルを抜ければ、”果ての集落”だ。あそこには、残してきた幼い子供たちと妻がいる。会いたい)
「あぁぁ。皆さん、ご苦労さんでした。今日は開通を記念して、式典を執り行います」
「では、マレイ家のフリオ様に祝辞の挨拶をお願いします」
「私、フリオ・マレイです。本日、お日柄もよく、念願の迷いの森横断トンネルが開通しました。当面はマレイ家の関係者のみの利用となります。運用次第で徐々に近隣の皆さんや、ステップ村、果ての集落の皆さんにも利用を進めてゆきます」
「皆さん、乾杯をしますので、飲み物をご用意ください」
無事に開通式が終わった。
明日から、交易品の運搬を行う。マレイ領からは、小麦や豆類など穀物類。ステップ村からは、ミレーユ王国で調達した布や装飾品などである。それから、家畜はステップ村で繁殖させ、マレイ領へ移動させることにした。馬が居れば速やかに遠方まで移動可能になる。また牛やヤギは乳製品が容易く手に入れられる。料理の幅が広がる。
嬉しいなあ。




