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第47話 近隣の村から視察団がきた

今日も、遠くに人影が見えた。こちらの様子を窺っている。

危害を加えないならば、こちらも様子見としよう。


ホムンクルスの作業員を30人ほど増員して、森人も50人ぐらいが、我々の田畑で働いている。耕作面積も一挙に青い館から南方1キロメートル四方に及ぶようになった。北から水路を引き込み、水車がところどころで稼働している。水やりもスプリンクラーや水路を張り巡らせている。


小麦、ニンジン、セロリ、トマト、ピーマン、ジャガイモなどなど。

で、収穫したものは、時間停止の倉庫に収めている。行商の交易品として、また非常用の備えとして蓄えている。


「マスター、東の村から視察の請願が来ております」

「マスター、西の村から視察の請願が来ております」

「マスター、西岸の町から、見せろと言ってきております」


農地を拡張して、早1年。

近在の村や町から、見に来たいと言ってきた。

一応、農地や青の館周辺は、柵を巡らして東西南の3か所に門番を置いている。一応、門以外から中に入ることを遠慮してもらっている。


一度、西岸のヤマネ町から、30人ほどの一行がやってきた。”中に入らせ!”と猛々しく、呼ばわってきたのである。

「ここは、フリオ・マレイ様の農園です。要件を聞かせてください」

と、門番が問いかけた。


「ワシは、ヤマネ町の町長のヤマネだ。ここでは、得体のしれないものが闊歩していると聞き及んでいる。危害が我々に及ぶ前に駆除してくれる」

「「「おおお!」」」とクワや棍棒を持ち上げて、騒いだ。



西門が騒がしいので、僕が来てみると、農民が集まっていて口々に喚いている。


「僕が、フリオ・マレイだが、君たちの言い分はわかった。案内するので、武器らしきものを下げて、僕の後ろ続いて下さいね」

僕は、田畑を横切って、作業中の人々に手を振った。


「どうです?。このニンジンはおいしそうでしょう?」


ヤマネ町の町長と農民たちは、あっけにとられたように、田畑や作業者を見ていた。

水やりのための水路やスプリンクラー、小麦、ニンジン、セロリ、トマト、ピーマン、ジャガイモなどの作物を見て、固まっていた。


先を促しながら青い館に案内する。

まあ、見えないといらぬ妄想に至るのは仕方のないこと。館前の広場にテーブルと椅子を出して、適当に座ってもらって、お茶とお菓子を出した。


「いやー。マレイ殿、早とちりで、騒がせて申し訳ない」とヤマネ町長が頭を下げた。


「まあ、誤解が解けて良かった。ゆっくりしていってください」



ヤマネの独り言


(これは、すごい。整然と整備された田畑。作物の成長はよく、美味しそうだ。それに、このマレイと言うウサギ種の人、不思議な魅力がある。妻だという人は、人種で美人だ。森人がたくさん働いており、これにはびっくりした。彼らの容姿が人種からかけ離れており、皆が恐れて忌避した経緯がある。それ以来ヤマネ町には近づいてこない。このお茶も飲んだことがない良い香りがする。お菓子も甘くておいしい。子供に持って帰りたい。

それに、門番の強さも尋常でなさそうだ。ちょっかいを出すのはやめておこう)



ヤマネの話では、この地域には、西に広がる迷いの森を迂回して、移住してきた開拓民が住んでいるとのこと。青の館から、南西へ120キロメートル行ったところの海沿いにヤマネ町がある。特に、ヤマネ町は人間種が幅を利かせていて、町長が力で統治しているようだ。そして、ヤマネは”強いものに媚び、弱いものに強く出る人:欺軟怕硬”人と思われる。

 

ヌマタ村は、猫人種と犬人種が主で、今日はヤムサと言う猫人種の女性を中心に5名ほどがやってきた。


タロイモ村は、色々な種が混じっており、今日はゴンと言う人間種の男を中心に10名ほどがやってきた。

それぞれ、感嘆の吐息を洩らして、自分の村に帰っていった。


迷いの森の西側は群雄割拠の世界で、王国が3つある。その他には多くの種族が入り乱れて、領地や資源を取り合っていると。そして、もちろん戦争もあるそうだ。



視察団が一巡して、しばらくたつと、再々周辺の町や村から物々交換にやってくる。

我々には、肉が少ない。

なんたって、草食のウサギさんが町長をやっているから?。


肉が入用だと周辺に噂が流れると、肉肉魚魚が頻繁に持ち込まれるようになった。




後日、視察団から、お返しに村を見に来てほしいと話が出ていたので、カレンを連れて早速出かけた。

子供たちは留守番だよ。


まず、ヤマネ町から。


「こんにちはー」

門番が居たので、名乗りと要件を言った。途端に、門番の一人がピューッと大通りを駆けて行った。


「町長が来ますので、こちらで少々お待ち願えますか?」


座る間もなく、ヤマネ町長が息せき切ってやってきた。

「ようこそ、いらっしゃいました。どぞこちらへ」


町長の家の応接間に通され、丁寧に歓迎され、町長の妻と子供たちが紹介された。

しばらくすると、町長の補佐をしている男がやってきて、僕たちと交易したいと言ってきた。町の交易品は海で取れた、魚介類や塩である。こちらからは、野菜や穀物を提示した。


どちらかが優位とか、そうなりたいとかは微塵を匂わすどころか、仲良くやって行きたいと。

ただし、交易品はガロム商店を通してほしいと。


町長の補佐のギムリが町の中を案内してくれた。

町の人口は、およそ3000人とのこと。歴史も歩きながら話してくれた。


「年に一度、2日ほど、海の引きが大きくなります。迷いの森が海に落ち込む海岸線を必死に走って、この地に来ました。200年前から、毎年100人ぐらいがこの地を目指してきたのです」


女子供、年寄りらは、途中で力尽きることもあり、成功率は5割と言う、過酷な移住であったと。


さて、ヤマネ町以外にも、周辺にヌマタ村、タロイモ村、カスミ村、アミカ村、オワリ村などが散在し、その外にも集落があるらしい。ヤマネ町、ヌマタ村、タロイモ村の長の話だと、飢饉や病などで一進一退を繰り返しているそうだ。また、盗賊団や暴徒にも手を焼いているらしい。


ヤマネ町、ヌマタ村、タロイモ村の長たちが、足繁く青い館を訪ねてきた。そして、青い館とガロム商店のマレイ支店を中心に人や物の流れができた。盗賊団や暴徒には、青い館から制圧部隊を派遣して、捕縛した者はその村に引き渡した。


近隣の人たちが、青い館の僕たちを認識して、早1年が経った。頼られる存在になってきたと言える。

その間、僕たちは相談があれば対応する方針は変わらず。いらぬ世話はしない。あくまで自治を尊重する。


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