第44話 歌と楽器
「フリオさん。少しお願いがあるのです」
「ソフィアさん。なにかな?」
「歌は、子供たちの情操教育に必須です。それで、楽器がほしいのです。フリオさんのクラフトスキルを見ていると、出来ることを確信しました」
「ここに来る前は、ソフィアとカルロスとロゼがバイオリン、ルイスとロゼがフルート、カリーナがクラリネット、ミゲルがチェロ、ファティマがピアノ、カーラがギター、テリアがドラムス、ファンとローザがビオラ、ホセがベース、ビクトルがハープを弾いていました。小さな子も上手なものですよ。きっと楽しめますよ」
とはいうものの、僕は楽器なんて作ったことがない。弾いたことはあるが。
「設計図とか、道具とか、材料とか、もっとも詳細を見たことも作ったこともないよ」
「大丈夫です。子供たちに準備させます。それに私は楽器の製作技術も持っています。フリオさんのクラフトとアズサちゃんのコピーアンドペーストを利用させてください。きっと良いものができます」
設計図用の紙を作って渡すと、10日ほどで仕上がってきた。
ほぉ・・。ソフィーズは優秀だ。確かにレベル7の子供たちだ。
まず、バイオリンから始めようか。
音箱の表、裏、側板を切り出そう。表の素材は松。裏と側板は楓。軽くて丈夫なものを選ぶ。乾燥は魔法で行うので任意。乾かしすぎると、きっと脆くなるだろうから、油脂を注入しながら乾燥させる。
次に、糸巻き、あご当て、テールピース、エンドピンなどの部品を、ソフィアと試作しては潰すの繰り返しで完成度を上げた。弦は要だね。ソフィアの要望を聞くと、弦は羊の腸の繊維をねじり合わせたものとか。この辺に羊はいないので、代用品を探すことになる。
そうだ、ガロムに聞いてみよう。
試し弾きしながら10日ほどでできたよ。ソフィーズたちが完成品を目を皿のようにして、見入っていた。
やったね。しかし、ソフィアに言わせると”まだまだ”だって。
皆を、ロビーに集めて、披露することにした。
可愛いロゼが演壇に立つと、一斉に拍手が舞った。
(まだ、弾いて無いよ、これからだよーー)とロゼが呟いた。
さわやかなメロディーが奏でられ、皆はうっとり。
続いて、アップテンポの曲。
5曲、20分ぐらいでお開きにした。
好評だよ。って、身内ばかりだから、当然かな。
引き続き、フルートなどを作って行く。
2か月ほどで、ピアノを除いて、要望の楽器は揃えることができた。
ピアノは、ちょっと難しい。半年ぐらいかかりそうだ。
ギターの音に乗って歌声が聞こえてきた。
誰?
おぉぉ!、アズサではないか。
いやー、静かな村が賑やかになってきた。
嬉しい。
僕もこっそりとトランペットを作った。
昔々、吹いていたことがある。若かりし頃だ。
『うかれたこどもたち』というバンドを組んでいた。それはそれは、大きなコンサートホールを渡り歩いて、名声を欲しいままにした。あ・・盛りすぎた。
しかし、栄枯盛衰。上り詰めたつもりで、次の曲が書けなくなった。そして、僕は旅に出た。
星間行商人になってからは、そんな時間も無くなり、メンバーも次々と離れていった。
懐かしい。
四つ目の散歩道で、昔のメロディーを手繰っていると、夕日が滲んで見えた。




